12/4 政府の救済策はずれている
マンション強度偽装問題の被害者救済が動き出す。
私は経済原理から言ってお金を使う「被害者救済」には基本的に反対だ。しかしもう政治が動き出している。その中でよりましな救済策があると思うが、公営住宅の緊急転居時の当面の家賃免除以外は、建て替えの税控除、全棟検査と、居住者よりマンション業界にお金が流れ込むような案しか与党から出て来ない。救済するなら被害者をきちんと救済すべきだろう。
武部が得意げに全棟検査を公費でやるとぶちあげたが、私は3点、疑問に思っている。
1点目はそんな予算がどこにあるのか、ということだ。専門家に聞いたところマンション1棟の強度検査は3000万円もかかる。全国何万棟(入居者ベースで450万戸ある)ものマンションを検査したら3兆円はかかる。整備新幹線を4回は作れるだけの予算だ。
2点目は、おそらく財政事情からやるとなれば構造計算書の書類チェックをやり直すという程度のものだろう。そうなれば今回のように審査用の書類が差し替えられていた場合にチェックすることはできないだろう。また業者がそうしたものを破棄しているとも聞く。
3点目は、結局、専門家や業者が情報や知識を独占している状態のもとでどんな診断がされようとも、その結果が客観的である保障はない。業者がこのマンションの住民は経済的に余裕があるから建て直させてしまえ、と思えば危険と診断するだろうし、このマンションの住民は経済的に余裕がなく建て直せなんて言おうものなら混乱が起きそうだと思えば、何とか大丈夫と診断するだろう。
その結果、業者が結局潤う。マンション業者に対して甘いのだ。
今回の問題には、ヒューザー、イーホームズ、ERI、木村建設、総研と、出入りしていた業者が被害を補償すべきだろう。総額140億だ。その気になればある程度は返せるはずだ。それに住宅ローンをつけた銀行などの責任も問い、最後に住民を支援すべきだろう。
もし公費を使って今回の問題を解決するなら、被害者に直接給付すべきだ。マンション業者が潤うような解決方法は絶対にしてはならない。
住民を支援するにあたっては、再発防止から制度改正が必要だ。
①政府が推進してきた規制緩和のイデオロギーでは、規制を事前チェックから事後チェックに切り替えていくとしていた。しかし事前チェックをちゃんとやらないと取り返しのつかない問題があることや、事後チェックの方が効率が悪い現実があることも認識し、規制緩和の路線を修正すべきだろう。
②今回検査業者を建築主や設計会社が指名できる関係が見えてしまった。検査会社が中立的に選ばれるシステムをつくるべきだろう。一番よいのは検査業務を行政の責任とし、行政が任意、あるいは抽選で検査業者を選び検査業務を委託することだろう。またビルマンションの分譲販売の場合には、建築主と設計士との緊張関係も整理し直すことが必要だ。
③マンション販売業者が販売したマンションに問題があった場合、10年補償するという制度があるが、今回それについて何の金銭的裏付けもないことがわかってしまった。補償保険制度づくりが必要ではないだろうか。
④マンション居住者を支援する居住者自身の組織の育成が必要だ。業者寄りの管理会社とは違う立場で、管理組合の運営ノウハウの支援を行うように自治体等が支援を行うことが必要だ。
⑤災害や犯罪被害者の生活再建を支援する制度が必要だ。今回の全体の再建費用は金額的に国家予算で支払うことができる。しかしマスコミや政治家など持てる階級の立場から、自分に身近な話題であるマンション被害者だけに同情論が広がって、他の災害・犯罪被害者が放置されていることは問題が大きい。全体的に、災害や犯罪の被害者の暮らしを建て直すのは誰が何をして支える必要があるのか明確にした制度づくりが必要だろう。被害が経済犯による場合、国や自治体が問題業者の代わりに補償を立て替え、元暴力団員などの出所後などの更正事業として取り立てをやらせてもいい。
| 固定リンク
コメント