不動産屋が送ってくる月刊誌に、近所で一戸建て住宅を販売しているというので見に行く。
住宅用地取得が、マンションブームの惰性で品薄になり、来年あたりから住宅価格が1000万ぐらい上がると脅かされる。リストラで工場用地をマンションにして儲けた会社が二匹目のどじょうを狙って、もとから不動産業をやっている人たちには信じられないような値段で、あちこちの土地を高く買い漁っているという。
私が急いで買う必要がない人物だとわかると、セールストークは落ち着いたものの、次のミニバブルが崩壊するまで10年ぐらい様子をみた方がいいというので、やはり本当の話のようだ。
東上線の沿線、ガラの悪い朝霞ごときで、ほんとうにそんな高い住宅を買わされるような時代が来れば、それはミニバブルだし、逆に、そんな高い土地で開発がうまくいかなければ、またクレジットクランチ・つまり規模はともかくバブル崩壊が起きるのだろう。もっと長い目で見れば、高齢社会になって、悠長に不動産にお金を掛けていられる時代ではなくなる。少子化でそもそもの需要が伸びないのだから。
政府や財界は必死になって不況論を宣伝流布して、金利を抑え、景気対策を煽っているが、それは不動産業者の延命を計ることにはなるが、購買力に釣り合わない土地への投資そのものがおかしいとするべきだろう。
●NHK「ワーキングプアⅡ」を観る。
①仕事→家事→夜間の仕事を渡り歩く福島の母子家庭の母親、②父親の看護のために故郷を離れられなくなって約束されていたコンピューターグラフィックの仕事を諦めた北海道の調理員の女性、③外国人研修生制度を悪用した低賃金労働で駆逐されてしまった岐阜の仕立屋たち、④老後に缶拾いや公園清掃をやりながら基礎年金程度の収入で何とか暮らしている高齢者たちが紹介される。
①は、休憩時間はめいっぱい睡眠しながら日中働いて、夕方子どもと夕食を食べて、寝る前に家を出てさらに2時まで働く母子家庭のお母さん。これを見て、離婚家庭への無策を感じる。自業自得なんだから我慢しろというような、政策センスの悪さを感じる。地域福祉計画づくりでも離婚相談についてテーマに挙げたら、事務局にものすごい抵抗をされた。離婚しようかしていまいが、8時間働けばそこそこ食べていける給料を払うのが健全な社会で、背景事情で就業差別をする社会は異常だ。
②を見て、北海道時代を思い出した。私の出た大学は北海道の底辺校だったので、ほんとうみんな就職に苦労したし、就職した後も、不本意な仕事をさせられて大変そうだった。転職すればまさにワーキングプアへの道を走っていた。それでも親もとにいられた人はまだよかったと思う。
教員採用試験とか、公務員試験に通るのは、底辺校に不釣り合いな特別優秀な人か、コネがある人ばかりで、そういうのがない状態で、北海道の、さらに女性で、さらに親が病気療養中となると、とことん足元見られて時給500円になるかならないかのような仕事しかない。まったく努力のしようながないというのは実感する。ほんとうにいろいろな産業があって、虚業同然のお金もっているベンチャー企業がある東京と、構造改革でありとあらゆる産業が消えていった地方、さらにはその町村部は全然違うと思う。
③時給200円で働かせる外国人と、腕利きの職人が対抗できるわけがない。外国人労働について、人権の視点から制度の再設計をしないと、外国人にとっても不幸だし、日本人にとっても職を失うし、ろくでもない効果しかないように思う。第二の在日朝鮮人問題をつくることになると思う。
④缶拾いしていたおじいさん夫婦が、ずっと日々の生活に必死で年金を掛けてこなかったことについて「長生きなんかするとは思わなくて」と釈明した言葉が印象的だった。年金制度が維持できないかもしれない、というタレント評論家のコメントを真に受けて、捨て鉢になって国民年金を払わない人がいるけど、このおじいさん夫婦のコメントは重い。
貧困者ほど自覚的に年金なんか払う余裕はないのだから、最低年金制度を保険料方式でやることがおかしいと考えるべきだろう。まして積立方式の年金なんてもっとおかしなことになる。
こうしたルポルタージュに対して、有識者のコメンテーターは3人。
貧困研究をしている岩田正美日本女子大教授、原理的規制緩和信者で安倍内閣の経済財政諮問委員の八代尚宏ICU教授、経済評論家の内橋克人さんがコメンテーター。
岩田教授の「生産力水準に見合わない貧困の水準、貧困者の数」と家庭環境や人生のふとした落とし穴で貧困生活に陥っていく人、「世界一よく働く母子家庭の母親なのに最も貧しい生活をしている」「就職支援といって資格を取っても時給が10円しか上がらないという就労支援の無意味さ」を問題にしていた。21世紀に入るまで貧困研究は岩田正美さん以外は共産党系の研究者しかやっておらず、その分野で第一人者と言える。
内橋さんは「勤労を報いない社会は豊かな社会を維持できない」と予測した。私もそう思う。貧困層が多数派になるとも予測した。その言葉を聞いて、構造改革推進派はマルキストにエサをやっていると感じる。古典的マルキストの主張に沿うような経済になってきている。
八代尚宏は、日頃は、努力しない貧乏人ざまあみろという社会にしないと市場原理が機能しないし、国際競争力や社会資源の再配分がうまくいかない、というようなことを言っていたが、今回は関心ある視聴者を意識してか「健全な市場主義」「セーフティーネットの構築」などと意味不明なコメントで留まった。
しかし、健全な市場主義とは、何を言いたかったのだろうか。私は、ゼータク望まなければ人並みまじめに働いていれば食うに困らない、そのぐらいの社会が健全な市場主義だと思うが、観念論の八代氏の言う健全とは、最低生活水準とか、規制とかそういうものが一切ない、タブーなき市場原理が働くことが健全な市場主義と言ってきたのに、誤魔化している。セーフティーネットだって、市場原理主義者の夢物語の矛盾を全て税金に押しつけるだけの話だし、貧困者が自殺しない程度の内容なのか、ナショナルミニマムを意識しながらもう一回借金も過去のマイナスの思い出もすべてクリアにしてやり直せる内容なのかで全然違う。
ちょっとした人生のレールから外れると300万稼ぐのがやっとという社会になっているのに、土地バブルで東上線沿線の朝霞くんだりで6000万もする家を買う人がいること、そこに経済構造のいびつさを感じる。
デフレで物は次から次に安くなった。そして労働賃金はもっと安くなった。高止まりと言われてきた公務員賃金も切り下げ競争が行われている。しかし不動産だけは、使用価値までには下がらない。そして不動産コストを負担するために、サービス関連のコストが下がらない。NPOも活動場所を確保できない。公共用地の取得に手間取る。その弊害はバブル崩壊した今も続いているし、ミニバブルが近づいてる中で、またぞろ不動産業だけが儲かる社会になりそうだ。
●政府与党は、景気対策だとか、再チャレンジだとか、住宅取得だとかで減税のオンパレード。減税は税金を払える人にしかメリットを生まない。政府がきちんと考えて施策を打つより、税金を払いたくないインセンティブが問題解決すると考えているとしたら、国民とその叡智を愚弄する態度だと思う。また政策減税は、政策効果も測定不能だ。税制を複雑にしてしまうと民主的で公平性の高い徴税がやりにくくなる。減税の対象となる事業の説明が複雑で、再チャレンジ寄附控除など、そのシステムが理解不能だ。
ワーキングプア、ニート、貧困者の問題を解決するなら、税金をきちんと取って、彼らにピンポイントで施策を打たないと意味がない。