6/3③ 医師不足は数より適正配置
医師不足は、医師の全体数ではなく、科のアンバランスや、病院/開業医の比率のアンバランスに問題があるという調査結果が出ているようです。
「医師不足は適正配置で」保健医療科学院が予測と提言
大学医学部の定員を広げて医師の数を単に増やしただけでは、30年経過しても病院の医師不足は解消しない―。
こんな将来予測を国立保健医療科学院の長谷川敏彦・政策科学部長がまとめた。
医師不足の対策は、医師の増員より、医師の適切な配置が重要であることを示す研究成果として注目される。
予測は、2040年までの医師数と患者数の需要と供給のバランスについて解析したもの。
現在は、患者数に対して、必要な医師の数が少ない状況になっているが、20~30年後にはこの需給バランスが均衡し、数の上では医師不足とは言えなくなるという。
しかし、医師は労働条件の厳しい病院勤務から、開業したり診療所に移ったりする傾向も加速するため、病院勤務医は将来も横ばいか、微増にとどまると予測。
一方、高齢化の進展で、入院患者は増え、病院で医師が足りない「ミスマッチ(不均衡)」は続く可能性が高いことが示唆された。仮に、医学部の定員を現在の5%増やした試算でも、この傾向に大きな変化はなかった。
長谷川部長は「いまから医学部の定員を増やすより、現在の病院と診療所の医師の配置や外来患者について、調整することが重要ではないか」としている。
(2006年6月3日20時5分 読売新聞)
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コメント
「20〜30年後にはこの需給バランスが均衡」というのは、私が医学部に入ったころも同じフレーズを聞きました。あれから、20年以上経ったのが今なので、あまり期待できないような気がします。
高齢化の進展と、患者の増加がリンクするのは疑問です。元気な高齢者が増え、案外、患者数は増えないという希望を持っています。高齢者イコール不健康という図式を壊したいと願っています。そういう願いをこめて、日々の仕事をしています。備えは必要だと思いますが。
適正配置は、重要です。それには、抜本的な対応が必要です。現在の仕組みは、「自由」が原則です。つべこべ言わずに全体の配置に従うには、黒川さんが主張するような「公務員」化や、それに準じた意識の涵養が大切だと思います。
そこに、楔を打ったのが、自治医大です。うまく行かないとボロクソに言われたわりには、うまく行っていると思います。しかし、規模小さく、全体の割合からみて、インパクトが限定的なのが問題です。
臨床研修のシステム等は、自治医大での「実験」がベースになっている部分が多く、最近の医師引き上げなどの目の前の問題の引き金を引いているかもしれないと思います。しかし、目の前の問題は、守旧的な勢力が対応できずにアタフタしていることから生じた影響なので、5年もかからずに過去のことになると思います。
それからは、「質」です。「質」には適正な配置は重要な要素だと思います。
投稿: gskay | 2006.06.05 10:17
自治医大が果たしている役割は大きいですね。
高齢者対策の医療は、むしろ全体構造が介護に取って代わられてくる部分も大きく、需給バランスではそんなに問題なく進むと思いますが、小児科と産科はどうなるか予断を許さない感じがしますがいかがでしょうか。
適正配置は難しいですよね。特に医師は独立心が旺盛な人たちですから、サラリーマンのように明日からあそこで働けということを素直に受け止められるかどうか。医師養成過程の変化に期待するしかないのでしょうか。それとも経済的インセンティブに頼るのがいいのでしょうか。公務員化みたいな激烈なことをやった方がいいのか、答えが見いだせません。
産科の医師不足問題は介護と似たようなことが言えて、足りないという掛け声で産科医を増やすのも必要ですが、ある程度は昔のように丈夫な妊婦には、産婆つまり助産士による出産にシフトさせていくことを考えた方がいいのだと思います。何でも公的サービスという私ですが、リスクがない限り、人と人との出会いの最初ですから、お産はなるべく家庭的にやった方がいいと思います。25日にそんなイベントが近所であるようなので、楽しみにしています。
投稿: 管理人 | 2006.06.05 23:33