5/9 キャリアウーマンを批判したいからといって
やっぱり田中角栄を評価したいと思うのは、排他的な通俗道徳ではなく、徹頭徹尾、利害関係で有権者を動員しようとしたことだ。だから田中派には文人の息子、戦争中の親米リベラリスト、社会党議員の二世など、在郷保守にはなかなか認めてもらいにくい人材が多かった。
最近の政権与党、とりわけ自民党は、有権者の道徳観や価値観、ライフスタイルをあれこれ規定し、この財政難のもと、何に使われるかはっきりしない奨励金をばら撒くような政策ばっかり打つのが鬱陶しい。
昨日は、ニートひきこもり矯正のNPOへの補助を批判したが、今日、共同通信が報じたのは、自民党が三世代同居の奨励金を創設すると。自民党に「家族・地域の絆(きずな)再生プロジェクト」という家父長制(DV家庭)復活をもくろむプロジェクトがあるらしい。そこが深刻な少子化の原因として「過度に経済的な豊かさを求め、個人を優先する風潮がある」と指摘しているということで提言した。
経済的な豊かさを求め、個人を優先する人、というのは多分キャリアウーマンを想像し攻撃対象にしているのだろうが、そうしたタイプの人が子どもをつくらない人の多数派ではない。
子どもをつくらない多数派は、毎日深夜残業を続けさせられて疲弊している若者の正社員、あるいは職業的地位や経済的自立に見通しが立たない状況におかれたフリーター・派遣社員だ。彼らは望ながらも、子作りや、その前提となる結婚や男女交際も思うにならないような環境におかれている。深夜の駅立ちあいさつをすればそういう若者がびっくりするぐらい多いことぐらいわかろうものだ。
そうした環境づくりを推進してきたのは、労働者保護を次から次に外し、国際競争力だ何だと、非効率な労働に邁進させるようなことを許した小泉構造改革ではないか。さらには、そうした小泉構造改革を追認してきたのが自民党ではないか。冗談言ってもらっては困ると思う。
親と同居するのもよし、しないのも良しというライフスタイルや価値観に中立的な政策を打ち出してほしい。通俗道徳の美徳だけで、観念的な政策を作るようでは、下野する日も近いだろう。
3世代同居支援で補助制度 政府チームの少子化対策案2006年5月9日20:37共同
政府の「家族・地域の絆(きずな)再生プロジェクトチーム」(座長・長勢甚遠官房副長官)が提言する少子化対策の中間取りまとめ案が9日、明らかになった。親子孫3世代同居を支援する住宅建設補助制度の創設や、より多くの子どもを持つ家庭への所得税負担の軽減などが柱となっている。
同チームは近く中間取りまとめを決定。6月に経済財政諮問会議が策定する「骨太の方針」への反映を目指す。
取りまとめ案は、深刻な少子化の原因として「過度に経済的な豊かさを求め、個人を優先する風潮がある」と指摘。家族や地域のネットワークが子育てには重要との認識を強調している。
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コメント
はじめまして。
http://ohtan.txt-nifty.com/column/2006/05/1238_1e2b.html
こちらによると、『フォーリン・ポリシー』の2006年3/4月号に、家父長制を賛美する珍説が載ったそうですが、ひょっとしてこの記事の影響でしょうか。アメリカもなんか変です。
投稿: jiangmin | 2006.05.18 22:54
コメントありがとうございます。ブログ面白く見させていただきました。
私が保育政策の仕事で知り得た数少ない情報ですが、アングロサクソンはもともと母性礼賛で、家父長制的なものが好きなようです。親子だけの核家族を大切にした文化だからでしょう。アメリカを見て、日本もああなれば子育てしやすい社会になるというのは全くの誤解で、このあたりは横浜市の副市長になっている前田正子さん著「保育園はいま」にアメリカ留学時の体験として書かれています。
家父長制礼賛なんて愚かなことです。少子化の議論が逆立ちしているのは、少子化を解決すれば幸せになれるということが何一つ証明されていないのに、いたずらに子どもを増やす議論ばかりすることです。そのために家父長制だとか、母性神話の復活とか、人を不幸にすることをすることに何の意味があるのでしょうか、と思っています。
子どもが少ない多いではなくて、生産力を食べる分にあわせて維持していけば、どのような人口構造になっても貧困にならずにやっていけるのです。いたずらに人口をふやして、それなのに働き口を用意できず若者がたくさん就職にあぶれて失業手当や生活保護費の増大になれば全く意味がないことを知るべきですよね。
家父長制だとかそんなバカなことを言ってまで少子化対策をしようとする人は現実の厳しさを認識してもらいたいところです。
投稿: 管理人 | 2006.05.18 23:21