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2007.05.20

5/19 蒸し返しの規制改革会議

水虫のようにしつこい規制改革会議。昨年のホワイトカラーイグゼンプションへの国民の反発を受けて、安倍政権として格差問題の解決に向けてようやく取り組むことの大半を放棄するよう求めている。

 報告書は、労働分野の問題について「労働者保護の色彩が強い労働法制は、企業の正規雇用を敬遠させる。労働者の権利を強めれば、労働者保護が図られるという考え方は誤っている」と指摘。最低賃金引き上げや、労働時間の上限規制などを疑問視している。
 女性労働者については「過度に権利を強化すると、雇用を手控えるなど副作用を生じる可能性がある。あらゆる層の労働者のすべてに対して開かれた平等な労働市場の確立こそ真の労働改革だ」と表明している。
 具体的には(1)解雇規制の見直し(2)労働者派遣法の見直し(3)労働政策立案のあり方の検討--を掲げている(毎日)

経営者が解雇しやすいように、しつこいぐらい否定されても否定されても同じような答申を出す。一度否定されたものを事実関係や前提条件がひっくり返りもしないのに何度も同じようなことを言い続けることができるのは、規制改革会議ぐらいだろう。国会も、裁判所も、そんなこと認められない。判決も議決も意味をなさなくなる。今や規制改革会議は審議会といったものではなくて、ただの特定権益を要求する圧力団体でしかない。圧力団体はいくらでも同じことを主張しても咎められることはない。もちろん規制緩和で社会の桎梏を取って、国民が暮らしやすい社会にしようなどという当初の大義は誰かのためだけのものである。

なぜ規制改革会議が、新規雇用が発生することを理由に解雇しやすいようにするかは、労働者は解雇を何よりおそれているし人間の尊厳を否定されることを良く知ってるからだろう。新規雇用のためには、今いる人をクビにすることより、新たな雇用創出の方が効果的であることに決まっている。雇用創出のために解雇が必要なら、毎月何人もの人が入れ替わる職場にならなくては意味がない。そうなったら職場は、生産性を上げたり、職場のモラルを維持できるとは思えない。政府になりかわって、社会団体になりかわって、企業が君臨し国民を締め上げる社会、それをめざしているのだろう。この間の景気回復で、新規雇用は非効率な先輩が市場から退出することでは生まれず、やはり経済のパイが拡大して雇用量がそもそも増えなくては始まらない、ということが証明されている。

「開かれた労働市場」などという言葉は笑ってしまう。だったら社長やOBが政府審議会の委員をやっているような大手企業、リクルーターを使った事実上のコネ採用やめたらどうかと思う。昨日も、メガバンクの若手社員ののリクルーターが就活中の女学生にセクハラし逮捕された。大手企業はいまだにこうした先輩・後輩関係で採用をしていることを明らかにした。こんなことが「開かれた労働市場」なんて言えるのだろうか。

また、女性労働者に対する「過度な権利」とは何だろうか。雑誌「エコノミスト」の「娘・息子の悲惨な職場」では、妊娠や結婚したという事実だけで職場を追ったり、子会社の派遣会社に移籍させる会社がたくさん出てくる。この中には政府に最も関与の深い人物が社長をやっている会社もある。「過度な権利」は誰が濫用しているのか、多くの人が改めて共通認識すべきだ。

男女差別的思考の強い規制改革畑の学者・財界人は、「女性労働者に対する保護」という言い方になってしまうが、出産・育児をしながら働く人への保護を言っているのだろうか。社会の次世代の再生のためには、こうした問題は市場原理では動かず、社会的規制でしか動かないため、保護を緩和することは考えるべきではないだろう。今のままでは、最低限の人口の再生産ができず、結果として、需要も労働力も収縮していくことは間違いない。出産・育児が地獄の道でしかない。
財界人はことあるごとに需要と労働力の収縮は問題にするのに、その背景にある自らの経済活動の都合による生活時間の収奪については頬被りだ。

労働政策の決定についても、審議会の労働側委員がいるところで議論するのはおかしいと言っている。この規制改革系の連中は勝手なことばかり言う。経営側と労働側で意見調整できる機関があるから、ストも労働裁判も頻発しないでやってこれたのだろう。労働側の意見を封じられれば、労働条件をかちとるために労働側もストや裁判闘争に移行せざるを得ない。

さらには労働時間の上限規制の撤廃といい「ホワイトカラーイグゼンプション」以上の強烈な主張も入ってきている。残業代不払いどころではない。危険だ。
最低賃金の引き上げも否定している。彼らは低い賃金に見合わない労働者が雇用される口がなくなる、という言い方で正当化しているが、ウソつけである。生活保護水準以下の労働者を放置して利用するだけ利用する社会の果てに、国際競争力以前に、国内市場の衰退が待っているだけである。効率性や社会の維持のためにも、人が家を借り、独居し、適度な余暇を取りながら働ける水準の時給にすることは、決してマイナスではない。また最低賃金の引き上げは、高給取りの給与引き上げと違い、その影響はほぼ全額消費に回り、市場規模を拡大することになる。個々の労働者を雇い入れる判断をする企業は反対しても、社会としては推進すべき課題だろう。規制改革会議の委員たちは1929年の大恐慌を悪化させた発想のままなのである。

最低賃金の引き上げ案で高いと言われる連合・民主党の時給1000円としても、月17万、年収200万に届かない。このぐらいが独居して生計を維持できる最低水準だろう。その程度も払わないで人を雇う企業は、労働者賃金を通して払うべき家賃や生活費の負担を他の家族など誰かに肩代わりさせている。そうして雇われる人はこれまでバラサイトシングルとか、主婦のパート労働だった。しかし、高齢社会になっていくことと、「主人」の年収が上がらない時代に、パラサイトシングルは老親を抱えた大黒柱になり、主婦のパートは先細って行く。

この規制改革会議の連中は、労働組合のある企業の労働者をやっかむ未組織労働者を焚きつけようという魂胆なのだろう。まったく下品な議論ばかり繰り返す。

規制緩和は、人々の経済活動や、国民生活を守ることと無関係な規制を排除して、経済活動を活発化させるために、村山内閣がスタートさせた。その後、99年ぐらいから経済分野の規制緩和に取り組まなくなり、一方で社会的規制の解体にばかり力を入れるようになった。1920年頃のアメリカ社会が理想であると言うようなノリである。
最初には、産業か国民福祉か線引きできない、医療・福祉分野が狙われた。そこでも規制改革会議が自分たちの利権あさりみたいな答申ばかり出し続けて(もちろん中には1つ2つは有効な対策もあったが、頭ごなしに規制改革としてやるのではなく分野で解決すべき課題だったと思う)、制度がねじ曲がったり、地方分権に抵触するようなことがあった。しかもそこまでやっても、待機児童問題も、医療問題も、何一つまともに解決してこれなかった。にもかかわらず、論理的にも、実証的にも否定されていることを、自らの主張の不徹底さにあるような自己評価をし、何度も何度も蒸し返し続ける。自己肥大化する官僚と、それと対決するように見せながら自分たちの主張を勝手に自己肥大化させる規制改革会議は、同じ問題を抱えている。規制改革会議による市場や国民生活への過度な介入とも言える。
規制改革会議の委員なんかに比べたら明らかな社会的弱者にも、安易に既得権者などという言葉を浴びせかける。政財界インナーサークルの運営する公式会議ではもっともいやらしい人たちである。

規制改革会議:提言内容判明 最低賃金上げに事実上反対
 内閣府の規制改革会議(草刈隆郎議長)の再チャレンジワーキンググループがまとめた労働分野に関する意見書の全容が明らかになった。解雇規制の緩和や労働者保護の法的見直しなどを挙げている。安倍政権がワーキングプアなど格差解消に向け取り組む最低賃金の引き上げについては「賃金に見合う生産性を発揮できない労働者の失業をもたらす」と事実上反対している。同会議は週明けに公表し、3年間かけて検討するが、労働者保護の撤廃を中心とする内容に労働側の反発が予想される。

 報告書は、労働分野の問題について「労働者保護の色彩が強い労働法制は、企業の正規雇用を敬遠させる。労働者の権利を強めれば、労働者保護が図られるという考え方は誤っている」と指摘。最低賃金引き上げや、労働時間の上限規制などを疑問視している。

 女性労働者については「過度に権利を強化すると、雇用を手控えるなど副作用を生じる可能性がある。あらゆる層の労働者のすべてに対して開かれた平等な労働市場の確立こそ真の労働改革だ」と表明している。

 具体的には(1)解雇規制の見直し(2)労働者派遣法の見直し(3)労働政策立案のあり方の検討--を掲げている。(1)は人員削減の必要性など解雇の要件が厳しく、使用者の解雇権や雇い止めが著しく制限されているとして、規制緩和の検討を打ち出した。また、労働契約法案に盛り込むことが見送られた解雇の金銭解決についても試行的導入を検討するとしている。

 (2)では禁止されている港湾運送や建設、警備などへの派遣解禁、派遣期間(最長3年)の制限撤廃を提言。(3)では労使が調整するやり方からフェアな政策決定機関にゆだねるべきだとしている。【東海林智】毎日新聞 2007年5月20日 3時00分

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