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2006.04.19

4/19③ タコが足を食う障害者の自立政策

21時のNHKのニュースで障害者自立支援法が始まった後の、障害者の作業所や就労がかえって進まなくなっている現実を紹介してくれた。
障害者自立支援法は、障害者は国や自治体に甘えている・福祉に甘えるな、というメッセージを下に忍ばせ、自立という誰もが反対しない名目のもとに、サービス利用の自己負担の導入を強行した。

その結果、障害者の施設利用料が上がった。そのことの問題はいくつかあるが、今回は、障害者が作業所等で軽作業をして得られる収入から、施設利用料などを払うと、赤字になって、働くほどばかをみるという話を紹介していた。まるでタコが足を食べて体を維持しているような話を聞かされたようだ。
もしこれが障害者でなければ、かつてあった「内職あっせん詐欺」のように社会問題化するだろう(現実には今も一流の介護医療関係の派遣業者が仕事も紹介しないのに資格取得でお金を巻き上げる問題が起きているが)。

障害者は福祉に甘えるな自立しろ、という無知な掛け声を何度も聞いたことがある。しかしそれを言う人がどれだけ障害者の自立につながるような小さな行動をしているのだろうか。とくに自己責任論を強調する企業家たちの責任は大きい。しかし現実には、2005年6月に政府が発表した障害者雇用率は民間企業・特殊法人で1.5%程度で法定雇用率を下回っているし、達成している企業は45%しかない。55%の企業は罰金払っても障害者は雇いたくない、としている。一般公務員は比較的ましな結果だが、教育委員会などは、惨憺たるものだ(子どもたちを育てる責任者たちが障害者差別を平気でしていることはいつか社会的にやり玉にあげなくてはならないと思う)。企業が自己責任を求めるなら、自分たちの障害者の能力を退蔵させるような行動は取るべきではない。

一方、国の財政面から考えると、いくら厳しいとはいえ障害者福祉に使われているお金は1000億程度である。額としては大きいが、消費税の0.1%にもならない。何十兆も年金会計に繰り入れている公的年金にくらべればグラフにも現れない率である。これくらい、みんなで余計に税金払ってでもかぶるべきではないだろうかと思う。

そんなことを考えて毎日新聞の夕刊を見たら、「連合・ネットで団結」という記事が紹介されていた。連合がインターネットでユニークな運動をしているという記事の紹介である。私もそれは同感だと思う。しかしそのテーマが増税反対。何か違うと思う。
月給取りは親が資産家でもなければ、何かがあれば社会に依存して生きるしかない。労働者階級の利益を考えれば、税金が上がることに反対するよりも、きちんとしたセーフティーネットをつくり、労働者がどうなろうと路頭に迷わない社会をつくるのが連合のめざすべき社会じゃないか、と思う。こんなこと言うと職を失うかなぁ。
過日、団塊の世代の活動家と飲んで、私と一緒に飲んだ若い衆が理屈っぽく見えたのか、理屈じゃないよ生活実感だよ、と言われた。その活動家が人と共感し生きてきた歴史から、それは正しいと思う。でも違和感があった。その答えが障害者問題なのかなぁ、と思う。親族に障害者がいたり、障害者の友だちが自分より能力があるのに就職もできずに能力を退蔵させているのを見たときに生活実感となるけど、そうでない人には理屈っぽく考えて共感していくしかないと思う。これ以上考えると哲学の分野になるので、ここまで。

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コメント

 私もちらっと見ました。
 自立支援と言いながら自立支援から遠ざかっている点についての着眼点はいいものがありますが、所々に誤解を受けかねない表現(たとえば、障害者は8万円の障害基礎年金、障害厚生年金を受給している…など。)があったのは残念に思いました。
 障害の程度も各人それぞれ、年金も1級もあれば2級もある訳で、就労できる「障害者」が年金を受給できるか、という所は難しいという現実を見てきたので…。

投稿: 窓灯り | 2006.04.19 23:21

おっしゃるとおりですね。
でも10万の年金と聞いて、暮らせるなんて思う人も貧乏学生以外、あまりいないでしょう。本質的なところで誤解はないと思います。
この番組のコメントで少し不満だったのは、障害者を放置しておくと、どんどん社会に参加していく能力が低下するし、重度と思われる障害者が少しでも作業所にいたり、作業に加わったりすると、残存する機能がどんどん発達して、見違えるような展開があることに言及してほしかったです。
福祉批判派の、作業所をやることがムダで非効率だ、という先入観を払拭できなかったのではないかと思います。

投稿: 管理人 | 2006.04.19 23:33

昨年の養護学校卒業生の進路先一覧を見ました。
30名のうち20名程度が福祉的就労(施設や作業所)、7名が一般就労でした。特筆すべきはその7名のうち3名の進路先が「母親のパート先」だということ。これには進路担当者も注目していました。
やはり「一般企業の障害者雇用率達成うんぬん」より、普段からの地道な信頼関係になるんでしょうかねぇ・・・。

投稿: m | 2006.04.20 08:56

やはりというか・・・。コネクションで就職を探さざるを得ない状況というのは、あまり良いことではないなぁ、と思います。すべての人に就職口の少ない北海道にいて、それは思いました。でも何も受け皿がないよりいいことだと思います。お母さんたちの努力に頭が下がります。

障害者雇用を確保しなくてはならない、という命題があって、各企業が実際に障害者を雇っていくところからでないと、障害者を社会参加する仕組みの全面的な展開は進まないと思います。
雇用する企業では、障害者が働けるための職場環境や同僚となる職員への啓発を行わざるを得なくなります。採用担当者は作業所や養護学校に対して深くコミュニケーションを取ることになるでしょう。通勤で使う交通機関、電車やバスなどの公共交通機関や自動車メーカーは、なるべく多くの障害者に使ってもらえるような仕事のあり方が求められます。福祉の援助のあり方も生存権を維持したり機能維持をする水準から、より本人の力を引き出すものに変わらざるを得ません。そうなると中間的な存在である、作業所のような場所がとても注目されていくのではないかと思います。
障害のない人が、職場のストレスを発散するように、障害者自身が頼れる逃げ場も用意も必要です。友だちやグループがあるだけではなく、ヘルパーなしに入れる映画館や飲み屋や悪所も大切になります。

以上がバリアフリー全面展開の考え方ですが、現実的には現下の職場環境の中でそれが進められると働ける障害者と働けない障害者の分断が始まります。働いている障害者はエライのに、お前は何だ、と人権意識の低い職場や作業所、養護学校、保護者が障害当事者に浴びせかける可能性があります。それは大きな問題になってくると思います。
そのときに、障害のある人もない人もその人なりの選択肢ができるような考え方や仕組みや理解の共感、他人への想像力が大事になります。
働くことだけが社会と関わることなのか、ことを問い直すことにもなります。いろいろなことをやらなくてはなりませんね。

投稿: 管理人 | 2006.04.20 12:17

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