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2007.03.10

3/10 右の人たちの学習課題

●梅原猛「水底の歌」を読み終える。柿本人麿の死因と死んだ場所、そしてそうなった原因を探った論文。
ここでも梅原の得意分野である、持統天皇=藤原不比等による万世一系の天皇制の確立期における、藤原氏の政敵またはスケープゴートになった人の探究が行われている。柿本人麿は古事記や日本書紀のもとになった歴史観を作る役割が与えられ活躍したが、藤原氏の王朝支配の邪魔になり、女性問題を口実に左遷され、やがては死罪となったのではないかと分析していく。

梅原氏の歴史がすべてとは思わないが、それをかみしめながら、昨年の皇位継承順位をめぐる議論を振り返ると、日本会議などナショナリズムの諸グループが主張していたことは、全く日本の伝統ということとは無関係で、明治イデオロギーっぽいものに憧憬を抱く、思いこみでしかないことがわかる。
愛国心云々するなら、もっと歴史研究をやるべきで、ほんとうの日本の伝統はどこからどのように始まっているのか、と思う。
右だタカ派だと言われて今再評価されている中曽根元首相が紙一重で安っぽい右翼にならないで済んだのは、梅原氏など教養人との交流をやっていたからだということもわかる。

●朝日の夕刊に「人脈記・安倍政権の空気」という連載が載っている。安倍晋三周辺にいる人たちの人脈紹介。朝日にしては安倍人脈を美化している。菅総務相の行いが悪いので、マスコミへの恫喝を受けての取引記事が朝日にまで及んでいるのかと勘ぐってしまう。
5回目になる土曜日は、教育というテーマで「そもそも教育基本法が良くないから」という下村博文官房副長官が登場する。そして下村は「戦後政治は共同体や家族主義を壊してきた。母親が母乳を冷凍して仕事にでかけ、父親が休んでそれを赤ちゃんに飲ませるだなんて、やはり母親の愛情が教育の出発点ですよ」と語っている。自民党に多いよなぁ。民主党もか。批判の矛先はまさに我が家だ。
父親が休んで赤ちゃんに母乳を飲ませるなんて、この時代にしては家族がちゃんと機能しているんじゃないの。母親がどうにもならないときにどうしようもない男の方が多いと思う。それを誤魔化すために、女は家のことちゃんとやっていればいい、とか、家庭をおろそかにしなければ外で働いていい、という言葉がある。下村議員のような考え方をするような人って、男はそういう言葉を吐いて子どもと向き合うところから逃げたらいいのかな。
下村議員のような議論の建て方って、父親の方の愛情ってどこいっちゃうのか、と思う。それから、男だ女だ通り越して親は親だし、実の親かそうでない親かを通り越してその子どもにとってきちんと育ててくれる育ての親だろうし、そうした人たちの子どもとの関わり方を大切にしていくことが共同体じゃないんかね。

男だ女だ、生まれ持った不合理をおしつけることの根拠が日本の伝統というなら、ほんとうの日本の伝統をよく見た方がいい。もちろんフェミニストたちが主張するような社会ではないが、明治イデオロギーとは少し異なる社会が出てくるのではないか。
明治以降であっても戦前という切り口では、乳母なんて考え方があったり、日本の半分以上の人口が農村社会で暮らしていたことから、母親が愛情をたっぷり自分の子どもにかけて育てるなんてできなかった。その現実をもう少し見た方がいいし、その状態で社会や子育てがどのように成り立ってきたのか、調べてみたらどうかと思う。そこにほんとうの共同体の姿が見えてくるんじゃないかと思う。それがこれからの男も女も忙しくなる時代にどうしたらいいかの処方箋が見えてくるんじゃないかと思う。

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