10/25 子どもも守れないのに国民保護ですか
京都・長岡京市の児童虐待死事件が起こる。まったく痛ましい。根拠のない脅迫観念みたいな育児論がトリガーになっていることも気になるし、父親が早朝から深夜までトラックを運転していたことも気になる。
マスコミでは京都府の児童相談所の責任を問う報道が続く。権限があるからそうだけども、もう一歩踏み込むと、県機関が個々の児童虐待を日常的にモニタリングできるわけがない。区市町村の対応が問われているのではないかと思う。
ところがまだ一部を除いて、区市町村は児童虐待は県の仕事と涼しい顔だ(朝霞市も涼しい顔はしていないが、国や県の通達以上にはどうしていいのか考えがまとまっていない段階)。こうして市町村が子どもが死に至ったり、衰弱したり、暴力を受けている中で、まったく公権力として何をやっているのか、疑問に持たざるを得ない。子どもオンブズマンを設けたり、高齢保育士を活用して市町村版の児童相談所みたいな窓口を設けたりしているところもある。公園やプールを造ってばかりいないで、やるべきことをやってほしい。
一方で、戦争や武力攻撃、テロ攻撃を受けた場合の自治体の対応施策をまとめた朝霞市の国民保護計画案がまとめられ、現在パブリックコメントに出されている。朝霞市にしては珍しく事細かに内容を規定した計画になっている。
国民保護計画自体の是非については議論があると思う。両論とも与することのできる部分もあるので、是非論は棚上げしておきながら、内容については問題を感じた。市民への人権保障の内容があまりにも薄いこと。国民の幸せな生活の継続を後回しにした安全保障施策は全く効果がないというのは先の大戦の敗戦の教訓ではないだろうか。それと、想定されている事態がどうも第二次世界大戦のような戦争であること。武力攻撃の質が変わっている中、町内会や各種団体を動員して命令を下すタイプの「保護」施策だけで適切なのか、疑問である。
国民保護なのに、保護する内容が、生命・身体・財産だけなのである。民主主義や自由の価値、基本的人権を最大限保護することが何一つ記述されていない。財産権は保障してやっても、言論の自由や集会・結社の自由が保障するとは一言も書いていない。国民保護とはそういった我々が大切にしてきた価値を守りながら、非常事態に対応することではないだろうか。
公的機関などの権力や、戦前でいう隣組などの準権力機関は、非常事態に名を借りて、不必要な干渉や人権侵害をやってしまいがちである。そのことの救済規定が一切ない。先の大戦でアメリカはおおむね人権を保障し、国民は好きな映画を見ながら戦争に勝ったが、地何もかも投げ出さされて闘った日本は負けた。もちろん先の大戦の結果については国力とかいろいろな影響はあるけども、非常事態に国や自治体は何を大切にすべきか肝に銘じておくべきだと思う。
権力動員が明確な国民保護計画については、あっと言う間に事細かにまとめられているのに、もっと日常的で、市町村として機敏に対応しなければならない児童虐待については、遅々として対策が進まない。いったい誰のためにある公権力なのか、見失っているとしか思えない。
●吸引が必要な子が障害児だからと東大和市の保育所入所を拒絶されていたが、裁判の判決で保育所入所できることが確定した。児童福祉法では保育所入所資格は「保育に欠ける子」であり、障害の有無ではない原則を踏まえたよい判決だと思う。記者会見でお父さんが「子どもが体を動かすようになって、伸び悩んでいた身長が急に伸びた」と話していた。この言葉の意味することの重みを考えてほしい。控訴をやめた東大和市の勇断もいいと思う。
「子供と接しないようにしてた」…3歳餓死の父親供述
京都府長岡京市で佐々木拓夢(たくむ)ちゃん(3)が食事を与えられず餓死した事件で、父親の貴正容疑者(28)が、府警向日町(むこうまち)署の調べに対し、「甘やかさないよう、子どもとはあまり接しないようにしていた」と供述していることがわかった。
拓夢ちゃんの衰弱ぶりをみて、内縁の妻の西村知子容疑者(39)に「注意した」と言っているが、病院に連れて行くなどの救護措置をとっておらず、同署は父親としての養育を放棄していたとみて追及している。
調べによると、貴正容疑者は運送業の仕事で午前7時ごろに出勤、午後11時ごろに帰宅する生活で、家事や育児は西村容疑者に任せきりだった。拓夢ちゃんの姉(6)が児童相談所に保護されたことについては「自分が甘やかしてしまったから」と言っている。
9月に入り、貴正容疑者は西村容疑者と相談、「トイレのしつけのため」という理由で、極端な食事制限を始めたが、拓夢ちゃんが衰弱してもそのまま放置。死亡の約1週間前、「大変なことになるぞ」と西村容疑者に注意しただけで、拓夢ちゃんに治療を受けさせようともしなかった。
◇
同署は24日、貴正、西村両容疑者を保護責任者遺棄致死容疑で京都地検に送検した。
(2006年10月24日14時59分 読売新聞)
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