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2006.08.05

8/4② ふじみ野市プール事故から考える埼玉県南部の自治体事業の委託

ふじみ野市のプールの死亡事故はほんとうにいたわしい事故だ。

市営プールの民間委託が、市民も市役所も知らない業者に丸投げされて、行政サービスが受託業者のマージン稼ぎにしかされていなかった実態には呆れる。丸投げされた業者は人件費を節約するために専門的訓練を何一つ受けていない若者に現場を任せているだけ。その結果としてただプールを観察しているだけの監視員がいることになった。そこで働いていた若者たちもたまらない経験になったことだろう。
こうやれば、丸投げされた業者は、市議や市職員に何らかのキックバックを渡すことも可能だ、ということに気付いた。ただし今回のような事故がおきてその構造がばれなければ、という前提がつく。どう見ても遊んでいるだけの議員の親族からビルメンテナンス会社の役員の肩書きの入った名刺をもらったことが何回かある。そういう会社ってどうやって稼いでいるのか、前々から疑問だったのに1つの答えを見せてもらったような感じがしないでもない。

このほか、今回のプールをめぐり、ふじみ野市の業務委託のずさんな状況というのがどんどん明るみになっている。プールに市職員が監督に来ていたか、ということが今日の話題だったが、市側は毎日行っていたと弁明したが、丸投げされた会社のアルバイト監視員は年に3~4回来て現場をぐるっと歩いてあとは事務所で雑談して帰るだけだった、と証言して、食い違っている。これと同じようなことを朝霞市内の保育園の運営委託でも聴いている。市側は法律にもとづききちんと監督している、と弁明していたが、そこで働いていた方は、やはり市は年3~4回視察にやってくるだけで現場職員とはほとんど言葉を交わさず事務所で園長と歓談して帰ると話していた(最近、本庁の職員が現場に良く入るようになった噂を聞くようになったが)。埼玉県南部の共通の体質なのだろうか。

そう思わせることを感じることがある。自治体業務の委託を考えるにあたって、埼玉県南部の自治体は構造的な弱点を考えたことがあって、それが以下の3点だ。都内の自治体とも、あるいは北海道や北陸や九州の自治体とも大きく違う問題だ。
1つは、市民の精神的求心力は東京にあり、多くの市民は地域に関心を持たない中で行政運営がされる。関心を持つ市民が圧倒的に少なく、行政のやることが利権化したり委託に関する不透明な関係ができやすい。
1つは、村から大きな合併を経ずにあっと言う間に市になったので、近代的な自治体運営に変わりにくかったこと。とくに苦情や市民の意見に対する対応能力が弱く言い訳にもならない言い訳ばっかりする。端的に言うと、問題発見・解決能力が鈍いということ。
1つは、多くの自治体で70年代に至ってまだ縁故採用を行い、その上組合結成を徹底的に圧力をかけてきたので、組合がないか機能していない自治体が多い。その結果、自治体業務の委託に関して組合が反対することが表面化することはほとんどなく、職員集団自身からの厳しいチェックが効かない。むしろ市職員が事業の外部委託を効率化の指標だとして胸を張るぐらいで、委託された現場でどんなことが起きているか全く関心がない。

自治体の業務委託が不正か不正でないか、効率的か非効率かという問題とともに、透明性や、公開性や、そして何より安全性が大事にされるために、克服しなければならない課題ではないかと思う。

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コメント

IT業界なんぞにいると、他人事じゃないわけですね。
お役所は「実績がある」とされている大手に丸投げして、大手は何もわからないままピンハネして下請けに丸投げする。その下請けもさらにピンハネして丸投げする。そうやって多重下請け構造でピンハネされて、末端まで来る頃には金も時間も(さらにはシステムを作るために必要不可欠な顧客の嗜好や目的と言った情報も)無くなってしまう。
けっきょくこの手の問題は、発注元は金は貰うけど責任を取らない日本の文化に問題があると思います。おそらく今回もこれだけの事件を起こしたにもかかわらず、せいぜい末端の誰かをトカゲの尻尾切りに使うだけ。本当の責任者は知らぬ存ぜぬを通して、ほとんど処罰されないでしょう。
もし、「一度このような事件を起こせば、自分は業務上過失致死で逮捕される」という自覚が責任者の側にあれば、問題が起こる前に必死で対応を考えるでしょう。真面目に対応さえすれば、よほど無能でない限りは未然に防げる事故です。しかし実際には何もしない。何も知らない。警察も政府も指一本動かさない。言ってしまえば警察や司法も共犯ですね。
責任者なのだから「知らなかった」は言い訳にはならないはずなのですがね。

投稿: とおりすがり | 2006.08.05 01:06

 ふじみ野市のプール事件や朝霞市の宮戸保育園などの例につけても、やはり市民活動によるオンブズネットのような第三者のチェック機関がないと、行政も目が行き届かないし、業者も業務を怠ってしまう。どこかで市民が目を光らせている機関があるというだけで、行政も業者も業務に対する緊張を保たされるのが人情でしょう。いろんなNPO団体、任意団体、福祉関係業者などの活動状況を、定期的に市役所の担当者が訪問して、施設の責任者や職員に尋ねたところで、自らの実際の不利な事、不都合なことを話すということは絶対にありえない。そこの利用者でもその家族でも、施設の責任者の前ではものは申せない。市の担当者は特に問題なしということで帰っていきます。
 市民による第三者機関は一定の当たり前の調査票に基づいて、巷のうわさや評判から、利用者とかその家族から個別にうまく聞き取ることが大切ではないかと思います。

投稿: T.N | 2006.08.05 22:28

IT業界はまさに丸投げの固まりですね。現状のIT業界の構造から考えると、仕方がないような感じがしますし、統合された完成物が良いにしろ悪いにしろ元請けが知らなかったで済まされないので、今回の事件よりまだましかと思います。IT業界に限って言えば、佐賀市のシステムの競争入札で明らかになりましたが、応札の仕様を勝手に業者が都合よく変更したり、応札する側があれこれ条件をつけたりすることの問題点があると思います。
TN様。
行政オンブズマンの必要性は感じますが、現状の行政オンブズマンは市民の権利侵害のモニタリング・改善の仕事より、議員の給料は高いとか、市職員が3分昼休みをオーバーして取得しているとか、みみっちいことばかりを趣味的に問題化して、市民にとってあまり役に立っていないと思います。そんなことより、行政に苦情を申し立てしたらハラスメント受けている人とか、生活保護のように権利としてあることを申請すらさせないような行政のあり方などを問題化してほしいものです。
プール事故を防ぐためには、第三者による行政監視ということになると思いますが、日本のそうした機関や、そうした機関に入りたがる人は税金をけちることしか視点がないのが心配です。行政サービスを安い業者に委託する論理だけでは、ふじみ野市のようにかえって今回のプール事故のようなことを誘発してしまうような感じがしています。
市職員が現場に行っても、といいますが、やはりそこを基本にしないと、と思います。公務員が現場に入っても意味がない、という論理を立てると、市民がチェックしないものは市の責任ではない、という論理が成り立ちます。何のために公務員を雇っているのか、ということを考えたらそんな馬鹿な論理を許してはいけないと思います。
業者が市の事業を受託してやり散らかしているなら、それをチェックするのは発注者責任です。市職員が繰り返し現場に入り、そこの職員といろいろ意見交換しながら、危険や問題点、改善点が発見されていくものだと思います。
もう1つ踏み込むと、議員や圧力団体の要求、コストなんか考えられないで取られるこうした娯楽施設への要望アンケート、陳情そうしたもので、こうした娯楽施設は建設されます(東京のオリンピック誘致だって同じ)。
こうした娯楽施設を建設したり運営すれば、豊島園のように千何百円も利用料を取れないから、結局は赤字を垂れ流すことになります。そのことの妥当性を考えなくてはならないのですが、第三者機関が勝手にダメ出しすることがいいのかどうかは、自治体財政の専門家と言われる人たちは介護施設や保育園の存在そのものを無駄だと言いかねないので、民主主義のシステムの中でどこまで強くやれるのか慎重に考えなくてはならないでしょう。

投稿: 管理人 | 2006.08.06 00:57

> 末端の誰かをトカゲの尻尾切り… by とおりすがりさん
今回はそうはいかないでしょう。京明プランニングの責任者、経営者は刑事責任を問われますし、太陽管財も知らなかったでは通らないでしょう。こっちのほうは、市との契約違反の嫌疑もあります。管理の実態はすべての法廷で糾明され、その中で市職員の監視の実態や、違法な委託の実態も明らかになってくるでしょう。

> そこで働いていた若者たちもたまらない経験になったことだろう。in ブログ本文
そうですねえ。思うに、それほどひどい状況だと、市に直接投書したりした人もいたのでは、などと思うんです。そういうことがなかったとしたら、今の風潮で“オレ関係ないし、めんどうだし”という感じだったようで、残念 ― ツマらんことのクレイマーはいっぱいいるのに^^。監視員以外からでも、投書などあったのを無視していたのならこれまた遺憾。

…まったく‥‥。もう忘れ去られたようになっていますが、あのマンション、ホテルの超-広範囲な、耐震強度偽装、これからどうなっていくのか。原爆被災者認定や水俣病患者認定の問題がいまだ解決されない、というより解決しない方向で終わらせようと決めてきた国家、というのはいったいナンなのか。グチばっかりになりますが、これでテレビをつけたら「ご利用は計画的に」の連呼。みんなが計画的な経済生活、経済感覚を持ったら(持ちえたら)消費者金融なんか要らんだろうに。暴言まみれの取立てが発覚してくる業界から「大人のマナー、お金のマナー」の説教をくらう、という世の中。最もオカシクなった感覚を、社会のベーシックに ― 表層ではなく、堂々とベースにしきってしまおう、という感じがしませんか?

投稿: へうたむ | 2006.08.06 02:06

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