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2006.02.11

2/11 中選挙区制に戻しても同じです

いったい社民党はどこまで先祖帰りすれば済むのだろうか。
きょうからの党大会で社会党時代に政治改革法案の小選挙区制導入に賛成したのは間違いだとする決定をした。絶対に政権をめざさないながらも野党の代表格を独占販売できた中選挙区制は社会党の自己改革を阻害したと思わないのだろうか。あるいは諸外国に、中選挙区制のような、つまり選挙区の定数のうち1議席分しか国民が判断を下せない選挙制度を支持している社会民主主義政党がどれだけあるのか聞いてみたい。

96年00年の選挙結果は、わずかながらも社会党の自己改革になったと思う。
中選挙区制のもとで、社会党の身内の団体のボスにだけ合意形成を図っていれば、どんなに仕事をしなくても、有権者に飽きられても、社会党のもう1人の候補が出ない限り議員でいられるのが社会党議員だ。落選の危機がほとんどない議員や党幹部たちが、西ヨーロッパであったような社会党の変革を阻み、意思決定の遅く国民意識を反映できない政党になっていったと思う。
しかし、新しい選挙制度のおかけで、議席こそ激減させたものの、ローカルな小選挙区でたたかい、広域の比例区で他の社民党議員より抜きん出ている議員でないと当選できなくなって、社民党もずいぶん新しい人に代わっていった。そのことはいっときとはいえ社民党を変えたといえるのではないか(言うまでもないが、辻元清美さんの秘書給与事件でそれが元の木阿弥になり、参議院社民党の純化路線で今度はマイナスになっている)。

言うまでもないが、社民党がこうした過去の否定をして中選挙区制復活を夢見たところで、今の制度での獲得議席数と変わらない程度の、例外的にしか議席を取れないことは、実質的に中選挙区制のもとで行われた05年7月の都議選の結果でわかってしまっている。選挙制度のせいで発言力が奪われている、というのは英国の社会自由民主党のような25%ぐらいの支持率があって、議席が1割ぐらいしか取れない政党の言うことであって、日本でその資格があるのは公明党である。そう、公明党は中選挙区制や比例代表制などでもっともメリットを得る政党である。
そもそも国民がここまで社民党に愛想を尽かされてきたのは、国民に期待を持たせながら怠慢で裏切り続けた過去の経緯もあるし、目下は、拉致問題への関与に代表される、東側諸国の社会民主主義に敵対するような共産主義政党との不透明な関係に批判がある。そこを反省しないで何言っても、有権者に小難しい釈明に終始して、支持の広がりなど望めない。
社民党は最近、社会民主主義、社会民主主義と頻繁に使うようになったが、政権をとってきた社会民主主義政党であるイギリス労働党や、ドイツ社民党、フランス社会党、スウェーデン社民党などのやり方を拒絶し、その理念を何も知らない政党が護憲を社会民主主義にこじつけて標榜しないでほしいと思う。福島さんは党首になる前、保育所を充実させる方策で規制緩和と言っていたぐらいなんだから。
小泉構造改革も前原も大嫌いなぐらい間違えた考えだと思っているが、残念ながらだからといって社民党を支持しようという気持ちにはならない。

また、この大会では自衛隊違憲論による宣言や、土井たか子氏、村山富市氏を名誉党首とする案などが採択される見通しだが、こうした意味のない言上げの連発は、党の価値を下げるのではないか。そのようなことより、国会質疑や、政策提起などでもっと力を出し、民主党の右傾化を止める役割をきちんと果たしてほしい。

社民党、小選挙区賛成は「誤り」 党大会で見解発表へ2006年02月11日06時01分朝日新聞

 社民党は11、12両日に開く党大会で、旧社会党時代に小選挙区比例代表並立制導入を柱とした政治改革関連法案に賛成したことについて「正しかったとは言えない」とする「見解」を又市征治幹事長が発表する。旧社会党が採決時の造反を理由に処分した9人の元議員(故人を含む)の処分を撤回し、名誉回復する。

 同法は94年に成立した。当時は旧社会党も参加した細川連立政権で、政治改革関連法案には党内に反対意見も多かった。連立維持のため党として賛成したが、採決時には衆院本会議で6人、参院本会議では20人が反対・欠席した。

 法案は93年に衆院で可決されたが、94年に参院で否決され、両院協議会を開いた末に成立した。旧社会党は、反対した選対委員長の志苫裕参院議員(当時)を「党員権停止100日」とするなどの処分を決めていた。

 「見解」では、その判断について「十分な党内論議も行われないまま、国会議員の大勢に押された」と反省。「民意が歪(ゆが)められ切り捨てられ、わが党の国会勢力は激減した。当時の政治選択と対処が正しかったとは言えない」と誤りを認め、離党者を除く9人の処分を撤回する。


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コメント

補記です。社民党は自衛隊は違憲状態と宣言したようです。つまり、自衛隊の存在そのものは違憲ではない、自衛隊の今の力量が違憲だという解釈です。村山さんなど自衛隊合憲にふみきった人たちの意見を聞いたのでしょう。当然の見識です。

投稿: 管理人 | 2006.02.11 18:52

 冷たいようですが、現在の社民党に何の期待もしていないので。
 政策が「護憲」だけでは、国民の支持の広がりはあり得ないと思います。管理人さんのおっしゃるとおり、拉致問題等々の過去の総括、より現実の問題に近づけた中での社会民主主義の政策の提言、実現を行おうとしないと党勢はますます先細りでしょうね。
 個人的には細川内閣が提唱した「小選挙区250、比例代表区250」が、国民が中庸な政治体制を選択できるし、かと言ってドラスティックな政治体制の変革も期待できるのでベストかなぁ、と考えているので、現在の社民党の名誉回復など、何を言わんや、です。

投稿: 窓灯り | 2006.02.12 02:24

社民党に期待していないと言い切ってしまうのはいいのですが、やはり野党が良いときは、民主も強い、社民も強い、有権者は野党を選べる、という状況だと思います。今は民主を選ぶか共産を選ぶかしかなくて、不毛です。また一部地域では社民と民主の現実対応能力が逆転していて、そうした地域の野党のリーダーはやはり社民だったりします。そういう意味で、社民党がもう少しまともになってもらえたらと思うのですが。現実の問題のなかで社会民主主義というのは同感ですね。

投稿: 管理人 | 2006.02.13 00:25

 社民党は併用制を主張しているはず。社民党がいつ中選挙区制に戻せと言ったのかね。比例での得票率は5%を超えているし、ドイツ方式ならもっと議席を得ているのであって、選挙制度のせいで発言力がないという主張には根拠がある。

 まあ、中選挙区制になれば地方労働界のボスみたいな人はもっと当選してくるだろうけど、都市部の議員は当選できなくなるだろうね。

投稿: SeM | 2006.03.15 12:36

中選挙区制に戻せとは言いはしませんが、過去の小選挙区比例代表並立制への改正を否定することは、中選挙区制の方が良かったという評価です。私も社民党が復活をめざしているなどとは書いていません。あの時代が良かったと夢見ていると表現しています。
公正な代表に選挙制度を研究してみれば、どのような選挙制度も一定のデフォルメがあります。日本人のような保守性の強い有権者の場合、比例代表制にすると、①政権構造がなかなか変わらないかも知れないこと、②連立政権が避けられないが、政策が歪曲されるからと連立政権そのものに否定的であること、③政権をとることが民主主義下の政党の役割だがその役割を放棄している政党に過大な議席を与えることの妥当性から疑問に思っています。

投稿: 管理人 | 2006.03.15 12:59

「比例代表制100%にすれば良かった」という意味なのでは?

比例代表制も、各有権者は選挙区定数のうち一議席しか操作できないのは中選挙区制と一緒ですが。よく考えたら小選挙区制でも、選挙区定数が元々一議席しかないから、一議席しか操作できない点は同じなんですね。小選挙区制で有名なイギリスでは、全国レベルで政権を奪る気が無い地方政党がスコットランドやアイルランドなどの選挙区で、政権を奪る気のある政党の議席を奪っています。

有権者一人一人が一議席以上の議席を操作するには、(単純な)連記式投票やイタリアなどの「第一党には定数の50%の議席を保証」のような、「比例代表制でない」大選挙区制を用いないとダメです。極端な話、議席数がnの場合、全有権者の1/nが団結しても一議席しか操作できないのが比例代表制です。連記式投票であっても
http://www7.tok2.com/home/aaaaaaaaaaa/pav.html
のように、比例代表制になっているものはやっぱりダメです。

> 選挙区の定数のうち1議席分しか国民が判断を下せない選挙制度を支持している社会民主主義政党がどれだけあるのか聞いてみたい。
大抵の国は大選挙区に比例代表制を用いているので、選挙制度がある国の社会民主主義政党殆どが当て嵌まると思います。


そもそも、選挙制度次第で固定政党の独裁すら可能な間接民主制より正当性の高い直接民主制では、政権どころか議員にすらなる気のない人でも有権者である限り、議会で議員がやること(法案提案や議決参加、あるいは棄権)を行います。全有権者の同時結集を要する直接民主制と相似な縮図が議会だとするなら、政権を奪る気が無い有権者の割合だけ、政権を奪る気が無い政党が議席を占めるのは当然です。

それが嫌なら、政権を奪る気が無い有権者(どうやって調べるんだ?)から直接参政権(国民・住民投票とか)を奪う方が、直接民主制との整合性が取れる分だけ、首尾一貫しています。単に政権を有権者で直接指定したいなら、大統領選・首相公選です。無理して議会の選挙制度をイジるから、直接民主制との整合性が崩れるのです。

選挙制度は間接民主制の正当性に大きく関わります。そのことを理解していれば「政権をとることが民主主義下の政党の役割」なんて書けないはずです。というか、多数決制度によって民意の集約=切り捨て機能を元々もつ民主制に、制度から外れて自党員の民意を集約・切り捨てる政党は、役割が無いどころかむしろ邪魔です。

勿論、現行の議決方法(可決or否決)は、議論途中で未決議の政治問題に対する暫定政策に、十分な根拠を与えられない場合(提案された暫定案すべて可決できず)があります。これを防ぐため、議席の過半数を単一のクローン(党議拘束)で占有させ、暫定案が一つは可決されることを保証するのが、二大政党制です。しかし当然、与党の党議の議決方法も可決or否決型なら同じ問題が発生するので、どこかで現行の民主制に反する議決方法が使われます。この問題は議決方法を「可決or否決」の二者択一から「暫定案A or 暫定案B or … or 暫定案Z」の多者択一にすることで解決します。現行の民主制度の未熟が解消されれば役割を失うのが、政党です。

長々と書いてしまいましたが、最後までお読み頂きありがとうございます。

投稿: A-11 | 2007.09.07 22:34

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