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2006.10.22

10/21 偽装請負があれば偽装留学もあり

製造業で法律で禁止されている偽装請負がバレて、役所の指導が入ったり、日本経団連の会長がさらなる労働分野の規制緩和を求めたり、いろいろ波紋が起きているが、サービス業もサービス業でひどいもので、偽装留学といったらいいのだろうか、留学と称して派遣労働者を募集する手口があった。

紹介してくれたのは、ライバル労組ではあるけれども、保育・福祉関連分野の労組の職員が運営しているブログサイト「tamyレポート・保育士東京ビジネス留学には驚いた」より。募集しているのは、就職難の地方の保育資格保有者を派遣労働者として集めて東京の認証保育所や企業内保育所を運営している人材派遣業の関連会社「パソナフォスター」。

年収200万円程度で人をかき集めて東京で働かせるために、「ビジネス留学」と呼んでいるところが嫌な感じがする。
もちろん仕事を通して学ぶことは多いのは当然として、出向や派遣、転職で「キャリアを積む」という言葉には留学と呼んでもおかしくないようなモチベーションの持たせ方もあるけれども、その含みには、本来は金貰って機会をつくってやるのに給料を払ってやるんだよ、という、明治時代の雇い主が丁稚奉公に投げかけてきた言葉のようなものを感じてしまう。

地方での保育所・保育士過剰と首都圏での保育所・保育士不足という偏在の問題は、少子化(全国的な子どもの数の減少)と男女雇用機会均等法(専業主婦率の高かった大都市圏での女性就労率のアップ)が同時代で進んできている中で発生しており、土地にこだわらない地方の保育士に首都圏で働く機会をつくるというのは1つの大事な仕事だと思うが、労働を留学といいくるめて連れてくることに、偽装請負と同じニオイを感じ取ってしまう。

紹介されている日刊工業新聞のリリースに誤りがある。パソナフォースターは東京都内で厚生労働省認可保育所を運営しているように報じられているが、東京都の認可保育所は運営していない。認可保育所は埼玉県坂戸市のみなので、エリアも認可権限も埼玉県。東京都内は東京都独自の認証保育所制度にもとづく保育所のみ。

学生時代に文系男子が遊んでいるのを横目に見ながら、実習だ補習だ家庭学習だと資格取得のためにせっせと努力してきた人たちが生きるすれすれの賃金で働かさせて、一方で聞いたこともないような外資系金融機関で誰のための仕事なんだかはき違えているようなマネーゲームの片棒担ぐ若造(彼らを食わすために農産物・原材料・為替の価格が乱高下する)が何千万もの年収(彼らはいつ解雇されてもおかしくない仕事だと開き直るけど)いることの矛盾は良くない。

●古い話になるが木曜日の「クローズアップ現代」で介護の人材不足が深刻になってきているという報道はよかったと思う。医師の人材確保の議論もいろいろあるけれども、こっちの方が職務に見合わない待遇であることはもとより、人並み以下の待遇なだけに景気回復とともに人材流出は深刻になる。経済界のように、外国人労働者を安くこき使えるように輸入解禁を求める意見もあるけれども、これには一定の条件が満たされない限り反対だ。(過去記事はこちら。)
年収200万を割り込むような介護労働を前提にして、介護保険財政を組み立ててきた矛盾が出てきている。医療的な知識に加え、精神労働として、あらゆる知識やコミュニケーション能力、社会的知識を求められる介護労働が、独立生計すら立てられない、結婚したり子どもを育てたりする余力がない、という労働力に支えられているなら、制度が維持できなくなる日は遠くない。労働組合のがんばりどころだが、大元のお金を出す政府が増税はしないわ、医療との領域分担を再定義しないわ、支出抑制はやるわ、さらには企業減税のためにさらに政府支出を捻出しなければならないわで、当面、微調整は行われるにしても介護労働者のおかれた事態が改善される見込みはない。介護保険料もマスコミが上げるな上げるなの大合唱。
進められている改革は利用者を減らすことで、介護抑制をさせることだ。安倍政権の保守的な家族政策もあいまって、悲惨かつ虐待の温床でもある家族介護を奨励するような動きにもなりかねない。軽度介護を見過ごすと、重度化するまで何も手が打たれなくなるし、体が動くため軽度の要介護者の方が家族にとっては負荷が高い場合もある。介護保険の意味が問われる心配な状況だ。
このままでは、介護労働者は年100万未満の年金しかつかない。公務員か大企業に働く配偶者でも見つけなければ、一生続ければ生活保護受給者(全額ではないが)になっていく。介護される高齢者は年金が足りない、介護保険料が高すぎる、消費税は上げるなと叫び続けている。叫ぶことにおかしいとは言い切れないけども、割り切れないものを感じる。
ゲストの神野直彦東大教授が、仕事には、待遇、評価、仕事を通した教育機会のどれかが最低限保障されなければ質は維持できない、というコメントが良かった。

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