8/8 事故の補償を全額公費に出させるのか
医療事故に何らかの補償ができる制度が必要だ、という医師会の主張は考えてみてもよいが、今日、医師会が出産に関する医療事故の補償制度の案を発表した。その内容が、財源を政府から60億円拠出させ、さらに妊産婦から負担をさせるというもので、医師自身は何の負担もしない内容。
これまで、小児科・産科医不足にかこつけて、医療の側は医療事故に対する患者の告訴権を制限するかのような発言を繰り返してきた。この案では、その上、自分たちの責任を痛みも感じずに税金や被害者の負担に押しつけようとはずいぶん太い根性である。
自分たちの業務上おこした事故の補償に対して、丸ごと公費で面倒見る制度なんて他のどこにあろうか。たいていは、業界団体の互助制度や民間保険会社の保険を経由して、同業者で負担しあうのが常識じゃないだろうか。医療がやりたい放題、ほ乳類のお産の本能的機能を全く無視し、人体を切り刻むかのような産科医療の現状で、このような制度ができたら、モラルハザードになるだろう。
折しも、愛育病院で鉗子出産の赤ちゃんの頭が潰れる事故が起きた。ご冥福をお祈りする。
出産時の事故で障害公的補償制度、医師会が原案を公表
日本医師会は、出産時の事故で脳性マヒとなった重度の障害者に、医師の過失の有無にかかわらず補償金を支払う公的な「無過失補償制度」の原案をまとめ、8日公表した。厚生労働省に同案を提出し、法制化を要望している。
生後5年までに一時金2000万円を支払い、6年目以降は介護料や逸失利益を年金形式で支払う内容。基金の財源は、国から年間60億円の支出を受けることを想定し、妊産婦からの負担も検討している。しかし産科医の自己負担については「国民の同意が得にくい場合は、1分娩(ぶんべん)1000円を集める」と触れるにとどまり、厚労省は「当事者同士の負担が当然で、国費負担はなじまない」としている。
この制度は、訴訟による負担を敬遠し、産科医のなり手が減っていることなどから同医師会が導入を検討している。
(2006年8月8日23時7分 読売新聞)
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コメント
医学生です。
医療事故のための保険があって、医師はほぼ全員が入っていて、そこからもかなりの額(一億円までと聞いています)が補償されるのですが、この読売の記者はどこから全額公費なんて考えが沸いたんでしょうね?
マスコミの無知って怖いですね。
投稿: ER | 2006.08.09 11:58
私も医学生です。
>自分たちの責任を痛みも感じずに税金や被害者の負担に押しつけようとはずいぶん太い根性である
医師に過失がない「事故」の場合の話です。過失がないのにどうして保障義務が発生するのですか?私には分かりません、ご教唆ください。
>ほ乳類のお産の本能的機能を全く無視し、人体を切り刻むかのような産科医療
その本能的機能に頼っていては母子ともに危険な場合に医療行為を行うのです。あなたの周辺の病院では全例帝王切開なんですか?そんな病院聞いたことがありませんでした。
マスコミの報道はすべてバイアスがかかっていることを認識してください。そんな報道をさらに曲解しないでください。それをもっともらしく発言しないでください。
投稿: ある学生 | 2006.08.10 15:44
「自分たちの業務上おこした事故の補償に対して、丸ごと公費で面倒見る制度」と書かれていますが、正気でしょうか?
この制度案の、いったいどこをどう解釈したらそういう理解になるのでしょう?
まずは脳性麻痺の定義・分類、およびその成因から調べてみることをお勧めいたします。その上で、ここの読者の誤解を解く意味合いからも、この場に簡潔に提示して下さい。もちろんその情報ソースを添付することをお忘れなく。
現時点において、管理者さまは産科問題に関しては根本的な理解に欠けており、非常に偏った視点から書かれた内容としか思えません。
いやしくも公開の場で情報を発信する以上、「正確さ」について責任感のカケラくらいは見せて頂きたいものです。
投稿: 諸行無常 | 2006.08.10 17:39
医学生の方がいわれた医療過誤保険は原則的に医師に過失がある場合にのみ支払われるものです。この記事でいわれているのは自動車保険のような「無過失保険」制度のことです。
自動車保険があるから無謀運転が後を絶たないと言えないように、こうした保険制度ができるとモラルハザードになるとは言い難いと思います。
100%間違いのない医療というものは世界中どこにも存在しません。患者さんの体の中で起こっていることを完全に正確に把握できない上に、こちらが医療行為として働きかけて患者さんの体に起こる反応にも個体差があるからです。
世間でいわれるやぶ医者も確かにいます。医療過誤もないはずはありません。しかしマスコミがよくやるように、悪い結果が出た「から」医者が悪いに違いないという決めつけは、いささか度を超していると思えます。
付け加えますが医師、医療機関の収入のすべては診療をして患者さんからいただくものです。医師が支払う賠償金も廻り回って患者さんが負担することになることはご理解下さい。
これも居直りなのでしょうかね。
投稿: 通りすがり | 2006.08.10 19:05
こういうことをして、無過失なのに不幸にして起こった事故・合併症については医師・患者ともにケアしないと、本当に産科医療は破綻します。
投稿: でも | 2006.08.10 19:33
「公務執行中の障害は、公費から出される。」
当然の事だろう。
ブログ主が、例えば市営地下鉄などの仕事をしていた際に、水害事故が生じて死者が出た場合、ブログ主らが個人的に責任を問われるのが正しい事か?可笑しいな。
このブログ主は、医者に対する奇怪で奇妙な批判ばかりだ。恐らく、本人自身の黒々とした心の闇がそういわせるのだろう。下らぬコンプレックスである。
民主党議員・やまのい氏の発言をもう一度しっかり噛締めて自分の心の歪みと闇を直視すべきであろう。
投稿: 元洛東病院勤務医 | 2006.08.10 21:22
私はこうした保険自体があることを否定しましたか?むしろ必要だと書いています。
普通は同業者が負担しあうものなのに、なぜ公費負担が出てくるのか、ということを書いているのです。トラック業界が保険料を国が出せなんていう話しに絶対ならないでしょう。
公務執行中の、ってこれは公立病院のことですよね。それは事業主としての国または自治体の負担であって、医療被害全般を公が負担するなんて仕組みは、この社会のどこにもないはずです。
それから水害事故など、ことによっては個人も責任を問われる時代です。過日は、鉄道のガードに危険であることの看板を出さなかったために事故死した人がおり、自治体職員に損害賠償が求められています。難しい時代です。
投稿: 管理人 | 2006.08.10 22:04
>普通は同業者が負担しあうものなのに、なぜ公費負担が出てくるのか、ということを書いているのです。
お、論点をずらしてきましたね。すり替えはいけませんよ。
原文では「自分たちの業務上おこした事故の補償に対して、丸ごと公費で面倒見る制度なんて他のどこにあろうか。」って書かれてますよね。その認識がそもそも根本から誤っていますよ、ということを数限りなく指摘してもらっているのに、自分の間違いは決して認めようとしない、まぁ口先商売してる人ですからそんな癖は染み付いてるのでしょうが。
>トラック業界が保険料を国が出せなんていう話しに絶対ならないでしょう。
たとえ話を出されたので乗りますね。運送500回に1回の割合で人智で回避不可能な災害が起こり、荷物が全損に近い状態になる。その場合に民事で訴えられれば億以上の損害賠償を請求される。そしてその災害は回避可能だったはず、といわれのない刑事罰に問われる危険性すら伴う。災害時の訴訟率を仮に100%とすれば、1億円÷500回=1回の運送につき20万円の保険金が必要になります。これが、産科における脳性麻痺の発生頻度と、それに対する社会の認識です。これをすべて産婦人科業界内で負担せよ、ということですね?
ま、そうなったら分娩費用に2-30万上乗せすればいいだけだけどね。それを支払わないなら医者は分娩を診ないぞ、と。
>公務執行中の、ってこれは公立病院のことですよね。それは事業主としての国または自治体の負担であって、医療被害全般を公が負担するなんて仕組みは、この社会のどこにもないはずです。
だから、それを諸外国にならって創設しようという動きです。
そんなことも知らずに書いてるのですか???
>それから水害事故など、ことによっては個人も責任を問われる時代です。過日は、鉄道のガードに危険であることの看板を出さなかったために事故死した人がおり、自治体職員に損害賠償が求められています。難しい時代です。
公立病院の勤務医であろうと、個人を名指しで立件もしくは起訴されれば同じことです。べつに最近のことではなく昔から。それを「難しい時代です」だなんて・・・いったいどんなぬるま湯に浸かってたんでしょうね。ちなみにその自治体職員に最終的に判決された賠償額はおいくらですか?50万円?100万円?
投稿: 諸行無常 | 2006.08.10 22:55