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2007.02.10

2/9 新座市のオンブズマン制度

高松塚古墳の被葬者を推理する、梅原猛「黄泉の王」を読み終える。
藤原不比等が持統天皇と組んで、古代社会から律令制へと大きく流れの変わる時代の波に乗り、権力の掌握に成功した、という梅原猛氏の歴史認識のもと、その政変の犠牲者となった弓削皇子に焦点を当てていく。
昨年、皇位継承権をめぐって論争があったりしたし、憲法改正の議論が起きれば、天皇の存在意義や権能のあり方が問われるが、梅原説によれば、直系男子が相続する慣習も、藤原氏が権力を後ろで動かすシステムも、藤原不比等が作ったということで、今日のかたちの原型を作ったのが藤原不比等ということになる。

●地域福祉計画の福祉オンブズマンプロジェクトの調査で、新座市オンブズマンにヒアリングに行く。
主に、行政が自ら設置するオンブズマンの機能について確認してくる。市議会で81年から設置を求める意見が出ていて、98年に全会派から設置を求める意見が出そろったのを受けて市長が設置に踏み切ったという。
オンブズマン活動としては、①行政施策で不利益を被った人の申し立て、②弁護士2人からなるオンブズマン自信が不適切な問題だとして取り上げた問題、から調査し勧告または意見具申をする。「不利益」がキーワードで、民間オンブズマンのように、税金の無駄遣いの摘発のようなことは、不利益を被ったことが見あたらない限りは対象にはならない。税金の無駄遣いを摘発できる運動に関われる人は、元気で時間のある人たちで、行政に不利益を被る人は、社会的に発言権の少ない人たちになりがちだから、これはこれでいい割り切りだと思う。
対象は行政施策全般で、市役所と市の委託事業までが対象となる。委託事業ではない、社会福祉法人による福祉事業や、介護保険の民間ヘルパー業者は対象外となるようだが、いずれは対象にしていかなければならなくなるんじゃないかな、というのが担当者の感覚だった。
年間30~40件の相談を受け、その内容を弁護士がジャッジし、年間5件程度、市役所に勧告、意見具申している。その数を多いとみるか少ないと見るか分かれるが、「社会変化があるから多い少ないということは評価ができない。むしろオンブズマンの存在によって、不適切な仕事が無くなったり、不利益を被る市民が救済されること自体に意味があるという。
難しいのは、面白くないことと、不利益との境界線が不明確で、時代背景や本人の事情によって大きく変化することで、そのあたりは職員の状況把握の力と、弁護士の判断にかかるという。
福祉に関して「意思表示できる人」が申し立ての条件なので、子どもは排除されないが、文章を書く力のない人や、意思表示能力に障害のある人についてはハードルがあると認識している。
こうした苦情専用窓口があることで、一般窓口では苦情を受け付けなくなるのか、と聞くと、市長がその前提として市民の相談はどんどん受けるように指示しているので、オンブズマンに押しつけるようなことはない、という。

担当者の方が、これから団塊の世代か地域に戻ってきて、何かやり始めれば、きっと問題意識もあれこれ出てきてここに持ち込まれる案件も増えてくるんじゃないかと思う、と答えていたのも印象的で、時代背景を考えると自治体がこうしたセクションを持つことは避けられないと思う。

不二家やパロマの不祥事で、苦情発見が大切だということが認識されてきているが、こうした窓口を持つことで、自らの不利益情報を早期に発見し、組織の改革につなげていく機会にする強みがある。苦情を言われて反論する理屈作りばかりを仕事としている役所は、忙しいけど仕事としての意味は少ない。

また、政治的にも面白い事例だと思う。埼玉で3番目、全国で30番目ぐらいに設置した行政オンブズマンのようだ。先進的な事例について、新座市は先取的だと思う。
小さなスキャンダルがいくつかあっても、新座の須田市長が長期政権になってきはじめたのは、保守市長ではやらないような先取的な制度づくりをどんどんやってきたことと、市民との直接対話のチャンネルをたくさん用意していることだと思う。

朝霞市は、こうした先取的な制度改革は外から学ばず、やらない理由ばかり百と並べる。やらない理由が見つからないときには「朝霞らしさ」などという市民には何の役にも立たない大義名分を持ち出して、「オレ流」にこだわり、何も取り入れない傾向がある。新座市と比べて、市役所を取り巻く合意形成のシステムが不透明だし、何か問題がありそうだ。

●本当はこのヒアリングの原稿起こしがあったが、ついつい寝てしまった。

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