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2006.09.24

9/24 誰のために子どもをふやすのか

政府が出生率に目標値をおくという。出生率を高める必要がある、と政府が宣伝する前提の第1は、年金制度の維持にある。しかし、出生率を上げるより優先して解決すべき課題があるんじゃないか。

年金制度は、加入者の払う保険料や税と受給者の受ける年金のバランスで維持されていく。子どもが増えたからって年金加入者が増えなければ、払う年金保険料が少なければ、年金制度が危機である状況は変わらない。仮に出生率が回復しても、年金財政に寄与するのは彼らが納税者になる時代以降になる。
不安定雇用だらけで、収入が低く、そもそも年金加入者にすらならない今の若者の雇用政策を考える方が、20年先に年金保険料を払う子どもたちのことを考えるより先じゃないだろうか。今いる若者が年金保険料や税金などを払えるような社会にしていくことが第1にやるべきことだろう。
その結果として、安定した子育てのできる経済環境がつくられてくるから、出生率の低下の背景の1つになっている、若い人たちの所得の低下や将来設計の見通しが立たないような状況が改善されれば、出生率は劇的に変化することはないにしても、自動的にある程度の水準まで回復するのではないか。

年金財政を理由にと、出生率を維持しよう、維持しようと、おじいさん、おじさん、おばさん世代が騒げば騒ぐほど彼ら自身には切実な問題として響くのかも知れないが、子どもや子育て世代には、年金受給者(自分の親を含めて)のために苦労する人生が待ち受けているという嫌な感覚にとらわれる。私は年金のために出生率回復というフレーズを聞かされるたびに、他人の人生を何だと思っているんだ、と言いたくなってしまう。まして今高齢者になろうとしている世代は、封建的な社会風土が解体されたり公的年金制度が確立された後で親の扶養もしないで済めば、経済も安定しているときに働き盛りで、いちばん他の世代のことで負担をしないで済んだ世代なのに。

そんなに子どもが増えてほしければ、かつての江戸封建時代のように、子連れ離婚・再婚も、婚外子も、できちゃった婚への差別を解消し、どんどん公認するべきだろう(社会的差別を恐れたバースコントロールの是非にもつながってくるので、長くなるから詳細はまたの機会に書いてみたい)。親を選んで産まれてくるわけでもないのに、非嫡出子というカテゴリーをつくり、「不幸な子」として差別するような戸籍制度は改革すべきだろう。どうしても家族制度が大事だというなら、厳然としたイエ・結婚制度と、出産・育児を見事に分離した昔の岐阜県白川郷のような風習も参考にすべきかも知れない。しかし、わが県知事や都知事、次期首相のような人が選ばれるように、相変わらず核家族の責任を強めるメッセージが今の政治のトレンドなのだ。うんざりする。

無認可保育所に月収の半分近い保育料を払って働いて、さらに月3万、事業者負担を含めれば5万円以上の年金保険料を払わせられ、何のために使われているかわからない高齢者医療の維持のためにやはり事業者負担含めて月3万以上の健康保険を払っている私に、私の手取り給料以上の年金を受け取りながら「保育所に子ども入れてかわいそう」だとか「家庭責任を公がやるのは財政の無駄だ」と言う年金受給者世代に人たちがいることも指摘しておきたい(ついでに埼玉県南部には公明党と共産党を除き、こうした思想の持ち主の議員がものすごく多いことも指摘しておきたい)。

出生率の目標値「1・40」新設、年金の信頼回復狙い
 厚生労働省は23日、少子化対策の一環として、将来の合計特殊出生率を現在の1・25から1・40程度まで高める目標値を新設する方針を固めた。

 12月に目標値を公表するとともに、目標を達成するために、どんな少子化対策がどの程度必要になるかを分析し、2007年度の少子化対策関連予算に反映させる。

 出生率が目標値まで回復すれば、現在の年金制度が想定する給付と負担の水準が維持できることから、年金制度の信頼性の確保につなげる狙いもある。

 出生率の目標値設定は諸外国ではほとんど例がなく、「国が出産を奨励する目標を掲げるのは行き過ぎ」といった慎重論もあった。しかし、「ほしい子供の人数」は平均2人以上とする各種の調査結果と実際の出生率との差は大きく、「国民がほしいと思う子供の人数に近づける目標ならば問題ない」と判断した。

 出生率の推計は、国勢調査に合わせて5年ごとに国立社会保障・人口問題研究所(社人研)が、50年先までを「高位・中位・低位」の3パターンで示している。これは、過去から現在までの出生率に関連する「女性の生涯未婚率」「平均初婚年齢」「夫婦が生涯に産む子供の数」などの係数の変化から、将来の値を推計したものだ。新しい目標値はこうした学問的な推計に加え、「少子化対策の効果」という仮定の値を加える点が大きな特徴だ。

 厚労省は、〈1〉現在の年金制度が基準とする将来の出生率が1・39〈2〉現時点で、ほぼ出産が終わった世代の出生率は1・5台――などから、将来の目標として1・40程度を目指すのが現実的と判断した。

 厚労省は、年金制度を揺るがしかねない極端な少子化に対する具体的な目標と解決策を示すことで、年金への信頼回復にもつながることを期待している。

 社人研は年内に、新たな出生率の推計を公表する方針だが、少子化傾向に歯止めがかかっていないため、標準の中位推計は目標値の1・40を大きく下回るのは確実だ。

(2006年9月24日3時28分 読売新聞)

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