5/7 雇用保険を少子化対策に流用?
アイヌ民族初の国会議員、萱野茂さんが亡くなる。アイヌ民族の課題を前進させたし、膨大なアイヌの民俗伝統の記録や検証の活動は、アイヌ民族の誇りを取り戻したと思う。残念だし死を悼みたい。
●政府は少子化対策で雇用保険から1000億円流用する計画を打ち出している。
その意味はわからないではないが、目的外使用じゃないかと思う。社会保険は、税金と意味合いが違い負担と給付を関連づけているから税金ではない方法で集めているものだ、という説明を政府は続けてきた。その趣旨からいうと少子化対策と雇用促進がどのように結びつくのか、説明つかないことが多い。
額こそ数千円のものの、2005年4月から雇用保険料は1.75倍に値上げされている。構造改革で大量失業が発生し雇用保険財政が逼迫したから値上げしたのではないか。それが今となっては余って仕方がないから少子化対策に流用する、というのはおかしい話だ。東大の神野直彦さんがパッチワーク的な改革というのはこういうことではないだろうか。財政がないなら正面から増税を持ち出すべきだろう。
今のミニバブルが終わって、再び大量失業時代が来たら(小さな政府路線を走っている以上、不況になれば大量失業が発生する)、雇用保険財政が再び厳しくなるのは明らかだ。
公的な支出は、それによって得られる政策効果iによって政府の収入増に結びつく財源から行われるようにすべぎたろう。1つはそれが財政の透明化につながり国民のコントロールが可能になるからだ。もう1つは、社会状況の変化に対して自律性をもった財政構造になるからだ。
雇用保険の保険料は支払う側が失業率の上がり下がりが仕事のある人にも共有できるように失業率にある程度は連動するように運用すべきだろう。余ったからと目的外流用するのは良くない。保険料負担者に世の失業の多少を実感できるようにすることに意味があるのではないか。
少子化対策の費用負担は、保育所建設費のように住宅開発の影響を受けるようなものは都市計画税や固定資産税を財源にすべきだろうし、保育所運営費補助金のように各々の就業者の利益に結びつくものであれば、それによって増える所得税や住民税を中心に財源にすべきだろうし、児童手当のように子育て費用の補填であるなら消費税を財源にすべきだろう。出産・不妊治療に関わる補助なら、人口バランスを回復して健全化する年金保険や医療保険を財源にすべきだろう。
雇用保険で少子化対策、積立金1000億円活用
政府は6日、2007年度予算の新たな少子化対策の財源として、特別会計の雇用保険の積立金1000億円前後を活用する方向で検討に入った。
本来は失業手当の給付などの財源を別の事業に活用するのは異例の措置だが、小泉内閣の最重要課題の一つで、数千億円が必要とも言われる新たな少子化対策には、従来の予算の枠組みにとらわれずに財源を確保することが必要と判断した。
政府は、この手法について、消費税率引き上げなど税制の抜本改革が実現するまでの「暫定措置」と位置づけ、理解を得たい考えだ。
政府は、少子化対策について、首相をトップに全閣僚が参加する「少子化社会対策会議」や、安倍官房長官が議長の「少子化社会対策推進会議」などが6月をめどに一定の方向性をまとめる方針だ。具体的には、女性の仕事と子育ての両立の支援策や、出産・子育て費用の軽減策などを検討している。
厚生労働省の06年度の少子化関連予算は、児童手当国庫負担金や保育所の待機児童ゼロ対策など、約8860億円に上る。政府は07年度予算で、この予算とは別に、新たな少子化対策として数千億円程度の計上を検討している。7月末ごろに決定する07年度予算の概算要求基準(シーリング)では、現在の少子化対策も含めた社会保障関係費を一層抑制する方向のため、新たな少子化対策の財源不足の克服策として、特別会計を活用する案が浮上した。
雇用保険の積立金は、景気回復に伴う運用益の増加で、05年度予算の約1兆9000億円から06年度は約2兆5000億円と大幅に増加した。さらに、失業率の低下で、失業給付などの支出は減少傾向にあり、一般会計から約4000億円(06年度)の繰り入れもある。雇用保険の資金が潤沢になっているため、雇用保険の積立金を取り崩すか、一般会計からの繰り入れを減らす方法で、一時的に少子化対策の財源を調達しても、雇用保険事業には支障がないと判断した。
(2006年5月7日3時22分 読売新聞)
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