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2006.01.06

1/6 ミドルクラスの衣料費(家族計)が年5万?

「自治総研」12月号を読む。熊本学園大学の中村良広教授の「個人所得税課税改革のグランドデザイン」を読む。政府税調の税制改革案への批判で連合の論点に近い。

政府は、月給取りを「優遇」してきた給与所得控除(給与所得者に経費を認めない代わりに一律のみなし経費的なもの)を縮小するという話だが、その計算根拠※1を見てびっくり。サラリーマンが年間に使う衣料費が年収445万以下で12505円、950万円以上で52125円。理容クリーニング代が、年収445万以下で9409円、950万円以上で28199円。つきあい費が445万以下で4538円、950万以上で33939円。文具費が445万以下で920円、950万以上で1665円。しかも、支出額には世帯主以外の家族の分も含まれている、勤務と関係ない支出も含まれている、と注釈してある。こんなことあり得るか、という数字だ。
※1政府税調2004年10月15日資料「図表2 勤労者世帯の年間収入5分位階級別1世帯当たり品目別年間支出金額調」

理容とクリーニングが年28199円だとすると、3500円する床屋に2月に1回行って、スーツを3か月に1回洗濯に出したら終わりだ。死に際の永井荷風じゃあるまいし年収950万円以上の家庭でそんなことありえない。衣料品もスーツ安売り店でスーツ2着買って、下着やシャツを買ったら終わりじゃないか。最低ランクなんか、スーツすら買えない水準だ。でっち上げの数字じゃないかと思う。この数字を根拠に、最低ランクで名目収入の3割、最高ランクで5%の給与所得控除が高すぎると論立てている。

もちろん政府税調が問題にしている給与所得控除は、実際のサラリーマンの経費支出に比べ大きい金額が見積もられている。それは自営業者や農家が、マイカーでも昼食代でも携帯電話使用料も経費として申告し、いくらでも課税所得をコントロールできてしまう(課税所得1000万を超えなければまずほとんど査察は来ない)こととの不公平感を解消するためにそうしている。サラリーマンと自営業者の所得補足率の差が3割と言われていることからこの差をつけてきた。それを否定するなら、自営業者の所得補足率を高めるために自営業者や農家の脱税への罰則強化ぐらいやってほしい。それと、医師の所得控除は7割だ。そのことを、月給取り階級は忘れてはならない。
そういうサラリーマン三代目の階級的な怒りを呼び起こすに値する論文だった。

しかし、この論文では、配偶者控除や、扶養控除などについての廃止にまで疑義を差し挟んでいることが残念だ。経済や税の専門家が、所得税の世界だけでの損得や政策的調整の話をすればそういう話になるのかも知れない。しかし配偶者を大切にしたり、子育てを応援するのは税金だけでやることではないし、もっと効果的な方法があると思う。そうであれば、税金を取り、サービスを充実させるほうが、効果的な社会をつくると思う。

家計から見れば、収入は所得税が勝手に源泉徴収された残りしか手に取ることができない。したがって所得税は払っているんだか払っていないんだかわからないような税金だ。10人のサラリーマンやその家族に会って、月々の税金を言い当てられる人は1人いるかいないかだ。
家計をじっくり検証すればそんな月10000円前後の税金のうち、なにやら控除が増えたの減ったので所得税が数百円が増えたの減ったの言ってもあまり意味はない。それより毎年1000円単位で上がる社会保険料の方が問題だし、安い税金のおかけで不足する社会サービスを補うために、子どもを塾や私立中学に通わせたり、高い無認可保育所に預けたり、生命保険に何万も払ったり、そんなことの無駄の方が大きい。

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コメント

この資料はちょっと不可解ですね。
もとのソースとなっている家計調査表によれば
2004年の数字ですが
年間収入¥2000000から¥2499999の家計の場合、
月額(年額)で
被服および履物 6085円(73020円)
理美容サービス 2413円(28956円)
こづかい 4296円(51552円)
となっています。
参考までに大分類の支出内容の月額を記します。
食料 54875円
住居 20281円
高熱水道 17644円
被服および履物 6085円
保健医療 9273円
交通、通信 19113円
教育 4732円
教養娯楽 16439円
その他 39729円
となっています。
指摘の資料が解せない点としては、
一、年間支出の分類項目が意味不明
二、数値が月額としても意味不明
三、こづかいが異様に高い。
などです。
私のデータは2004年の家計調査 第四表年間収入階級別一世帯当たり年平均1ヶ月の収入と支出(全世帯)から作成しました。意味不明のデータは、「年間収入五分位階級別1世帯あたり支出金額、購入数量および平均価格」から作成とあります。その当たりに間違いのもとがあるのではないかと思います。
いずれにせよ、こんな意味不明の資料をもとに税を考えているとした困りますね。

投稿: 村越 | 2006.01.07 02:04

 実は我が社では昨年の4月から給与明細が廃止されまして、パソコンの人事給与システムから閲覧するようになりました。(人事給与システムはけっこう便利なものです。年次有給休暇もグループ内職員の動向を見ながら、上司に休みます、と言って入力すれば勝手に処理されていきますから。)そのときに、組合機関誌に載った記事が「自分の給与明細は必ず確認しましょう」ということでした。実際過去にもプログラムミスで源泉所得税を2ヶ月分取られて、次の月の源泉所得税で調整した、ということがありましたから。
 父が個人事業主であり、自分が給与生活者であるので、お互いに嫉妬があるのだと思います。給与生活者には社会保険料の雇用者負担があるのでいい、医療費も1割負担(当時)だからいい…ということは言われ続けてきましたし、自分が給与生活者として思うのは、個人事業主の所得捕捉率の低さが問題であると思っています。
 源泉所得税の方が申告所得税よりも額が大きく、源泉から強制的に徴収できるという「うまみ」があるため、国税当局も源泉所得税の制度は手放さないでしょうね。申告所得税のみになったら、現在の徴税職員では人手不足でしょうから。
 国税当局も申告納税では不服審判に付される事例が増えていると聞きます。不服審判所でも、納税者側の主張が認められる例も増えていると聞きますし、不服審判の結果に納得できなくて裁判に訴えるケースも増えていると聞きます。そこで、源泉から強制的に簡便に徴収できる源泉所得税の実質増税に目をつけたのでしょうけど…。私自身は、個人事業主の所得捕捉率向上のための何らかの方策を取る(国民総背番号制にして申告所得税の後調査を義務づける、など)か給与所得者も原則として申告納税にするかしないと、給与所得控除の減額には反対ですし、給与生活者の理解を得られないと思っています。

投稿: 窓灯り | 2006.01.07 03:21

村越さん、参考情報ありがとうございます。私の紹介した数字は年額です。おかしいでしょう?
指導者同志の生誕日の下賜がないわが国で年収950万の人の被服費が1%以下とは、考えられません。それがほんとうに現実なら、サラリーマンは何のために働かされているのか、不思議です。
給与所得控除の理屈つけとして、
①源泉徴収による所得補足率の高く他の所得より税負担が重い。
②給与所得は労働に依存し、資産所得に比べ不安定で有期的である(所得を作るのに支持命令に依存し、自力ではどうにもならない収入であるということ)
③余暇の犠牲、勤務地による居住地の制限があり、有形無形の経費がかかっていること(転勤命令で二重生活を強いられたり、取引先との交際費など経費使用の裁量性が少ないということ)
が1968年の税調で指摘されています。社会が変化しているのでこのままとは思えませんが、③などはその時代よりひどくなっていますし、②は資産格差が激しくなっている中でより強調されていいことです。考え方を覆す根拠にならないと思います。
税金が足りないから実質的に増税しなくてはならないというスタンスは理解するにしても、サラリーマンだけに増税を求める姿勢がおかしくて、特に査察の行われない個人事業主の査察強化や罰則強化が必要で、得意先の接待用の高級車として経費計上されるマイカー、仕事と私生活渾然一体で使われる携帯電話、働いていない妻へのみなし給与制度など、経費控除を厳密にして、そこからも税収増をきちんとやってもらわなくては、納得がいきませんよね。

投稿: 管理人 | 2006.01.07 07:56

論旨全体は管理人さんのおっしゃるとりだと思います。


>サラリーマンだけに増税を求める姿勢がおかしくて

これもそのとおりでしょう。ただ、


>特に査察の行われない

 これは「個人事業主」は税務調査が行われない、という意味ですか?それとも個人事業主によっては税務調査が行われていないという意味ですか?
 前者ならはっきり間違えですし、後者なら、とれそうなところを狙って徴税事務を行っていると判断すればある程度当然とも言えるんじゃないかな。


>個人事業主の査察強化や罰則強化が必要で

 税務調査を強化しても徴税金額があがらなければ意味がないでしょう。その辺は何か裏づけがある主張ですか?


>得意先の接待用の高級車として経費計上されるマイカー、仕事と私生活渾然一体で使われる携帯電話、働いていない妻へのみなし給与制度など、経費控除を厳密にして

 個人事業主にとって、この区分けを厳密にすることが実務上可能かどうか疑問です。大体50%程度を経費計上するのが相場のようですが、このパーセンテージを厳密に算定する方法は実際無いと思いますよ。同じ車が「得意先の接待用」なのか、マイカーなのか、どうやって判定しますか?
 さらに、「妻」が「働く」という場合、個人事業者にとってそれがどういう意味内容なのか色々でしょう。


>税金が足りないから実質的に増税しなくてはならない。

 これも首を傾げますよね。足りなきゃ取るといったって、その前に削るところがあるだろう、としか言いようがないわけです。削って、どういう意味で税金を使っていくかはっきりさせて、それから増税でしょう。どうもこういう意見を聞くと、バブルに乗り遅れて庁舎を建て替え損ねた地方自治体の職員(で自治労の組合員)が「建てちまえばよかったんだと」とつぶやいていたのを思い出すのですが。
 まあ、どんな支出でも「有効需要」の創出だ、と言えば言えるんでしょうが…。

以上、私は国税の組合員ではありません。連合加盟単位は彼らと同じのようですが。

投稿: ハンス | 2006.01.07 12:09

・私もアルバイトしていたときに経営者の苦手な税務申告を手伝ったことがあります。経営者の言われるままに領収証を足していったら、その金額を申告書に書き込んでいました。それが中身を精査せず通っていたのには驚きました。
一方、中堅企業に就職してからは、売り上げの割に過少利益だということで毎年のように国税が調査にお見えになっていました。理論的にはいろいろあって査察に毎年はいるところと無視するところとあるようですが、不合理なものを感じました。
・罰則強化をするのが事務手続き上不合理なら、それによって生じる不公平感を解消するために1968年税調の給与所得控除の理屈づけがあると思います。給与所得控除に手をつけるならその理屈の検証があるべきでしょう。
・妻が働く意味いろいろの意味はわかりません。働いているなら働いている、です。働いてもないのに給料払うなら過去、政界を葬られた議員と同等のモラルです。
・私はそれでも増税が必要だと思います。効果的にやるならバレート最適の理論にしたがって手をつけるべきでしょうが、その場合、支出を削減は、社会保障ばっさり切る、国債を踏み倒す、次が人件費です。人件費は派手に議論され始めていますが。それがなければ歳入欠陥は補うレベルに追いつかないのです。支出を切るのはオーバーに言えば神話です。社会保障を切る場合、第一に年金ですから、これを切れば子どもたちは親の扶養で身動きが取れなくなります。国債を踏み倒せば銀行、郵貯は信用不安になります。そんなこと現実的ではないのです。
・増税で地方公務員天国の社会をつくろうというので増税賛成しているわけでもありません。教育も福祉も世界水準に大幅に遅れて、未来に進んでいくための必要投資に使うお金が、今の税収程度ではそもそもこの国にはないのです。国際比較をすれば明確です。
・確かに庁舎を建て替えろというのはナンセンスです。その無駄を切ることも大事です。しかし歳入欠陥の構造問題を解決する話ではありませんね。民間なら減価償却というまともな考え方があるのですが、官公庁にそれがなくて、財政面からの妥当な建て替えのタイミングを測ることが不明確であることが問題なのです。

投稿: 管理人 | 2006.01.07 13:01

>罰則強化をするのが事務手続き上不合理なら、それによって生じる不公平感を解消するために1968年税調の給与所得控除の理屈づけがあると思います。給与所得控除に手をつけるならその理屈の検証があるべきでしょう。


「それによって」の前と、その後がどうつながるのかわかりません。ご教示願えますか?

>働いているなら働いている、です。

 これがそう単純ではないのです。「職場」が住居と一体になっている事業主を考えてみてください。掃除一つとっても、家事労働なのか営業にかかる労働なのか区別がつかないでしょう。電話にしても回線を分けていなければ「妻」の受けた電話が営業にかかるものの場合もあればPTAの連絡だったり、町内会の連絡だったりもする。家の前の道を掃き掃除するにしても、「家」の前の道路を掃除しているのか、「事務所」の前の道路を掃除しているのか、判然としないでしょう。客がくればお茶を入れるにしても、その客が商売の客だったり、近所の友達だったりもする。結構、面倒なもんで、そうははっきり区別できないでしょう。


 増税が不可避としても、その前にぎりぎり削減すべき必要があるというのが私の主張です。これは要するに、増税するときは無駄な支出は最大限削減してから言え、という話です。効果よりもモラルと、信用の問題です。「建て替えとけばよかったんだ」などと言う向きは増税したら増税したで、また無駄な使い方をするでしょう。
 先般葬った四市合併にしても、実行されていれば一体いくら塩味たちにたかられていたことか…。


 それと、上記の「バレート最適」は厚生経済学の第二命題のことをさしています?

投稿: ハンス | 2006.01.09 03:24

公務員らしく逐条で突っ込んでいただいていますね~。
「それによって」はハンス氏が罰則強化でコストがかかりそれによる徴税を上回るとおっしゃったことです。
自営業の妻の不可分性は、サラリーマンの妻にはないかも知れませんが、異動による強制的転居、地域の責任を負えない夫の代理などそれはそれなりにあります。言い出したらキリがないから、わかりやすいどこかで線引きするか、代替えになるルールをつくるしかないと思います。
増税の前にコストを削れという意見はごもっともですが、人によって無駄なコストが、公務員の給料だったり、道路工事だったり、公園整備だったり、多様な考え方や意見があって、その合意形成するまでどんなに景気が良くなっても減らすことができないレベルの財政赤字を垂れ流しにしていいということにはなりません。二つの課題はリンクさせずそれぞれで徹底してやるべきです。
四市合併についてはその通りですね。それで減る市長や議員の給料よりも、もっと大きな合併交付金でいろいろ土建業が儲かる仕掛けがあったのでしょう。

投稿: 管理人 | 2006.01.09 11:24

まもなく原則電子申告の時代ですから、全員確定申告にしてみたらいいんですよ。
まず、なによりも酷税感で政権がひっくり返りますよ。

投稿: takeyan | 2006.01.12 20:49

どうでしょうか。税金単体では、おそらく収入に比べて思ったより少ないと思うはずです。500万の人の所得税が20万いきませんから、実質、5%もないです。それより、比較的割高に計算されるようになっている社会保険料の方が大きいですね。年金は満額帰ってこなくても払った額に比例しているからまだしも、徹頭徹尾掛け捨てで医療機関に行くと時間の無駄になるばかりなので、医療保険はちょっと納得いきませんね。また病院の裏に息子の外車なんか止めてあるとさらに・・・。

投稿: 管理人 | 2006.01.12 22:36

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