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2006.03.05

3/5 たちの悪い中金持ちのニート息子減税

ここのところ、少子化対策といえば、子どもを持つ世帯に金をばらまいたり、税制を優遇する話しか出てこない。自民党が総合的な少子化対策と称して、子育て減税を打ち出す。

私はそもそも少子化がいけないという考え方に疑問を呈しているが、少子化に対策を打つべしという考え方に立ってみても、実際子育てしてみれば、はした金ばらまかれたって何もならんと思う。年数万円のお金の多寡で子どもを増やしたり減らしたりするような国民がろくなものかと思う。もっと税金取っていいから、保育園に入れるようにしてくれたり、調理室ぐらいつけるなど幼稚園の質を高めたり、高い民間の塾なんかに行かせなくてもいいような社会にしてほしいと思う。そもそも見てくれの所得から実際に自由になる所得を減らしているのは、我が国では家賃だ。子どもがいると世帯向け賃貸住宅は少ないし、家賃もべらぼうに高い。不動産屋から献金もらっているせいか、こんなこと放置しておいてよく金をばらまくことばかり言うよと思う。

自民党の猪口邦子がせっかく提案してくれた出産無料化を、提案の仕方に問題があると言って自民党議員はよってたかって、公明党まで動員して潰したし、竹中あたりの構造改革強硬派は保育園は税金がかかりすぎるといって質のリストラばっかりさせてきた。さらには企業の競争激化を煽り、労働者に家庭的事情という社会性を全く認めないような職場環境にして、子どもを産み育てることを冷遇してきた。順序が違うよ、と思う。

子育て世代の大半は減税するほど税金を払っておらず、住宅ローン減税もあったりすれば税金はゼロだ。減税なんかしても、ホリエモンみたいなのだけがトクをしない。それでは少子化対策の数字は出てこない。20代30代で子ども1人つくるだけで手取り年収ががらりと変わるほどラッキーな奴の顔を拝んでみたいものだ。
経済面の少子化対策なら、若年者の自立のための自信につなげる雇用開発をすべきだろう。雇用が安定し、スキルがつくものになってくれば、親世代は自信をもって家庭を持てる。そうなってくれば多少の経済的苦労は我慢できるのではないかと思う。

経済を超えた生物としての基本的活動である出産や子育てを議論するのに、子育てしたこともないおっさん&キャリアウーマンたちが、日経式の経済学に偏重した知識だけでやるからこんなことになるのだ。姑息な減税や児童手当のばらまきで財政に欠損を与え、何もできない政府にすることの方が子育てにとって弊害となるのが、保育所を整備しない自治体で暮らしてみての現実だと思う。

それにしても自民党がまとめている大家族減税は情緒面で保守層をくすぐるのかも知れないが、現実的には中の上より上の所得階層の家庭が、子どもを自立させずニートや働かない大学院生を抱えている場合に一番税金が安くなる。日本の将来にこれでいいのかと思うような結果になるのではないか。

それに相変わらずの「多様な保育サービス」。多様って何だ?時間の拡大ならそう書けばいいのに、あえて多様と書くことにうさんくささを感じる。人権を保障しないような保育所や質の悪い保育所にもお金を出そうというものなのか。

「大家族」税制優遇も、少子化対策協議会を設置へ 
政府・与党は4日、大家族優遇税制の導入などを柱とする、総合的な少子化対策を新たにまとめる方針を固めた。

 関係閣僚や与党幹部による「少子化対策協議会」を設置し、月内にも初会合を開いて検討に入る。対策は、6月に閣議決定する「経済財政運営と構造改革に関する基本方針」に盛り込み、早ければ2007年度から実施する考えだ。

 日本の所得課税は対象が個人で、収入のない子供や高齢者などを扶養していれば、その分は税が控除される仕組みになっている。ただ、控除については、対象に年齢制限を設けるなどの縮小論が出ている。

 一方、フランスでは世帯を課税対象とし、総所得を家族の人数で割って課税額を決める「N分N乗方式」を採用している。この方式の場合、大家族ほど税額が抑えられることになる。

 協議会ではこうした仕組みも参考に、与党の税制調査会と連携し、子供が多い世帯ほど優遇される新たな税制を検討する。子供がいる場合に所得税額から一定額を引く「税額控除」なども検討される見込みだ。

 このほか、〈1〉女性が出産後も職場に復帰しやすい制度〈2〉保育サービスの多様化や地域で子育てを支援する仕組み〈3〉出産費用を国が負担する出産無料化――などについて具体策を詰める。

 政府はこれまで、「エンゼルプラン」(1995年度)や「子ども・子育て応援プラン」(2005年度)などの少子化対策をまとめ、保育サービスの充実や子育てと仕事の両立支援などに取り組んできた。しかし、当初の予想以上に少子化が進展し、05年には出生率の低下に伴う初めての人口減少が始まるなど深刻な事態を迎えているため、与党と一体となって新たな対策を策定することが必要と判断した。

(2006年3月5日10時45分 読売新聞)

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コメント

週刊東洋経済で昨年8月に「40兆円のビジネスチャンス 。官業開放 。拡がる指定管理者制度 」という記事が載ったのに、年末には、
「「官から民へ」で思わぬ落とし穴 。保育園が危ない。保育ニーズが高まるなかで歳出削減が進む 。公立保育園民営化の是非を問う 」という特集が組まれたそうです。

せっかく次世代で保育園や学童のあり方を話し合い、計画を作ったのに、この制度の導入により、指定を受けた団体が有形・無形の、そして外圧的・自主的プレッシャーを受け、保育自体が萎縮してしまっているところもあるようです。
避けて通れないのであれば、官民が本気で話し合い、保育・教育の施設(もちろん中身)を大切に育てていかなくてはならないと思います。

みな、どの子も同じように健全な保育・教育を受けることは子どもの権利条約に定められていて、市場原理が入ってくれば、お金持ちのうちの子だけがその権利を得ることになる。
そんな世の中はみたくないです。

愚論で申し訳ありません。

投稿: m | 2006.03.06 16:42

愚論ではないです。規制改革会議と保育園を考える親の会の議論を読むと、障害児保育や、生活保護家庭の再生のための保育などまったく顧みられていない、彼らは特定の障害者施設か児童養護施設にでも入れて見えなくすればいい、ということが間に間に見えてきました。
民間が得意な創意工夫や小回りの効く意思決定はどんどん活かされるべきだと思いますが、だからといって民間委託推進している保育市場を狙って政府の審議会との関係を蜜にしている保育業者たちは、自治体よりも小回りの効かない業者であるというパラドクスが現実なのです。
利用者の費用負担に限界があって、しかも労働集約型の仕事である福祉や教育が、玄蕃発の創意工夫や小回りの効く意思決定をどうやってやることで利用者の人権が保障され高められるか、具体的に実効性のあるやり方を考えたいものです。
そういう意味で旭川市営の旭山動物園のチャレンジは参考になります。

投稿: 管理人 | 2006.03.06 23:23

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