9/2 この国の美しくないところも取り込んでいく
次期首相内定者が「美しい国」を標榜している。私は商店街で育ったし、池袋の雑多な街が好きだ。美しさやモラルが必要以上に強調されるような社会は、ふくらみを失いつつあると思う。
ここ数年、不法入国の外国人が徹底的に摘発されて入管送りになっている。評価は別れるものの歴史ある売春街やストリップ劇場も次々にこの社会から抹殺されている。性教育批判も、社会的有効性よりも美学の問題として反対論が強まっている。マンションでの政党ビラ配りの摘発でも政治的自由や表現の自由よりビラが配られる不快感という美学の問題で司法判断が行われている。
一方、びしっとスーツをきて資格を取ってばかていねいでもったいつけた敬語を話す若造であれば、どんなに他人の生活を壊すようなマネーゲームをやってもビジネスとして美しくオブラートにくるまれている。また、このようにモラリズム的な疑問の呈し方しかできない自分に、さらに苛立ちを感じる。
次期政権がつくる「美しい国」という社会理念のもと、自分が今取り組んでいることにも、少し危機感を感じている。
地域福祉計画づくりは、市民社会にふさわしい福祉制度をつくるために参加型の福祉をやろうというもので、職場丸抱えの工業社会型の福祉を乗り越えることをめざしている。ところが、地域福祉計画のつくりを一歩間違えると、隣組制度の復興運動になって、地域の少数派や美しくない人々が受ける威圧感をさらに強める道具になってしまいかねない面もある。だからこそ、差別解消や人権への理解、当事者の最善の利益と権利保障ということをきちんと意識して地域福祉計画づくりをしないと危ない道を拓くことになりかねないと感じる。とくにここ7年ぐらい、人権や権利という言葉に猛烈な逆風が吹いている。
話を戻すが、北朝鮮拉致被害者への対応が良かったこと以外は、これといった業績が不明確な次期首相。つまらないことでNHKや朝日新聞、TBSへの圧力を強めたことや、警察官僚たちとの関係の深さ、憲法改正や教育基本法改正で日本が立て直せると信じ込んでいる政治スタンスを考えると、国家に嫌なことをされずに済む手段を考えておかなくてはならない。
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