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2006.06.02

6/2② 医師不足のお手盛り議論・・・

特報首都圏「医師不足・患者の命を守るために」を見ていて、医師たちの身勝手さにむかっ腹が立ってくる。

番組では、全国的に地域医療が崩壊している原因として、全体としての医師不足とともに、首都圏の開業医が高い報酬で楽な勤務体制をぶらさげて病院医をかき集めていることの問題を指摘していた。開業医の方が勤務時間も自由にできて、羽振り良く遊んで暮らせて、そこそこ尊敬されて、難しい患者や都合の悪い症状の患者は総合病院か大学病院に回し、おいしいどこ取りで仕事できて、さらに病院医の1.5倍の年収があるという。それが実態ならば働き盛りの医師がみんな開業医になりたがるのは当然だ。

それに対して開業医が発言力をもつ日本医師会副会長が言う、診療報酬を高くすれば、医師全体のパイを広げる中で病院に手厚く配分してやろう、という考えは、医師どうしの議論ではまかり通るのかも知れないが、コスト管理もできないバカ高い公的医療保険を負担している他の人のことなど全く考えていない意見だと思った。
さらには、看護婦から保育士、ヘルパーまで、地域で命や暮らしを守る仕事をしている他の職種の人たちが、年々長時間、不安定になりながら、毎年5%近い給料カットをされている状況のもとで、何言ってるのかと思うような発言だった。開業医と病院の医療費の配分を変えるしかない。開業医にはリスクがあるって言ったって、医師会と大学の医局がつるんで開業調整しているんだし、開業医が食えなくなったという話は聞いたことがない。

大学病院の業界を代表する医師は、医局制度を崩壊させた今の厚生労働省が悪いと指弾。しかし、大学のボス教授がいつまでも教え子の医師の就職先を指示する仕組み問題だし、それくらい医師の配分を誰かが調整する必要があるなら全員公務員化して人事を公的管理におくべきだろう。医局の人事支配が、地域の総合病院を大学病院が植民地化して、地域医療の改善がどうにもならない状態をつくってしまう。そのことの反省が見られない。医局支配のおこぼれを預かっていた自治体病院の代表にも批判されていた。

産科医の激務の話も、どうやったら激務じゃなくなるのか、という話になればよかったが、医師集団の口から出てくるのは医師の責任を軽くするために事故の過失責任を免責しろ、というような話になってしまった。甘ったれた体質はどうにかならないかと思った。もちろん最近の患者やその家族の中に、何かと医師の責任を問う人が少なくないのが現実だと思うし、たまらないという気持ちはわからないでもない。
しかし、人が死んでいるのである。
私も祖父2人はMRSAで亡くしたし、友人は、有名な大学病院で今の医療常識では必要のないと言われるごく小さな動脈瘤の手術後、意識を失い死んでいった。ご両親が医師の処置の問題を感じたが、外部からは問題自体があったかどうかの情報は手に入らず、息子の死因が不明確なまま死を受け入れざるを得なかった。医療過誤の訴訟を起こせる人は、医師の治療が問題だったことを認識でき、かつ不幸中の幸いで弁護士を納得させるに足る何らかの治療ミスの証拠を入手できた人だけである。当然、私の祖父がほんとうはどうして死んだのか何もわからない。歳だから仕方がないと納得させるしかなかった。

人の命を奪う可能性のある仕事は他にいくらでもある。踏切監視員、トラックの運転手、重労働でもいろいろな仕事をした人が事故を起こせばそれなりの責任を負う。理不尽な取り調べをうける。刑事罰さえ下れば責任を取った、とは思わないが、刑事事件にすら扱わないことはどうなのか。医療業界では当然のように語られることの意味が私には全く理解できない。

自治体病院の代表の小山田さんが至極まともなことを言っていたが、多勢に無勢だった。専門家というものが社会的発言をするときの良識を見るような番組だった。

●参議院の厚生労働委員会でも医療制度改革法案の参考人質疑で、虎ノ門病院の医師が「労働条件の悪化と患者とのあつれき」「医師や看護士が労働条件とリスクのため、仕事を放棄し始めた」と発言。労働条件はともかく、患者が疑義をさしはさむから面倒くさくてやってられない、医師を疑うなら診療しないという発言にしか聞こえない。最近、医師たちが口を開けばこんなことしか言わない。家族や公的資金が高い金使って医師を育ててきたのに、そのような無責任な発言をするなら、もっと荒療治の改革が必要だという世論になるだろう。

県主導で小児科の集約を 参院厚労委で参考人質疑共同18:43
 参院厚生労働委員会は2日、高齢者の負担増などで医療給付費の抑制を図る医療制度改革関連法案について、参考人からの意見聴取と質疑を行った。今後の日程は、7日の参考人質疑までが決まっており、与党はその後できるだけ早い委員会採決を目指している。
 参考人の日本子ども家庭総合研究所の柳沢正義所長は「病院勤務の小児科医は過酷な勤務を強いられている。小児科の集約化、再編は避けられない。都道府県が強いリーダーシップを発揮しなければならない」と述べた。
 また、虎の門病院の小松秀樹泌尿器科部長は、医療現場での「資金不足による労働条件の悪化と患者とのあつれき」を指摘。「医者や看護師が労働条件とリスクのため、仕事を放棄し始めた」と述べた。

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コメント

大学病院が中心の仕組みは、1995年頃には、ほぼ崩壊していたような気がします。少なくとも、「植民地経営」は不可能になっていたと思います。地方レベルの役所やマスコミは、古い業界の仕組みが残っていると思い込み続けていて、それを、うまく使おうとか、撲滅してやろうと考える人が多いようですが、それでは、もはやダメだと思います。

開業医と勤務医の格差は、その通りだと思います。収入や生活レベルでいえば、修業時代は別として、開業医、ふつうの勤務医、大学の教員の順です。県庁所在地などの都市部では、過当競争がはじまり、医師会による「規制」の動きがあるようです。

「量」の充実を問題にしていて、あいにく、まだ「質」を問うレベルのは到達していないと感じています。

投稿: gskay | 2006.06.03 16:43

90年代の終わりぐらいから質の議論が始まったのに、また量の話に戻ってしまいましたね。開業医の過当競争というのは実感します。過当競争しているんだけど、なぜかそれぞれの病院から患者が減っている様子がないのも、何か変です。

公立病院とか地域の中核病院にきちんと医師が配置できるような診療報酬体系やら、補助金体系がもっと強化されなくてはならないと思うのですし、開業医ももっと個々の患者をトータルで診れるようにならないと、と思うのですが、そうした改革の方向性どおりに実態が進みません。

大学の医局支配が崩壊した中で、病院医が不足する診療科や僻地や大都市周縁部の地域に適切な人材配置ができるのか、頭をひねってほしいですし、病院医をもっと待遇で評価できる仕組みが必要なのか、医局支配に代わる別の規制が必要なのか、と考えています。
その改革を実現させていくテコについてはこれは政治の課題だと思います。

投稿: 管理人 | 2006.06.04 23:54

前に地元の市長選のときに医師会の会合で会長が「不正請求しているところはわかってるんだ…」と言って怒ったとかいう話を聞いたこともありますが、医療費が自然増していく中で甘えたことや目茶苦茶なことしてしっぺ返しが来るのは自分たちだという認識をもっと持ってほしいなと思います。三重県でも尾鷲で産科医を雇うのに年俸約5千万くらい出したという話が話題になっていましたが、市民活動に関わられている医師の方に伺ったところ産科医の訴訟リスクを考えると止むを得ないということでした。確かに場合によっては冤罪に近いかたちで刑事罰を受ける可能性は怖いと思いますが、そんなにお金を出さなくても産科にしても小児科にしてもどんな地域であっても医師が気持ちよく働くことを選択できるような制度がなぜできないのか、という疑問は消えません。最近、銀行の人と話した時もやっぱり病院(開業医)は儲かる、それでも潰れるのはそれ以上に使ってるからだという話も聞きました。その一方でETV特集でやっていたせたな町のような事例もあったり、現在の様々な医療制度の問題がどこでどうつながっているのか体系的に把握するのがますます難しいなと痛感している今日この頃です。

投稿: wacky | 2006.06.05 18:32

訴訟リスクがあるなら、社会的地位はあるし同業者組合(医師会)は強いんだから、保険でもつくったらいいと思います。患者が文句さえ言わなければ、地方都市の医療はやる、というのはやっぱり変です。
また、なぜ開業医志向の医師はお金にこだわるのか、最近考え続けています。昔は年5000万払わなくても地方都市には医師がいたわけです。都会より僻地にいっていただいた医師が厚遇されるべきという前提は理解しながらも、どうして最近の医師はそんなゼータク言うのか全くわかりません。
高度消費社会の中で、医師ぐらいのお金持ち(とびぬけた金持ちというでもなくて)が楽しめる消費環境が整っているのが、妥協して県庁所在地ぐらいじゃないかと思うのですが、考えすぎでしょうかねぇ。
地方都市で5000万ももらったら、ある種有名になってしまって、地域社会にとけ込むことができなくなりそうですよね。そのことの弊害が大きそうです。

投稿: 管理人 | 2006.06.05 23:21

いくつか誤解があるようなので、コメントさせていただきます。
・開業医がつぶれるっていうのは、よく聞く話です。
・医者の給料は高くありません。医師の平均生涯年収は、大学卒の生涯年収(2億円ちょっと)より2千万程度高いだけで、労働時間・拘束時間を考慮すると平均以下になります。車はカローラで、マンションを買うのも汲々、というのが私の周りの平均的医師です(地方の私立の地域中核病院です)。高校の同窓会に行ったら、大抵の人は私より裕福でした。
・訴訟に対しての医師の不満は、「刑事」責任を追及されることです。米国では「刑事」責任を追及されることはありません。「民事」で賠償金を請求されるケースがあるのは、仕方ないですが、「殺人者」扱いされるのは納得できません。
・地方で働く医師が減っているかもしれませんが、それは医師に限ったことではありません。地元生まれの若者の多くも都会に移っています。医師も同様に、都会の方がいいと思う人が多いだけです。以前は大学医局の人事で、イヤでも無理やり派遣されていただけです。住む所を選ぶ自由が医師にもあります。医師も人間で、憲法上の自由を皆さん同様に持っています。家族もありますし、妻・子供・老いた両親を大切にする権利を持っています。医師のモラルの問題にすりかえる議論が新聞では多く見受けられますが、現在でも燃え尽き症候群寸前の医師が現場では多いのです(これが看護師だとマスコミは同情的なのですが、対象が医師になるとモラルのせいにされることが多くなります)。
 米国のように、現在の10倍のスタッフ数(医師も看護師も栄養士もその他のスタッフも)が配置されたら、米国一流病院並みの(どうやらマスコミの要求する医療水準の)医療が可能になるのですが・・・ 
 管理人さんのおっしゃるとおり行政に頑張ってもらわないと解決しない問題ですよね。

投稿: アキ | 2006.06.12 01:18

・医師の平均給料とは、これは病院医の数字ではないでしょうか。出典がわからないので何ともいえませんが、開業医に転身した場合はこんなものではないと思います。また、開業医の場合、年収の定義によってもずいぶん数字が変わります。
・米国の話がスタンダードなのか疑問です。例えば、鉄道事故や航空事故は専門調査委員会がありますが、だからといって刑事責任を免責されるわけではありません。よほど悪質な場合を除き、患者やその家族は医師を「殺人者」として訴えているのではなく、過失責任を訴えているのです。過労のトラックの運転手が交通事故で業務上過失致死罪で逮捕されることは年がら年中おきています。かれらも「たまらない」のですが、免責されてよし、なんて意見はありえません。どうして医師だけがそうした議論が可能なのか、私は疑問でなりません。
医師会で弁護士を雇ったり、訴訟の損害や補償金のための共済を作ることなど考えてみるべきです。
再論になりますが、刑事責任を問われない方が問題が大きいと思います。訴訟が起きるまで、医師が何やっているかほとんどわかりませんでしたし、私の友人も含めて、何されても文句のつけようがなかったのです。医師が間違いをしたのではないか、と患者が感じたときに、誰が患者の側に立って本当のことを調べて教えてくれるのでしょうか。残念ながら今は司直しかないのです。祖父2人と友人の死に関してはわからないことだらけで未だに心に不信感ばかりです。
・医師とは診療報酬という税金的なもので食べている公務員的な存在です。自由といいますが、サラリーマン程度の勤務地の指定はあってしかるべきではないかと思うこともあります。誰がやるかという問題もありますが。
医師を増やせばいい、という議論は気持ちではわかります。どこも同僚が増えれば仕事が楽になる、と思いがちです。しかし中身もなく公務員を増やせばいい、という議論と同じぐらい意味のないことです。老人医療の分野では実際に医療がやりすぎで、ほんとうのことを言えば医療に携わる人を食べさせるために高齢者や障害者の社会的入院が存在するのではないかと思うのです。
医師を増やしても、多分、地方は相変わらず医師不足でしょう。また大都市圏であっても、朝霞市のようなステータスの低い地域も同様で病院医は不足するでしょう。一方でだぶついた医師が、介護の領域や楽で不要な医療にばかり進出して、結局、医師は足りないのに医療費は増え続けるということが繰り返されてしまうと思います。
・あきさんと同じような結論になりますが、行政ががんばらねばならないと思います。しかしそのためには医療の議論がもっと地域や患者の立場を反映されるものではなくてはならないと思います。

投稿: 管理人 | 2006.06.15 00:28

たまたまチラ見したものですが、ストレス発散もかねてコメント書きまーす。
よく読みもしないで・・・って言うか読む気になんないので
勘違いしている部分もあるかも知れませんが、ご了承ください。

>>医師の平均給料・・・
憶測でテメーに都合のいい数字だけ持ってくんなっツーの、医者の年収なんてピンきりなんだから、せめて開業と勤務医その他くらい、分けたでーたをつかえよ。このバーカっ
>>人の命を奪う可能性のある仕事は他にいくらで・・・
意味が違うんだよ、このボケがっ そいつらが扱うのは「健康な」命
医者が扱うのは「病んでる」命、大体医者が力及ばないことを「奪う」としか認識できていない時点でもう一回義務教育やり直せっつーの
>>医師とは診療報酬・・・
じゃあ税金の優遇を少しでも受けたことのある奴、補助を受けたことある奴みんな仕事も居住地もじゆうにできねーな。ってユーか国の公共物使ったことのあるテメーも“サラリーマン程度の勤務地の指定はあってしかるべきではないかと思うこともあります”っつーの  このカスがっ
>>医師を増やせば・・・
なにが“どこも同僚が増えれば仕事が楽になる、と思いがちです”
ずいぶん高みから意見をおっしゃってるんだな、この低能がっ
日本は先進国の中ではトップクラスに医者の人口当たりの数がすくねーんだよ。

他人に患者の立場を求める前に テメー会社の立場になって考えろよっ

PS. 少々、強い文体になってしまったようですが、決して悪意はありません。
もし悪意を感じたとしたら、そりゃ あんたの受け取り方に問題があんじゃねーの?

PS 2. ボクは医者とはまったく無関係な仕事についているものです。
変に勘繰らないでください。

早々

投稿: 秋の見方 | 2006.11.18 02:03

ツッコミどころ満載です。

MRSAにかかりたくなければ、病院に行くなってことですね。MRSAのいない病院なんてないですよ。MRSAにかかって死ぬ確率より病院に行かないで死ぬ確率の方が高いのだからしょうがない。

踏切監視員?の話。
今、ほとんどの人が病院で死んでます。踏切で死ぬ人はそれほどいないと思われます。労働者一人あたり死を見る確率は医師の方が高いと言っていいでしょう。前者では死がより多く起こるが故、訴えられる確率も、踏切なんちゃらよりは高い。よって医師の方がリスクは高い。


ところで、黒川さん、生活、大変なんでしょうか、、、だいじょうぶですか?こんなにしないと記事売れないんでしょうか?少し気の毒になってきました

がんばってがんばってがんばってください

投稿: 黒川 管理人 | 2007.11.13 14:32

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