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2006.01.05

1/5② ただ子ども政策の支出を増やすために

●あるサイトで紹介された「このビンボー人の再生産のシステムを何とかしろ」。ビンボー人ほど携帯電話やパチンコやたばこを辞められず、ビンボーを再生産してしまうのだから、この業界に規制をかけろ、という主張。
差別的で乱暴な議論でところどころ間違いもあると思うが、本質を突いているような気がする。学術的な社会調査の結果はないようだが、あるマーケティングの調査では、携帯電話、パチンコ、たばこに依存する人は低所得者ほど多く彼らの生活を搾取しているような側面もあるようだ。

●来年度は児童手当の拡大で小金持ちの子までにばらまくことになるが、さらに政府は育児手当というもので屋上屋を重ねるばらまき福祉をやるようだ。あわせて乳幼児医療を無料化するという。子育てはお金がかかる、とか、政府支出のうち子育てに使われるものは少ない、という一面的な情報だけをそのまま政策にしただけの話。少子化対策ならまったく的はずれだし、次の世代の子どもたちをきちんと育てるという観点でも愚策だと思う。

私は児童手当をくれるというならもらうが、子どもがいるからと現金給付をすることは愚策だと思っている。金のない親がこの世にいることは知っており、年収200万しかない親にお金をばらまくならまだ理解できるが、今で年収780万、来年度から860万の親がどうして子育てするお金を政府が配らなくてはならないのだろうか。また所得が少ないから子どもをつくらないと言い張る若者がわずかな児童手当や育児手当で行動を変えるとは思えない。低賃金政策を改めるしかないだろう。まして、その使途たるや家計が子どものために支出を増やしているなどという保障は何もない。普通の家庭には特別会計みたいなものはないから証明は難しいが、家計支出の中で増え続ける携帯電話の使用料や、ガソリン代に化けているのではないだろうかと疑っている。
一方、現金給付が一番必要なひとり親家庭には冷淡だ。父子家庭には何の支援策もない。さらに母子家庭へは「児童扶養手当」は毎年どんどん刈り込んで、年収300万でもカットの対象になっている。政府の役割がデパートの商品券積立なのか、リスクカバーのための保険業的存在なのか、もう一度再確認する必要があるだろう。

さらには現金給付するだけの制度を、児童手当だ、育児手当だ、複雑にしてバッチワーク的にやることに問題を感じざるを得ない。今で月5000円の支給のために、数人の市職員が支給申請、支給決定、支払明細の発行、振り込み、年に一度の資格審査などを繰り返している。その裏側には、都道府県や税務署、社会保険庁などと照会業務を頻繁に繰り返している。その事務経費や労力が公共サービスとして妥当なものなのか、ちっとも検証されていない。

乳幼児医療費の無料化も、軽症の子どもが安易に病院に通うようになり、子育て世帯を救うよりも医療業界にお金を流すことになる。それはどうかと思っている。病院に行くと風邪程度での診察で、重篤な子や急性症状の子の診察が犠牲になっているような感じがしてならない。風邪程度でかかっている人に2割程度の自己負担をすることに何が問題があるのだろうか。それより、その財源3000億円をほんとうに重篤な患者や慢性疾患の子どもに集中して使い、辛い彼らが快適で良質な医療が受けられるようにすべきだと思う。

公明党が、子育て支援に取り組んでいるというポーズを示すために、子どもがいるという一点の根拠だけでの現金給付策をぶちあげて、与党入りの公約、つまり政治課題にしてしまったものだから、どんなに効果が無くても自公政権の間は引くに引けない政策になってしまっている。
かつては公明党は「少子化対策臨時交付金」を発案し、子ども支援策をまとめ交付金を申請した自治体にお金を配る施策を実現させた。これによって、保育所不足の自治体では保育所整備が進められ、専業主婦まで含めた育児支援や、子育てサークルづくりに力を入れる自治体ではそうした広い子育て支援策が進められ、各自治体の子育て支援策のポリシーを強める効果があった。優秀な政策だったが、批判もされなかった代わりに、子ども施策関係者以外は誰も評価をしなかった。残念なことだと思う。

少子化対策:3歳まで育児手当、6歳まで医療無料 若年夫婦支援へ新設--政府検討
 政府は4日、少子化対策の一環として、3歳までの子どもを持つ保護者を対象とする育児手当制度を新設し、さらに6歳児までの医療費を全額無料化する方向で検討に入った。育児手当は月額1万5000円を軸に調整する方針。経済力の低い若年夫婦層に重点を置き、財政支援により少子化に歯止めをかけたい考えで、猪口邦子少子化担当相を中心に財務、厚生労働両省と調整を進める。同制度が設けられれば、乳幼児・児童への助成制度としては1972年の児童手当以来となる。

 育児手当は、現行の児童手当(第2子まで月額5000円、第3子以降同1万円)に加えて助成するもので、児童手当制度を参考に所得制限を設ける意向。児童手当は来年度から、支給対象を小学3年以下から同6年以下に広げ、所得制限も一般のサラリーマン家庭で860万円未満(現行780万円未満)に引き上げる予定になっている。

 一方、医療費の病院での窓口負担は現在、3歳未満が2割、3歳以上が3割。乳幼児医療費については地方自治体が独自に助成制度を設けているケースも多いが、この本人負担分を国が全額助成する考えだ。

 政府の試算では、育児手当制度に年5400億円、乳幼児医療の全額助成に同3000億円の計8400億円の財源が必要となる。ただ、新たな財政支出に対し財務省が難色を示し、育児手当については、乳幼児医療費への負担が減る地方自治体に一定の財政支出を求める案も浮上。今後、関係省庁で調整し、07年度からの導入を目指す。

 昨年12月に公表された05年の人口動態統計(推計値)と国勢調査の速報値で、日本の人口が初めて減少していることが判明し、政府は危機感を高めているが、少子化対策に「即効薬はない」(小泉純一郎首相)のが実情。一方で、国の社会保障給付費全体に占める児童・家族関係給付費の割合は4%程度で、新たな財政支出による対応策を模索していた。【葛西大博】

毎日新聞 2006年1月5日 東京朝刊

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コメント

と言いますか、
現在の政府の「児童手当の拡大」に代表される、少子化対策の意図するところは、低所得層の育児を支援することではなく、中産階級の2人目、3人目の出産を促進させることにあるのではないでしょうか。

それにしても、ポピュリズムが沸騰している今、「金をやる」という政策に正論で反対するのは非常に難しいですね。
福祉の仕組みやシステムの重要性を再認識してもらう啓蒙活動が必要なのかもしれません。

投稿: ケン | 2006.01.05 22:13

そうなんでしょうね。だれにねらいを定めているかも不明確だからわからない政策ですね。
ただでさえ保育料など自己負担が高く設定され、塾だ習い事だとお金を使う中産階級の子を増やすなら、月5000円では家計の変化につながらないというのが現実です。
児童手当、税金の扶養控除を廃止し、その財源をひとまとめにして本当に育児に困っているところや教育に集中投下してくれると、子育て環境も教育水準もだいぶ良くなると思うのですが、もったいないお金の使い方をしています。
啓蒙活動が必要だけども、そもそも何のために政府があり税金を払うのだ、ということを再定義しないと、こうした政策判断の誤りは各分野でおきることでしょう。

投稿: 管理人 | 2006.01.05 22:37

私も苦しいのでいただけるものは欲しいですが、中産階級にカネを撒くとお稽古事の本数が増えるだけかもしれませんよ。

毎回似たような結論なのですが、同じ財源で公立の教育だけで完結するしくみを作ればその方がより効率的だと思います。
小学校から高校まで塾と習い事に使うかねがある程度軽減されれば、その方が幸せかと。
だいたい、学校の中身がしっかりすれば、塾は極端に成績の悪い子の補習塾と極端にできる子の進学塾だけで十分になるんですから。塾で先に勉強して学校では暇だから授業を聞かないで騒ぐ子どもが学級を崩壊させる例を現場の方から聞きました。これって悪循環ですから。

投稿: takeyan | 2006.01.06 12:26

公立校の授業を崩壊させる要因の1つに、塾の存在悪ってあるみたいですね。韓国が軍事独裁政権のときに塾禁止をやったことがありますが、ヤミでやるところが絶えなくて、このあたりの始末の悪さは風俗産業に巣くう暴力団に似ています。
子どもに必要なものと、親が必要だと思うことにしばしば齟齬が起きるので、現金給付は良くないと思うのです。子どもにとってお金が余計にあることより、限られた時間の中で、もっと遊んだり、勉強したり、いい人に会うことが財産だと思うのですよね。

投稿: 管理人 | 2006.01.06 18:53

 「児童手当」はどんどん拡大の一途をたどっていますが、必要なところに必要な施策を実施する、という方策でなければ政策と言えないと思っています。
 私自身は、「児童手当」の拡充よりも、奨学金制度の充実の方が政策としては適切だと思っています。
 以前、母から聞いたことがあるのですが、教育費負担の重さから3人目をあきらめざるを得なかったそうです。当時の児童手当は3人目からしか出なかったのですが、その児童手当をいただいたとしてもその後の教育費負担からあきらめたそうです。なんでも子どもを一人育てるのに2千万円以上かかるのだとか…。非常に身も蓋もない話ですが、その大半を教育費負担が占めている訳です。
 ですから政策としては、児童手当の「充実」よりも教育費負担を軽減する、たとえば低所得層であれば修学援助(準要保護)の充実だとか、中堅所得層を含めるならば共働き家庭の保育料の援助の充実、奨学金制度の充実などに財源を充てるべきだと思っています。また、幼児の医療費負担の無料化を言うならば、幼児の医療費負担を現状のままにして、出産にかかる費用(正常分娩では医療の対象外。出産一時金30万円が出るだけ。)の全額公費化の方が適切かと思っています。(出産一時金は35万円に上がるそうですが、全然足りませんね。)
 窓が学生時代に思ったのは、学生に対する援助の貧弱さです。当時の日本奨学会の私立大自宅通学の一種奨学金が月額4万1千円(年齢が分かってしまいますね。)でした。年間合計しても授業料にも満たない額ですから。この国は貧乏人は学校も出させないのか…、と本気で思いました。

投稿: 窓灯り | 2006.01.07 02:46

そうでしょうねぇ。奨学金といえば・・・。
私もも貧しくはありませんでしたが、高校時代の親を含めさまざまな桎梏から脱出するため北海道に渡り大学に入ることにしました。反対しながらもいくら何でも裸で行かせるわけにいかないと親が生活保護の半額程度の仕送りをしてくれたのでしのげましたが、奨学金制度は親の年収要件が厳格で当時はとてもいハードルが高かったですし、貧しい家や親との折り合いがうまくいかない人は能力あっても、という感じがしました。お金のかかることを回避しながら何とか生活していたことを思い出します。
もっともっと大きな政府でいくなら、児童手当というオプションもありますが、社会サービスの少なさでさまざまな人生のチャレンジや、地域でのコミュニケーションづくりを断念している人が多い現状では、児童手当なんてわけのわからないものにお金をばらまくのはどうかと思っています。
それと出産一時金の引き上げには賛成ですが、医療側がぼっているという感じがしないでもありません。妊婦に良いのか知りませんが、フランス料理食べさせて、出産費用50万という話もありますから、内容の吟味が必要でしょうね。私は出産経費を公的医療保険の対象にして、保険外保険内を明確にして自己負担分を別の考え方で補償することを考えることが合理的だと思います。
最後に子育てにお金がかかるという話ですが、1つの生命ですから家より高くてもいいと思いますし、逆に安上がりでも十分豊かに育つことはできるとも思います。

投稿: 管理人 | 2006.01.07 07:21

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