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2006.11.30

11/29 働くことと市民活動の両立

●「生活経済政策」の11月号、12月号を読む。「良い社会をつくる公共サービスを考える研究会」最終報告が掲載されている。冒頭の神野直彦東大教授の「公の破壊に抗して」という報告がよい。

 (ポスト工業社会への)冒険的挑戦を可能にするには、ポスト工業社会の生産活動の前提としてインフラストラクチュアを整備する必要がある。しかしそれは工業社会の生産の前提条件と相違して、人間そのものの能力を高める教育サービスや、積極的労働市場政策という再チャレンジを可能とする現物給付である。(p22)
 1980年代には「小さな政府」であるがゆえに日本は、経済成長では優等生として君臨したかにみえる。しかし、産業構造を転換するために必要な現物給付の公共サービスの給付を怠った日本は、新産業への冒険的投資が低迷した。経済成長で優等生でありながら、歴史の転換期で産業構造を転換する投資を怠ると、余剰資金によるバブルの狂宴が始まる。(p22)
 産業構造を転換しないで、旧来型産業構造を維持したまま、(不景気になってから)国際競争力を高めようとすれば、賃金コストを低めるしかない。国民の生活を保障する共同負担を低めることと並行して、労働市場をフレキシブルにして、非正規従業員を増加させ、労働コストを低めていかざるを得ない。もちろん、働く国民のモーラルとモラルも低下していってしまう。(P23)

と情勢分析は的確だ。さらに働くということを無視したNPO礼賛論に対して昨日の中野麻美さんの言葉と似た問題提起もしている。
 
日本のように政府に降壇せよという「市民社会」論が主張されると、労働市場が分断されていく。つまり政府による公共サービスが、家族やコミュニティの無償労働を代替しないため、無償労働に縛られたまま労働市場に参入する者と、そこから解放されて労働市場に参入する者が出てくる。こうしたバーとなどの非正規労働市場と正規労働市場が分断して形成され、低賃金で長時間労働が存在することになる。
 長時間労働に拘束され、労働市場の労働に加えて無償労働も担う者に、市民として「新しい公共」を担えということは、不可能を可能にせよという論理である。それは社会的排除の論理にほかならない。ここに参加できる市民は富裕階層に限られることになるからである。
 富の最大の効用は権力である。富みにへつらい民主主義を壟断しようとする者は「市民社会」という言葉をもてあそびながら、馬脚をあらわす。19世紀中葉には「小さな政府」と「市民社会」が実現していたと主張される。しかし、それは富裕層のみが市民として参加していたにすぎない。(p24)

市民活動を離陸させるために、これまではあえて働くことと自発的な公共的活動の両立について無視した議論を続いてきたが、そろそろ賃金労働をしている人が参加できる公共のあり方について真剣に考えなくては、社会に大きな亀裂ができてしまうように思うし、そのことを指摘する有識者が出てきたことに嬉しい思いをするサラリーマン三代目の私だ。

●隣の市の市議さんは小さな政府の原理主義的な考え方を持っている。その考え方は私の考え方とは正反対だと思う。しかし、現実社会で起こるさまざまなことへの感性や、怒り、共感するものについてはとても共感できることが多い。反反日とか、反フェミニズム、反既得権益、家族の復権、日本の伝統などとわめきちらす安っぽい保守とは全然違い、大人の議論ができる政治家だと思う。一方、仲間であるはずの旧社会党出身でも、いったいこの人に何に怒ったり共感したりしているのかわからないような絶対に応援したくないと思うような人もいる。

●いじめについての教育再生会議の緊急対策で、隔離教育と社会奉仕でいじめた側の根性を直すという対策が打ち出される。締め付けでいじめを退治しようという発想だ。いじめはいじめられた側が報復を恐れることにつけいって陰湿に行われることに本質がある。あまり強い締め付けをやれば、いじめのやり口が陰湿化することは避けられないだろう。とにかく被害者はふきあれるいじめの暴風を避けたいと思っているのではないか。人権を尊重する子ども文化をつくらないと何も解決しないという尾木直樹のコメントがまともだ。一方、安倍首相の今日のコメントで「いじめで命を落とす子どもたちがいる。何とかこの連鎖を断ち切りたい」と。気持ちはわかるが、連鎖を断ち切れたら、とはどういうことなのだろうか。自殺が続かなければいいんだというようにも取れる。人が死ななければ人を大切にする政策は何一つ動かないと思うことが多いこの国だが、そんなものなのかな。

●スクールカウンセラーの効用が強調されているが、文部科学省の統計で彼らがいじめを発見する確率は、小学校で0.3%、中学校で1.3%という結果が出ている。実際にいじめは関係性の問題なのに、カウンセラーは本人の話し相手しかできない。いじめを解決する能力があるかどうかは疑問に思う。本当はケースワーカー的な人材が必要なのではないかと思う。

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 大きな政府と小さな政府。 大きな政府(混合経済):政府が、均衡財政にこだわらず歳出を行なうことで、乗数効果による国民所得維持を図り、民間投資の減少を引き止め、完全雇用の達成と経済成長を図ることが目的の政策。 所得再分配をはかり消費性向低下を抑制することや、社会福祉の充実により社会不安を背景とした過剰貯蓄を回避し個人消費の育成を図る。 典型は「揺りかごから墓場まで」のスウェーデンのような社会福祉国家路線。 小さな政府:経済に占める政府の規模を可�... [続きを読む]

受信: 2006.11.30 11:58

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