10/24 道路特定財源ではウソ報道ばっかり
道路建設にしか使われない税金を何でも使える一般会計の収入に移す議論(道路特定財源の一般財源化)は、石油・自動車関連団体の猛反発で議論がいったりきたりしている。私は、自動車利用者があまりにも社会環境、自然環境に負荷を掛けすぎていること、道路建設だけ別会計として聖域になっていることはおかしいと思う。こんなの抵抗する方がおかしいと思っている。財政事情が厳しい厳しいと言い収入もない障害者から介護利用料を取ったり、生活保護を切ったり、母子家庭を困窮に突き落とす政策をやりながら、自動車を乗り回すことだけは税金の聖域とすることこそおかしい。
道路に使わないなら減税せよという議論もあるが、これも、公金投じて自動車利用者のために便宜を図ってるのだから、社会コストとして払うべきだろう。自動車のために払う社会コストは様々ある。減税なんてことはナンセンスだ。公共交通を利用している人は、これらのコストはすべて運賃として払っている。明らかに不均衡である。石油業界の独善的なPRに誤魔化されてはいけない。
マスコミは道路特定財源だけで道路を造り剰余金が出ている、と報じているが、これも一面しか報道しないウソの一種(毎日)。これは国の会計だけの話。
道路を造ると、その建設費の一定割合を自治体が負担をしなければならない。国負担分はほぼ全額道路特定財源から出るが、自治体負担分は道路特定財源からほんのちょっとしか手当されない。ではどうやって自治体がお金を出すかというと、出すお金がないから、国が地方交付税を上乗せするようになっている。その分も計算に入れると、道路特定財源を使うと必ず一定の割合で地方交付税の支出が増え、剰余金どころか、国の財政支出を膨脹させる仕組みになっている。国と地方をあわせれば道路特定財源で全ての道路が整備されているわけがないのだ。マスコミはよく調べてから報道してほしい。地方交付税制度を使ったマネーロンダリングみたいなものだ。
地方交付税は本来、財政力の弱い自治体の力を補うために国から地方に支払われるお金だが、どういうわけだか公共事業に関しては、国が規格化した事業についてはやればやり散らかしただけ(もっともそのためには国の起債許可が必要になる。そしてそのための口利きを国会議員がやったりする)、上乗せされるような仕組みになっている。国の裁量ばかりが大きいから、不透明な圧力を国土交通省や道路公団にかけ、道路をひっぱってきた国会議員がほめられる仕組みになっている。
私は、道路特定財源については一般財源化し、道路建設は一般会計の支出とすべきだと思う。どうしてもマイカー利用者の負担した税金が他に使われるのがまかりならん、という論理は、たばこ税はたばこ吸いのために使え、酒税は酒飲みの楽しみのために使え、消費税は小売業のために使え、という馬鹿な理屈になる。
それでも、そうした馬鹿論理が社会合意となるなら、せめて自動車がたくさん走れば走るほど膨らむ社会コスト全体に使える財源にすべきだろう。第一には、交通事故に関する社会コスト。具体的には交通警察の人件費など。第二には、自動車排気ガスなどの呼吸器疾患や環境汚染に対する対策費用。第三には、自動車交通量をマネジメントするために必要な代替交通手段、具体的にはバスや電車の運営経費の補助金。第四には、地球温暖化対策費用、などにも使えるようにすべきだ。総合交通財源とか、環境税などと言われる構想にある。
それもダメで道路特定財源でなければダメという原則論が通るなら、減税の前に、国と地方での配分の見直しをやってほしい。道路建設には地方負担分があるのに、道路特定財源は国ばっかりに流れていく。その差を地方交付税が埋めるから地方交付税制度の財政悪化を招いている。支出割合に応分なかたちで国と地方の財源のあり方を最低限やってほしい。
一般財源化に反対 自動車、石油業界が大会24日12:23共同
日本自動車工業会や石油連盟などは24日、ガソリンや自動車にかかる税金を道路建設に充てる「道路特定財源」の一般財源化に反対する緊急総決起大会を東京都内で開いた。
大会には自動車や石油関係などの約20の業界団体トップらが参加し、道路以外に財源を使うなら一時的に税負担を重くしている暫定税率を廃止すべきだとアピール。既に一般財源化に反対する872万人の署名を集めており、「国民の声を無視して一般財源化を進めることは到底許されない」としている。
道路財源見直しの議論は、公共事業費削減で道路の整備に使えない余剰が発生したことを契機に始まった。政府、与党は、本来よりも高くしている暫定税率は維持したまま、一般財源化を前提に年内に具体案をまとめる予定。
道路特定財源:一般財源化の議論、月内にも再開
道路整備に使途を限定してきたガソリン税収など道路特定財源を、道路以外にも使用できるようにする一般財源化の議論が、月内にも再開する。小泉純一郎前首相が、01年に一般財源化を表明して以降、先送りが繰り返されてきた政治課題で、3兆5000億円という巨額財源をめぐる綱引きが本格化する。安倍政権の手腕が問われるが、来夏の参院選への影響もあり、本格的な一般財源化は簡単ではなさそうだ。【古田信二、増田博樹、堀井恵里子】
◆安倍政権の「宿題」
首相周辺は「来年度の予算編成作業では、道路財源が最大のテーマになる」と指摘する。一般財源化は、自民党道路族という改革抵抗勢力と戦う小泉前政権の旗印だった。それを宿題として引き継いだ安倍晋三首相は、9月29日の所信表明演説で、「年内に具体案をとりまとめる」と強調した。
しかし、自動車・石油の業界団体が24日に都内で開いた一般財源化に反対する集会には、自民党を中心に約150人の衆参国会議員も参加した。次々にマイクを握り「地方に道路は必要です。がんばりましょう」などと気勢をあげた。中には、片山さつき衆院議員など、改革路線を引き継ぐはずの小泉チルドレンの姿も。この日までに集まった反対署名は886万人分で、渡文明石油連盟会長は「04年参院選の自民党得票の約半数にあたる」と胸を張った。
◆思惑さまざま
財務省は、道路特定財源の全額(06年度で3兆5000億円)を一般財源化し、国の債務残高削減につなげたい考えだ。ただ、全額の一般財源化には自民党内に強い反対があり、「落としどころは(道路に関連した事業に振り向ける)使途拡大か」との見方が多い。
もともと小泉政権下で公共事業の削減が続いたことで、道路整備に必要な資金が減り、道路特定財源は使い切れずに余剰金となっていた。06年は6500億円も余剰があり、本州四国連絡橋公団の債務返済に4500億円、低公害車の普及や、市街地再開発などの「使途拡大」に2040億円の予算がついた。本四の債務処理は06年度で終了することもあり、07年度は余剰金がさらに約7000億円に膨らむ見通しだ。
農林水産省が地球温暖化防止のための森林整備への利用に期待を見せるなど、他省庁からも余剰金に注目が集まっている。
一方、本来の目的である道路建設に使わず余剰金が出ているのなら、税率を引き下げよ、というのが石油や自動車の関連業界の主張で、一般財源化に強く反対している。
◇道路特定財源 戦後、立ち遅れていた道路整備を、自動車利用者の負担で緊急・計画的に進める目的で、1954年に導入された。ガソリンにかかる揮発油税や自動車の購入・車検時に支払う自動車重量税などで構成されており、06年度予算で国税が3.5兆円、地方税が2.2兆円。74年から石油危機や環境保全などを理由に、本来の税率より高い「暫定税率」が採用されている。暫定税率分の税収は1.8兆円と、国の道路特定財源全体の半分強に相当する。
毎日新聞 2006年10月24日 22時28分
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