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2006.12.21

12/20 まず八代先生が範を示して非常勤講師並みの給料で「既得権益」を手放してみてください

経済財政諮問会議のメンバーである八代尚宏ICU教授が、労働市場改革の方向について、正社員と非正社員の格差是正のために、正社員の待遇を非正社員の水準に合わせる方向で検討する、と発言したようだ。

労働市場の規制緩和が今日のような労働ダンピングを引き起こしていることを無視して、正社員批判。「既得権益」で話をすり替えるのが八代先生の十八番。何だか正体ははっきりしないけどずるそうな「既得権益」というと、正社員を面白く思っていない自営業、不安定雇用労働者、さらにはそうした労働形態の集積ともいえる政治業界の人たちはフィーバーする。正社員と呼ばれる人が、安倍首相のように「給料返上」すればほんとうに公正で公平な社会がやってくるのだろうか。そもそも公平や公正を否定してきたのが八代氏の立場だから、正社員をやっかむ人に「ざまあみろ」というのが仕事じゃなかったっけ。

それにしても、今回の八代氏の処方箋が本当に日本人の働き方の歪みを直す特効薬だというなら、まずは大学、なかんずく八代先生の職場のICUの雇用改革からやってほしい。
大学の常勤の先生は、給料額面こそ高くはないが、研究活動費、出張手当、場合によっては日々の通勤の送迎の自動車やらタクシー代、グリーン料金まで手当されていたりする。しかも大学の経費で研究した成果で、商業雑誌に原稿を書いて原稿料貰っても自分のフトコロに。一方、大学の非常勤講師たちは、時給労働で、研究活動での出張はたいてい自腹、さまざまな経費を削ってなんとかやりくりしている。しかも教授会政治で、有力教授に可愛がられなければ使い捨てだし、教授会の権力構造が変われば、連座して4月から「理由もなく」失業することだってある。その中身は市井のサラリーマンの正規・非正規の格差なんてレベルではない。

八代先生の言っていることが正しければ、まずご自身の大学から労働市場改革のビックバンをやって、自分の待遇を若い研究者たちに「開放」してみせてほしいものだ。年収1000万は取れる経済財政諮問会議の委員をはじめお金になる政府委員をいくつも掛け持ちし、政府情報をネタにあちこちで講演料収入を稼いでいるのだから、非常勤講師なみの給料で生活していけないわけではないでしょうに。

それもせず、せいぜいが年収1000万の大企業正社員と、年収300万の派遣労働者をケンカさせて楽しむような下品なことはやめるべきです。

労働市場改革:正社員待遇を非正規社員水準へ 八代氏示す
 経済財政諮問会議の民間メンバーの八代尚宏・国際基督教大教授は18日、内閣府の労働市場改革などに関するシンポジウムで、正社員と非正規社員の格差是正のため正社員の待遇を非正規社員の水準に合わせる方向での検討も必要との認識を示した。

 八代氏は、低成長のうえ、国際競争にさらされた企業が総人件費を抑制している中、非正規社員の待遇を正社員に合わせるだけでは、「同一労働・同一賃金」の達成は困難と指摘。正規、非正規の待遇を双方からすり寄せることが必要との考えを示した。

 また、八代氏は現在の格差問題が規制緩和の結果生じた、との見方を否定し「既得権を持っている大企業の労働者が、(下請け企業の労働者や非正規社員など)弱者をだしにしている面がかなりある」と述べた。

 八代氏は、労働市場流動化のための制度改革「労働ビッグバン」を提唱しており、近く諮問会議の労働市場改革の専門調査会の会長に就任する予定。【尾村洋介】

毎日新聞 2006年12月18日 20時31分

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コメント

 国際基督教大学の教員の給与は私学の中では圧倒的に低いですよ。実質、長老クラスでも手取りにすると35万弱らしいです。

 まぁ、もちろん八代氏はじめ、名前の売れている方はそれぞれ副収入がおありなので、なんともいえませんが。

投稿: 内部事情を知る者 | 2006.12.21 15:04

八代先生は、保育制度がらみの審議会で年収400万にもみたない保育士の給料を高すぎるといってのけたことがあります。正社員の厚遇ということをいうときには、月収35万円でさえ安定的に取ることはナンセンスと考えている人です。非正社員に給料を合わせるということの本質は、私大で最高とか最低とかそういう問題すら成立しなくなることです。労使の関係が個別関係になっていくので、そもそものそうした業界標準の賃金相場感すら壊すことなのです。

投稿: 管理人 | 2006.12.21 20:21

> 一方、大学の非常勤講師たちは、時給労働で、研究活動での出張はたいてい自腹‥‥その中身は市井のサラリーマンの正規・非正規の格差なんてレベルではない。
いや~、言っていただいてほんとうに恐縮です m(_ _)m ― ただし、上記「たいてい自腹」は「すべて自腹」が実態に近い。社会科学方面の研究者で、ワーク・シェアリングについて研究している人は少なくないでしょうけれど、その人の職場(専任教員だとして)では、いかに‘シェアリング’せずに=つまり多くの非常勤のコマ給を下げてでも専任の給与を維持し、さらに専任の数を極限まで減らして人件費を浮かせることに腐心する、という流れに与せざるをえないだろうと思います。
 今般の八代氏の見解は、そういった反-ワーク・シェアリングをすら超えて、‘全給与生活者のパート・アルバイト化’とでも言える革命的なものですね。凄まじいのは、他方でホワイトカラー・エグゼンプション(黒川さんの12/11付ブログに言及)も推進しようとするだろうから、‘バイト給与で働かせて残業代ナシ’というのを、これからの日本の労働者の基本待遇にしよう、ということ?
 この八代氏の提言、今までは「正社員であるうちは安泰」という思いが‘負け組・落ち組’への黙殺を生み、かつ雇用側への忠誠の源泉になっていたものが、うまくいけば大きく崩れ、正規労働者のそうとう上位層に、“もーやーめたっ”的な意識の変化が起こ…らないか…。大学がこの方向へ動き出すのは最もあとになるでしょう(正社員組織=教授会が管理者だから)けれど、一般企業で帰属意識の大崩落が起これば、社会も変わるかも…。

投稿: へうたむ | 2006.12.22 02:45

夕張市で、市職員の3分の1が年内に退職するニュースの中で、システム部門の市職員が年内に全員退職するという話が出ていました。帰属意識の大崩落って、経済学関係者は面白おかしく理論にするけども、職場の息の根が財務経理とは別の次元で止まることもあるんだ、と感じました。賃金を5%、10%下げるリストラはたいていの日本人が経験してきましたし、その中でも多くの人は仕事のおもしろみや、使命感で何とか踏みとどまってきたのではないかと思います。
しかし、その切り下げが半分であったり、8桁の数字で退職金が変化すると、おもしろみや使命感など吹き飛んでしまう、とも感じました。
国際競争力を名目に労働規制を切り下げ、ぼろぼろの労働条件しかなくなった我が国に、不法入国した外国人以外にどの程度の人が意欲を持って働くのか疑問です。

投稿: 管理人 | 2006.12.24 20:16

はじめまして。

全く同感です。自分が安全地帯にいて、他人をけんかさせ、溜飲を下げあってもらうという手法ですね。

大英帝国もインド支配で使った、あまりに古典的な手法ですが、今でも通用するのかどうか?

しかし、労働者がみんな300万円しか取らなかったら、まあ、7千万人がキッチリ働いたとしても、210兆円ですね。個人消費がMAXで210兆円しか生じない(税金で後は取られるし)。あと、設備投資といっても個人消費がここまで落ち込んだら、それも減る。あとは外需頼みですが、そんなに外需に依存したら、今度はものすごい円高になるはずです。
それを防ごうとしたら、日本企業は、黒字をドルで塩漬けにしておくしかない。そうすると、日本ではお金は使えない。ますます、日本は貿易黒字・貧困・財政赤字が並存する異常事態が進行するでしょう。

投稿: さとうしゅういち | 2006.12.24 21:06

ステハンで失礼します。メールも持っていません。そのことをもって削除されてももちろんかまいません。

炊きつけようというつもりじゃないのですが、
フリーターを自称する方で、八代氏の言を賞賛している人もおられます。
http://www.journalism.jp/t-akagi/2006/12/post_176.html
黒川さんは、どう思われますか?
というのは、結構共感・支持を得ておられるようなのです。
http://www.journalism.jp/t-akagi/2006/12/post_171.html
この赤木という人についてではなく、赤木という人の「考え」のほうについてです。
私は反感を覚えるのですが、その反感をうまく説明できないでもどかしく思っています。

投稿: メメント | 2006.12.26 23:41

さとうしゅういちさま
あんまり経済全体の絵について考えませんでしたが、いいコメントありがとうございます。まさにそうですね。
メメントさま
ステハンなのにいいコメントありがとうございます。
赤木さんの怒り自体は気持ちも含めてよくわかります。私も地方で月7万で生活したり、中堅企業に働いていて、銀行員や電力会社、公務員の自分より高い給料を恨めしく思ったことがありますもの。思想的議論としては面白いでしょう。
しかしそんなこと言っても品がないし、中産階級の富をワーキングプアやニートフリーターの若者に分配するなんてことが現実にできるかと言えば、どうするんでしょうか。経済のパイを増やしてニートフリーター脱出の機会を作るよりもっと難しいと思います。優秀な商売人は、そうした中産階級や金持ちからいかにお金を剥ぎ取るかということを考えています。その方が生産的です。
残念ですが、社会の意思決定権は高学歴でなんだかんだとニートフリーターにならなかった人たちにあります。彼らが、多少の贅沢があるけども、かといってステータスの割にそんなに高望みをしてもいない今の暮らしを切り捨てろ、となるわけがありません。喜捨を尊ぶような宗教が蔓延すればありうることですが。
中産階級つぶしは、ニートフリーター脱出のための足場をますます失うんじゃないかと思います。私も学生時代に就職活動にしくじりかけた人間ですから、就職口が何とか残っていたことで救われたと思っています。3年遅かったら確実にニートになっています。
労働経済学やら経営学の分野でばかりこの問題が語られていますが、しかしその分野は結局のところ国際競争力とか、がんばった者が云々という神学論争ばかりしていて、全然解決の手だてが見つかっていません。同じような議論を繰り返しては状況がどんどん悪化しています。赤木さんの議論はその神学論争の手のひらの上なのです。そこに毒まんじゅうを用意して、ニートフリーターなど下流食いをしている産業の代弁をしているのが八代尚宏教授なのです。
私は社会民主主義者ですし、アナクロな言い方をすれば共産主義革命を予防する意味でも、財政による介入を是とする立場ですから、この問題が経済の自律性で解決できないなら、大きな政府路線で所得再分配を進めるしかないと思います。中産階級や金持ちから今より税金を取って、貧困層への社会サービスの充実を進めるか、あるいはフリーターやニートを公務員や公共サービスの従業員として雇い、介護や環境事業など人不足で根詰まりを起こしている分野に労働力を投入する。そして有効需要が高まって民間ベースの経済で雇用が確保できる見通しが立ったら、競争原理がなじむ分野から民間に市場開放していく、おおざっぱですが、そんなことを考えています。
ただし今の日本政府は、国民負担率-社会保障+教育負担率の数字でいうと世界でもっとも高い、つまり税金の割に国民にお金を返していない政府のようです(意外にこの数字ではスウェーデンは世界最低水準の数字になるようです)。このまま大きな政府にしても、国民に返さないお金が大きくなるだけで、それは大きな政府論者の期待する結果ではないところです。

投稿: 管理人 | 2006.12.27 00:41

正社員の既得権を剥奪して中産階級を潰しても非正規労働者に回ってくる保証はないし、パイを増やして自然に雇用を増やすより難しいというの同感です。大体企業のありようが昔と違っているのですす・・・より株主第一の昨今、正社員をやっつけてもで浮いた人件費は内部留保か、株主への配当に消えていくだけ。さらにベテランの正社員もこんなに我慢しているんだから、お前ら派遣は・バイトもいっそうの賃下げ我慢しろ・・・と更なる非正規の待遇切り下げの口実になりかねないと思いますね。(年収800万の中高年の正社員を10人切れば年収200万のフリーターの雇用が生まれるのに・・・と単純計算してはいけません。今日びの企業は8人の年収200万のパートに置き換えておしまいでしょうから)
蛇足ながら、リベラル派でこういう労働法制の緩和に賛成する人って、もっぱら反対するやつはどうせ既得権を死守したい全共闘崩れの団塊サヨクだろう、とみなしている節がありますが、これって私には見えない仮想敵と独り相撲して悦に入っているだけとしか思えません。労働法制の緩和でいちばんあおりを喰うのはそういう古臭いサヨク思想や組合運動やどす黒い既得権と縁遠くて子育てや住宅ローン返済に一番忙しい30代の働き盛りの世代であるのに。赤木さんに限らず内藤朝雄とか仲昌正樹とかリベラル右派系の人って「団塊」「全共闘」「組合」「サヨク」への批判の自己目的化のあまり、安定雇用の破壊に加担しているのが滑稽に思えますね。

投稿: 北狐 | 2006.12.27 22:00

北狐さまコメントありがとうございます。
「既得権益」側も言葉遣いが古いし、自分たちの組織内で納得する合言葉で充足しきってきたことに問題はあるとは思いますが、それ以上に、困ったリベラル派の言葉遊びも、毛沢東じゃありませんが、主要矛盾は何なのか、と問い返したいものです。ほどほどにしてほしいものですね。
内藤朝雄さんについては、別件で評価するとこもありますので、保留します。すみません。

投稿: 管理人 | 2006.12.29 01:49

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受信: 2006.12.24 21:05

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