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2006.02.27

2/27 保育・社会保障破れ穴だらけの構図

ようやくAERAも、たかが月10000円の児童手当加算ぐらいで子育てにやさしい街を標榜してきた江戸川区のインチキな実態を報じてくれた。棺桶に足を突っ込んでいた先代の区長か誰かのポリシーで、0歳児保育をしないと宣言していて、どうしても0歳児保育をしなければならない双子の保護者が、子ども1人月78000円×2人分も払っている実態を伝えている。コメントは「専業主婦の家庭には手厚いが、仕事と家庭を両立しようとすると冷たい」。

時間のある専業主婦とばかり熱心にコミットして、勤労者には料金が高い無認可保育所を紹介してやっているんだから入ればいいんだと豪語する朝霞市も似たりよったりだ(詳細はあす書きます)。そんな扱いばかり受けていると、誰がこの街に税金払っているんだ、誰が税金や社会保険のただ乗りをしているんだ、と最低の言葉を言いたくなってしまう。以前は市役所の夜間開所について「そんな」と思っていたが、今は、そうしてでも、サラリーマン階層が市役所に出入りするようにならないと変わらないように思えてきた。

以前はAERAの保育園記事は、規制緩和しないから保育園が増えない職員の労組が悪い(はぁ?)、したがって働く母親が苦労するという紋切り型の記事か、誰がそんなところ行くの?と思うようなお受験ワールドの保育園ばかり紹介してきたが、ようやく実態で報じるようになってきた。いい。

キャリアウーマンは育児と仕事の両立に関心が高いのに、自治体や職場の制度情報を全然を集めていないで不平不満を持っている、という結果が出ている(野村証券の調査結果)。そんなことやれば不幸になるのに市場原理を盲信した保育制度改革を求めるキャリアウーマンが多いなぁ、と思っていた謎解きだ。

●生活保護が100万世帯を突破と読売が1面トップ。セーフティーネットの張り直しなき構造改革がどんなことになってきたか、真剣に問い直すきっかけになってほしい。今、自治体も国も生活保護需給資格をもつ人にかなり制限加えて増加を抑えているが、それで解決すべき問題ではないと思う。
救貧者に対する現金や食糧支援は、近代日本で最初に発生した社会政策でもあるし、その必要性を認めるが、社会保障制度の前面に出てくるようなものであってはならないと思う。1つは、生活保護受給者とは、家もクルマも貯金も人生やり直すための財産をことごとく処分させられ、ごくまれにしか再生できない可能性のもたない状況におかれた人になってしまうからである。もう1つは、社会の効率性から問題が多いことである。受給者になる手前で、さまざまな制度がバリアを張っていれば、現金支給なんて人のプライドを奪うようなことをしなくても済むはずである。
半数近い高齢者の生活保護受給者のほとんどは、老後の最低限の生活を支える国民年金が税方式であれば、そもそも発生しえない。逆に、国民年金をせっせとかけてもかけなくても、かければ国民年金で帰ってくるだけだが、かけなければ生活保護でトクをする制度が理解されない。
また35%の障害者や病人についても、働ける環境や、多様な人を受け入れる職場づくり(八代尚宏の言うような多様な雇用制度ではない!これは元気で無骨な奴のための制度。)が進んでいけば、全員が生活保護になることもない。

一方、一人暮らしの勤労年齢層の受給者が増えているが、これは全体の数からみてもわずかでよいと思う。むしろ今、年金保険料を払わなくても済んでしまう制度や職種が増え、そういう人たちが高齢になってきて生活保護頼みになってこられるとたまらない。
年金改革の最大の眼目は年金財政ではなく、基礎年金制度の再構築で生活保護予備軍をつくらないことである。年金財政だけを考えれば未納者が増え、将来給付が少なくなることの方が助かるのが現実である。

生活保護100万世帯に、勤労世代も増加
 2005年度に全国で生活保護を受けている世帯数が、月平均で初めて100万世帯の大台に乗る見通しであることが26日、明らかになった。
 厚生労働省は「高齢化が進み、無年金や年金が少ない高齢者世帯が増えてきたことが主な増加要因」と分析している。一方、働くことができる世代がいる世帯の増加率も高くなってきており、「格差社会」の広がりを指摘する声もある。

 ■10年前の1.6倍■
 生活保護世帯数は、厚生労働省が月ごとに集計して発表。4月から翌年3月までの年度平均は、毎年6月ごろ公表している。
 05年度の生活保護世帯は、景気回復基調が続いているにもかかわらず、4月以降も増え続け、毎月100万世帯を上回っている。最新データは11月分の104万8661世帯(約148万人)。12月分以降は伸びが鈍化すると予想されているものの、過去最高だった04年度の平均99万8887世帯を上回り、「05年度の100万世帯突破は確実」(厚労省幹部)だという。
 1995年度の生活保護世帯数は平均60万1925世帯だったことから、10年で約1.6倍に増える見通しだ。

 ■景気回復でも増加■
 従来、生活保護世帯数は景気がいい時期は減少する傾向が強かった。しかし、04年度以降は景気回復の兆しが見え始めているにもかかわらず、増加傾向に歯止めがかかっていない。
 厚労省は「急速な高齢化社会の進展で、景気回復が生活保護減少につながっていない」と見る。04年度の生活保護世帯の内訳では、「高齢者世帯」が46万5680世帯で約半分を占める。「傷病障害世帯」(35%)、「その他世帯」(9%)、「母子世帯」(同)と続いている。
 生活保護を受ける高齢者世帯が多い背景には、年金保険料未納など、年金制度の空洞化問題がある。
 一方、小泉内閣が発足した01年度以降を見ると、最も増加率が高いのは、独り暮らしの勤労年齢層が多いとされる「その他世帯」だ。04年度は9万4148世帯で、01年度の約1.5倍に増えた。厚労省は「仕事をせず、職業訓練も受けない層が増えている」として、勤労世代の格差拡大を懸念している。
(2006年2月27日3時2分 読売新聞)

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コメント

 最近「AERA」は読んでないなぁ。昔、バス電車通勤の時は、買って読んでいたのに…。
 日本の生活保護制度は「救貧」に重きを置いて、「自立助長」に重きを置いていないと思っている。支援制度は十分どころか何もない、と言っても過言ではない。
 「救貧」の制度なので、資産や能力、家族関係全てを活用することを求められる。当然、住宅や乗用車は処分の対象だ。なお、居住用住宅は、一定要件(ローンがなく、固定資産税評価額が標準世帯の10年分の保護費を下回る場合)で保有は容認されるので念のため。
 読売新聞のレトリックだと思うが、バブル景気の山は91年だったと思うが、その後の景気低迷でも保護率は減り続けた。確か95年位が谷だったように記憶している。10年間で1.6倍になったと言っているが、景気が回復(しているという実感はないが…)してから、保護率が低下するまでタイムラグがあるように思える。
 世帯数が増えているのは、高齢者世帯とその他世帯の増加だ。生活保護のケースファイルを作る時に、ケース分類をさせられる。まず、年齢で高齢者世帯を抽出し、母子、障害、疾病、その他と分類していく。今、特に急増しているのは高齢者世帯とその他世帯だと思う。両者とも単身世帯が多い。その他世帯も50歳代のプレ高齢者世帯なので、十分な就労先を見つけることは難しい。職業訓練する機会もない。まさしくニートだと思う。
 基礎年金制度の再構築は必要だと思う。高齢者世帯に多いのは無年金世帯だ。少なくとも基礎年金部分について税方式を取るならば無年金世帯は発生しなくなる。老齢基礎年金の満額の金額と生活保護の生活扶助額を比較して後者が高いようでは、年金を支払うのがバカバカしくなるのに決まっている。モラルハザードを防ぐためには、年金制度について税方式を取るのが適当だと思っている。

投稿: 窓灯り | 2006.02.27 21:49

ケースワーカーがそれらしく働くためにも、高齢者の無年金者を解消して、受け持ち件数を下げることが大切ですね。
でも公務員の年金が高いの低いのという議論に収斂して、やってもやらなくても中身は変わらない被用者年金の一元化で止まってしまいました。
ここでも岡田民主党前党首の主張の正しさが図らずも証明されていますね。

投稿: 管理人 | 2006.02.27 22:00

黒川さん

伊関です

また、意見を言って申し訳ないのですが、棺桶に足を突っ込んだ区長は中里喜一さんという方です。

ハエや蚊に悩まされ、飛行機やトラックの騒音に苦しんできた江戸川区を「住んでみたい街ナンバーワン」に変えた名物区長です。

中里区長を紹介した本も何冊も出ています。

地方行政の達人
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4872572920/qid=1141396224/sr=1-1/ref=sr_1_2_1/250-7131456-9221048

痛快ワンマン町づくり
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4103398035/ref=pd_ts_b_7/250-7131456-9221048

黒川さんが、中里区長のことを良く知って棺桶に足を突っ込んだというのであれば、仕方がありませんが、この区長さん、なかなかの首長と感じています。

ぜひ、中里区長の業績を調べた上で、議論をされることを願います。

このブログの愛読者としての感想です。

投稿: 伊関友伸 | 2006.03.03 23:38

いつもありがとうございます。中里区長の全体像は確かに不勉強です。棺桶は不穏当でした。
江戸川区は、保育政策という一点において、子育てにやさしい街という言葉を信じて痛いめにあってきた知人・友人が多く、ユニークなまちづくりでは済まされないものを感じています。そのときどうしてもこの区長の政策が尾を引いてきたんだ、と思わざるを得ません。
もっとも、引っ越してくる住民に間違ったメッセージを与えないように、うちのまちは保育園はやらんよ、と公言(児童福祉法上難しいですが)しているなら、そんな区に住んだ人が悪いと言えます。

投稿: 管理人 | 2006.03.04 00:14

書き込みへのコメントありがとうございます。

歯に衣着せない書きぶりが黒川さんの持ち味なので、余計なことを言って申し訳ありません。

私も、べつに江戸川区の保育政策について正しいというわけではありません。

本を読むと中里区長は、ゼロ歳児の育児のために昭和44年に保育ママという制度をつくったようです。

その成功体験が、今の区役所を縛っている面もあると思います。

ぜひ、本を読んでいただいての感想を書き込んでいただくと面白いと思います。

私個人は、「ワンマン」の本の最後のエピソードである東京の渇水の時に、他の自治体がプールを閉鎖したときに、あえて区民プールをオープンしたというエピソードが印象に残っています。

本は、アマゾンで100円で売っています。

投稿: 伊関友伸 | 2006.03.04 01:03

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