5/25② 今ごろ作業所ができないと言われても
朝、作業所を作ろうと奔走していた方からメールをいただく。
障害者自立支援法で、障害者の作業所設立のハードルが高くなって、個人の力で立ち上げることが絶望的な制度になったと市役所から説明を受けたということ。市役所は、これまで作業所を作ることをけしかけてきたのに、全く手のひらを返した態度をとったらしい。
まず、その道義的問題を問われなくてはならない。作業所作りができるかできないか、ということに、そこには障害者の生活自立へのきっかけが断たれるかどうかという場面があり、成功するかしないかで障害者とその家族の人生をパーにしてしまうかも知れないという問題。市には責任感がなさすぎる。
それから、朝霞市の職員に自分の仕事に関わる制度に対してスキルがあまりにもない。特に福祉関係部署は顕著だ。中央の審議会でいろいろ議論され、その議事内容について新聞や厚生労働省のホームページにすぐ掲載されているのに、全然目を通していない。だから制度改正の議論に入るのが遅いし、地方分権一括法以前の、機関委任事務のように「国がこういう制度にしろというから」という言い訳がまかり通っている。あるいは市民に面倒な説明をしたくないからそもそも勉強しないようにしているのだろうか。
介護保険の見直しも、次世代育成支援行動計画の策定も、スタートが遅くて、計画策定の委員会の委員たちは、結局市役所の都合を丸飲みさせられていた。
それと、地方分権を全く理解していない。現在、自治体の福祉の事務のほとんどは自治事務になっており、国の関与は補助金を出すか出さないかに限られていきている。国がどんな制度になろうと、自治体が必要だと思うなら、国が制度を廃止しようとしまいと、自治体で存続することができる。ただし持ち出し財源になるが、どうでもいい事業や、レジャーまがいの事業(湯ぐうじょうなどクルマを持っている人しか行けない温泉でしかないのに年1億も赤字を垂れ流していた)が市役所にごろごろころがっているから、それを見直すことで捻出できないお金ではないと思う。
ほんとうに朝霞市は運不運に左右される自治体だ。鳴子だ基地跡地利用だ、遊びみたいなことばかりにお金を使って楽しいのかも知れないけど、そんなのでいいのだろうか。
障害者として生まれてくるのも、子どもが障害者として生まれてくるのも、誰の責任でもない。そして社会全体でならせばその障害者にまつわる負担はみんなで分担できる。さらにはその障害者の力を温存したり伸ばしたりするのか、家や施設の中に閉じこめて生存すれすれで置いておくのかでも、その分担する「コスト」をコントロールすることができるのに、そんなことは夢のまた夢である。
そうした人の生きることにかかわるリスクを管理できる地域社会でなければ、どんどんひどい地域になっていくことが避けられないだろう。焦りを感じてくる。
| 固定リンク
コメント
NPOの方で作業所の代表をされている方とご一緒させていただいていますが、現場へのインパクトは国が考えている以上に大きく、かつ悪い方向に働いていることを実感します。
自治体法務のあり方というのも分権一括法以降も旧態依然としていて、何かをするための法解釈ではなく、何かをしないための法解釈をしてますよね。いざとなったら国と法解釈で揉めることも辞さない覚悟が必要なのに。
投稿: wacky | 2006.05.26 00:04
wackyさんありがとうございます。
私も障害者福祉の制度改革を知ろうと思えば知れる距離にありながら疎いまんまで、この方にいいことだからどんどんやろう、とけしかけていた1人なので、責任を感じています。
分権やっても何しても、変わらない自治体の現状に苛立ちを感じています。
それから自立支援とか、そういう理想的な言葉を制度改悪に使う政治センスも許せない感じがしています。
リスクのない人のために財政をばらまいて、偶発的な避けがたいリスクを背負っている人を生存すれすれのところにおいておく、こんなことを許しておけない気持ちでいっぱいで、7~10年ぐらい前の青臭い気持ちでふつふつとしているここ数日です。
投稿: 管理人 | 2006.05.26 21:37
wackyさん、『現場へのインパクトは国が考えている以上に大きく、かつ悪い方向に働いている』というのは本当です。
いくつかの作業所を見学しましたが、作業単価が下がったり、施設はそのままで定員増を迫られたり。近年ヤマト福祉財団方式で、年金+月給5万円で本当に自立を目指しがんばっていたところは、すべて根底から立て直さなければならなくなっています。
先日担当者に聞いた話では、現在全国で無認可作業所で働いている約8万人のうち、7万人の所属する施設が新しい「地域活動支援センター」へ移行するだろう、残りの1万人が自治体単独事業で残すしかない施設になる、とのことでした。
平成23年の推計では、一般就労への移行者数が今の年間2千人から8千人に増える、といっていますが、ジョブコーチや企業の障害者雇用への理解は増えるのでしょうか。
立場の弱い人をより少数派へと導いているような気がします。
制度が変わる時は戸惑いや混乱が起きるのは仕方がありませんが、「自立支援法」は「孤立支援法」だと思っています。
法解釈についても同感です。
「ここにこう書いてあるから」とよく説明されますが、それを利用者のためにどう解釈するかが行政マンの仕事では?と思います。
本当はもっと大きな団体に属してこのような現場の声を上に上げていく努力が必要なのでしょうが・・。
投稿: エム | 2006.06.01 08:23