4/3③ 規制改革会議の利益背反が報じられる
毎日新聞一面の格差社会の連載記事で、タクシーの規制緩和問題を取り上げ、その中で、タクシー規制緩和に異を唱えた規制改革会議の委員、清家篤氏が改選で外された問題を取り上げている。
ようやく「正義の味方」規制改革会議の問題点をマスコミが報じてくれた。オリックスという規制緩和で業績を拡大してきた企業のトップが委員長、議長として座り、規制緩和をぐいぐい進めていく。オリックスが売っているのはリースなので、直接的にユーザーの安全問題には涼しい顔をしていられる立場で、規制緩和のツケを無視できる立場でもある。規制緩和でやりたい放題商売やっている人たちが、異を唱える委員を改選で外しながら、やりたい放題やってきた。政策決定プロセスとして問題が多いと思う。
最近では、言うことが自己目的化してきて、同じルールで競争させても「株式会社」より、「官」や「社会福祉法人」「協同組合」が勝ってしまうような場合には、「官」や「社会福祉法人」「協同組合」にハンデをつけるような規制強化までやっている。
保育所の規制緩和問題では、何回も議論が決着して否定されてきた直接入所方式の導入にこだわっている。保育所間競争だけで質を高めようという理屈だ。しかし、入所が完全に直接契約方式になったらどうなるのか。夫婦ともにフリーターで必死に働いている人や失業で求職している家庭がはじきとばされて、高給取りの旦那がいる専業主婦の妻が保育所を利用できるようになったり、コストのかかる障害児をはじきとばしたりする結果になる。そうした心配を無視して、何もかも産業化し、人間を疎外していくことばかり打ち出す。現実に特別養護老人ホームのように、入所が難しい地域は、入所基準が、行政の裁量から、施設の裁量に移ってしまった事例もある。
そしてこの議論をテコに、給食室の必置規制や、常勤職員の比率や、保育室の面積基準、園庭必置義務などの規制がどんどん外されてきている。
●練馬区光が丘第八保育所が、昨年9月に民営化され、大手育児企業に委託された。やはり保育士が次々に退職して問題化しているようで、今週号の「東洋経済」にも報じられているし、保育所の利用者団体「保育園を考える親の会」の会報などでも、この問題が伝えられている。
朝霞市の宮戸保育園もそうだが、大手企業が受託した認可保育所は、どうして次々に保育士が退職していくのだろうか。我が家も先日、保育士の退職を経験した(年度末だし本人は新天地で継続意欲があるのでよいと思う)が、やはり子どもにとっては不安になるようなことも感じた。職員が定着しないというのは質の維持・安定にとって最大の問題だと思う。
公立保育所の問題は、公立だからというよりも、意思決定が現場でできず、児童福祉行政に理解と熱意と愛情のある職員が来たり、保育現場の課題を伝える労組などのカウンターパンチャーがない限り、現場がやる気を失うようなことばかりが起きることにある。
だから民営化という話になりがちだが、大手企業に委託すれば、同じ問題になるのは目に見えている。日々の保育で忙しい現場の職員が本社に出向いて、マネジメントは知っているけど現場も知らないホワイトカラーに、経営のテクニカルタームを使われて煙に巻かれるのが関の山である。また、大手企業の意思決定システムは役所以上にピラミッドである。現場の問題が、主任保育士や園長、さらに園を管轄している本社の担当職員を飛び越して本社で課題にできるかどうか、ありえないというのが実感である。
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コメント
清家篤氏はライシュの「勝者の代償」の訳者でもありますよね。規制改革会議はメンバーのバランスを取るべきだと思います。結局、政府に取り入った者が自分たちに都合の良いようにルールを決められるのであるとすれば、彼らが唱える「努力したものが報われる」社会とは一体何なのか。その欺瞞に世間の人々は気づくべきだと思います。
投稿: wacky | 2006.04.03 23:27
久しぶり、コメントありがとうございます。
私は、清家さんはごりごりの規制緩和派だと思っていました。今日の新聞を読むまでこんな目にあっているとは知りませんでした。みんなが努力したがる、そして助けたがる社会にしてほしいものです。
投稿: 管理人 | 2006.04.03 23:37