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2006.01.05

1/5 おきざりにされる保育園に通う子たち

昨日、来客と酒を飲みながら午前様で近況を話し、政治談義をする。なかなか飲めない生活環境の中で、久しぶりにとことん飲んで話すことができた。

●政府・与党自民党が幼稚園を義務教育期間に組み入れ、義務教育を延長することを考えている。与党の公明党もこれを承認しているようだ。私は、幼稚園と保育所の一元化が行われないままに幼稚園への義務化を行うことは、保育所利用をしている保護者に対する著しい不利益政策になること、幼稚園教育や保育所保育が小学校の下請け化する可能性が高いことなどから問題だと思っている。

学校週休二日制の後退案とあわせて、教育水準の低下で不安な世論につけこむような対策のような気がする。より多くの子が塾に行き、行事も減った今の学校が、かつての学校よりなぜ教育水準が下がったのか、それは単に勉強量ではないと思う。義務教育期間を延長したり、子どもにだけ週休二日を否定するような土曜開校を求めたりすることで解決できることとは思えない。
私は、教育水準は量よりも質の問題ではないかと思う。コミュニケーションツールや実社会での人間関係の作り方が変化しているこの時代に、一流大学を卒業して何十倍もの教員採用試験をくぐり抜けた人材に、200年前の産業革命、あるいは150年前のビスマルク流のやり方から一歩も抜け出さないやり方を右も左も文教関係者は押しつけている。技術や内容の質的転換を図らなければ教育水準など諸外国からどんどん切り離されていくと思う。授業時間数をこれでもかこれでもかを増やしたり、早期教育をやればいいというものではないと思う。

今回のこの話の底流にあるのは、自民党森派・文教族による幼稚園産業の救済策ではないかと思う。
若年労働者の所得が下がり続け、家族構造が変わっている。1時や2時に降園する幼稚園は、専業主婦の子しか通わせられない。そのため朝霞市のように子どもが多すぎる市はともかく、たいていの地域では幼稚園が斜陽産業化している。
ニーズの少なくなってきている、つまり利用者からあり方の改革をつきつけられている幼稚園を小学校と連結させて、現行の幼稚園制度に子どもや家族を合わせる施策を採ろうというのであろう。

ここで問題になるのが、保育園に通う子どもたちのことだ。義務教育なら、保育所が幼稚園化しなければならないか、新たに義務教育年齢に編入される子どもたちが保育園に通えなくなるか、どちらかだ。マスコミの報道からは、保育園やそこに通う子たちをどうしていくか、という発想はみられない。
もし、幼稚園の義務教育化が今の枠組みを温存しながら進められた場合、またもや自民党保守政権による、専業主婦家庭のみを優遇し、共働き家庭あるいはひとり親家庭への迫害策となる可能性が高い。
民営化と商業化という、どうかと思うような施策ではあったとしても、家庭と仕事の両立支援として保育所整備を推進してきた小泉政権の方針との整合性はどうなったのだろうか。執拗に保育所の民営化、民間委託、利潤追求の是認を要求され、その一部を飲まされてきた立場としては、納得いかないものがある。

副次的に財政的な裏付けも問題になるだろう。現在でも整備財源と運営費財源の両面から財政が不足し、保育所の整備が遅々として進まないのに、幼稚園教育課程を義務教育に組み入れ、小学校並みに扱うとすれば、現在、公務員の25歳ぐらいの給与が平均給与である私立認可保育所、学校法人の幼稚園の保育士や教諭の給料も小学校教諭並みにすることが避けられなくなる。そうなれば保育所も幼稚園も政府が支出する運営費補助は今の何倍にも拡大することになる。そんなことが可能だろうか。

幼稚園救済策のために、幼稚園の改革や長年の課題である幼保一元化に手をつけずに、安直な文教行政の中だけの「改革」をされることは、納得がいかない。

幼稚園から義務教育、延長幅1~2年…政府・与党方針
 政府・与党は、小中学校の9年間と定められている義務教育に幼稚園などの幼児教育を加え、期間を10~11年間程度に延長する方針を固めた。

 幼稚園―小学校の区分による環境の変化が学力のばらつきを招いているため、幼稚園を義務教育に含め、一貫した学習体系を構築するのが狙いだ。

 幼児教育を無償にすることで、少子化対策を強化する面もある。1月に召集される通常国会に提出する予定の教育基本法改正案で義務教育の9年間規定を削除し、2009年度以降の義務教育延長の実現を目指す。

 義務教育をめぐっては、近年、小学校低学年で、集団生活になじめない児童が騒いで授業が混乱する「小1問題」が起きている。幼稚園―小学校―中学校と進学するにつれ、指導の内容、難易度などが大きく変わり、成績格差が拡大する問題も指摘されている。

 このため、政府・与党は幼稚園などの幼児教育を含めた義務教育制度の見直し論議に入っている。

 自民党は、05年9月の衆院選の政権公約(マニフェスト)に、「幼児教育の無償化」を盛り込んだ。1月にも、政調会の下に「幼児教育小委員会」を設置し、無償化の具体策として、義務教育延長を議論する。そのうえで、延長に向けた第1段階として、教育基本法4条で定められている義務教育の9年間という期間を削除する考えだ。

 与党教育基本法検討会の議論の中で、公明党もこうした考え方を大筋で了承している。

 自民党文教制度調査会幹部は、昨今の児童・生徒の学力低下を背景に、「諸外国も義務教育期間を延ばす方向だ。日本も真剣に検討すべき時期にある」と主張している。諸外国では、例えば、英国は5歳から11年間を義務教育とし、2000年から5歳未満を対象に無償の保育学校を拡充。フランスも1989年から公立幼稚園を無償にしている。

 政府・与党は、今後、幼児教育をどういう形で義務教育に取り込むのか、調整を図ることにしている。

 中央教育審議会(文部科学相の諮問機関、鳥居泰彦会長)では、05年1月にまとめた幼児教育に関する答申で、「幼小一貫教育の検討」を掲げた。政府・与党内には、このほか、〈1〉幼稚園の1~2年保育を義務教育とする〈2〉義務教育の枠内で、「幼小一貫校」を創設し、普通の幼稚園か一貫校かを選べるようにする――などの案が浮上している。

(2006年1月1日3時1分 読売新聞)

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