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2006.12.03

12/3 国保が抱える高いリスクを社会がどう分担できるか

NHKスペシャル「もう医療にかかれない」を見る。

国民健康保険の保険料(税)は信じられないぐらいバカ高い。前年収入で計算されるから、仕事をやめて入ると、信じられないぐらい重たい保険料を払うハメになる。正直な話、私も転職の間の無業の3ヵ月は健康保険を無保険で過ごした。そもそもの国民健康保険制度のおかしさについて番組が取り上げていてよかった。
滞納率が高く、保険料滞納者に対する激烈な国民健康保険外しを行っている福岡市を舞台に、ヘルニアになりながら収入がないために保険料も払えず病院にも行けない左官屋さんを事例に番組は問題提起をしていった。

国民健康保険(国保)は、自治体関係者では財政問題の頭痛の種になっている。大企業のサラリーマンは組合健保、公務員は共済組合、一般サラリーマンは政管健保で囲い込まれ、残った人たちが国保に集中する。その人たちはお金がない人が多く、しかも病気やけがのリスクが高く、自治体としても見殺しにできず、国保財政を悪化させながら何とか制度を維持しているという状況だ。
国保は農業・自営業者がたくさんいた時代を想定した制度だが、今日では、失業者・フリーター・派遣労働者・パート労働者がこの制度に集中する仕組みになっていて、低収入の人たちがハイリスクの人たちを支える仕組みになっている。

そもそもの財政状況の悪化とともに、自由な職業のエリートたちの間で社会保険逃れがブームみたいになってきて(財政学の教授の講演では大学院生がひどいと嘆いてらした)、社会保険料を払わない人に対するペナルティーが厳しくなってきているが、その影響をもろに直撃しているのが、もともと払いたくても払えない収入の人たちに対してである。早期に医療にかかれば重度化せずお金がかからない医療ができる可能性があるのに、その機会を奪っている。保険料を払えなければその何十倍もの医療費を自己負担で払わなければならないから、こうなるとサラ金やヤミ金に行かないと医療が受けられないわな、と思う。あるいは、結果的に自治体は、国保料の債権をサラ金に売り払うことをやっているのではないか、と思う。

さきのヘルニアの左官屋さんが結局駆け込んだのは、共産党系と思われる個人土建業の団体で、そこでは生活保護の申請を突破口に、保険証の発行をとっていく方法を薦められ、実際、そのことで左官屋さんは短い間だけだが保険証をゲットすることに成功した。番組ではないが、日本で一番厳しい北九州市での生活保護のカットでは、政治に因縁のない人には自殺未遂でもしない限り申請書すら渡さずに、政党の支持者にだけはほいほいと申請を受理しているという話もあり、貧困者に対する行政の裁量はしばしば特定政党の支持基盤を培養しているのだ。ちょっと前の障害者福祉がそんな状況だったし、介護保険制度が導入されるまでの高齢者福祉もそうだった。議員に頼むと入れたり、正面からぶつかっていくと書類の受理もされなかったりした(そんな仲介斡旋みたいなことたけやっている地方議員が選挙に強かったりして、名刺を見せてもらったら裏に両面テープが貼ってあって、冷蔵庫や電話に貼って、と配っていると自慢していた)。

厚生労働省は払えるのに滞納している住民を選んで重点的に対策を行え、と通知しているが、払えないことの証明に奔走する福岡市職員の仕事もばかばかしい。返したものを返されていないと言われたときのように、無いことを証明することは難しい。無駄な作業のような気がしてならない。

やはり、そもそもの制度設計に問題があるとしか思えない。そもそもいちばん健康リスクの少ない大企業の現役社員と現役公務員がおいしい制度を先取りして、その残りのうち、仕事のある現役の人を平均的な政管健保にとどめ、国民健康保険に高リスクの人たちを集中させていることに問題がある。ウチのオヤジが働いていた会社は組合健保があったけど、(民間企業だから当然)大病の人は退職してしまうものだから、健保財政は良かったみたいで、保険料率は2割程度低かったし、年末になると売薬セットが送り届けられるぐらいだった。保険料率は政治が決める全国統一の政管健保に加入する中小企業に働いていた私には何だか釈然としない気持ちがあったが、それでも国保加入者に比べるとまだ恵まれていた話なのだ。

こんなこと私が言うと仕事上問題があるかもしれないが、連合も、不安定雇用労働者やフリーターや仕事のない若者と共闘したいとしばしば言っているが、この国保財政の問題に一定の見直しを行わないと彼らからは信用されないだろう。連合は健康保険組合制度を維持して、それを退職後も加入できるような制度にすることを主張している。高齢者の医療費問題には一定の解決を与えているが、格差・階層問題に起因する健康保険制度の矛盾に対しては、解決策が出ていない。
リストラされた犠牲者や派遣労働者たちがどんな社会保障制度を利用しているのか、全労働者の代表組織をめざす連合なら、社会全体のささえあいの仕組みからもう一度、健康保険組合の利害を代表するような考えを改めるべぎしゃないかと思う。実は、こうした問題提起は、都道府県の国保連合会の職員の労働組合が早くから行ってきて一定の共感はあったものの、なかなか主流の議論にされなかった。もっとも連合の言う、保険者機能(給付の無駄に対する監督機能が働く)の強化のためには、現行の健康保険組合制度が有効だという主張もわかるが、そのためなら他の手段も考えられる。失業者や貧困者の医療をどう支えるのか、というのは、社会連帯を徹底していくしか方法はない。それをやらなければ失業者や貧困者が医療にかかるためには、結局のところ、サラ金が支えるか、もっと税金を高くして国や自治体が自腹で面倒見るかしかない。

一方、自民党や民主党の一部には健康保険制度の民営化を訴える人たちがいる。これはこれでナンセンスで、今の民間医療保険のように、誰でも入れるけども告知義務違反で保険金を払わない、あるいは、そもそもの加入を制限しリスクの低い人だけを選ぶ(逆選択)が起こりかねない。組合健保の制度よりさらに社会連帯をぶっ壊すことになる。社会保険はそもそも社会全体の中で必ず発生するリスクを、社会全体で分担しようというものなのだから、リスクの排除や囲い込みを公的な制度で行うのはおかしい話になる。

健康リスクが最も高い人たちほど、社会的つながりが失われている可能性が高い。そうした人たちが負担しなくてよいとは言わないが人並み以上の負担を求められる今の制度はおかしく、健康リスクを社会全体で管理するような健康保険制度の改革が必要だと痛感する。

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