11/23 マンション被害だけどうして国の補償論があるのか
勤労感謝の日。神道の記念日らしいが、そんなこと気にせず、労働者の日ぐらいに思うようにしている。
昼間っから近所で一番おいしいイタリアレストランに行き、うまいものを食べて酔っぱらう。ありがたい休日だった。
昼寝して、夕方からウィンドーショッピングに出かける。埼京線に乗るが、渋谷駅が不便だ。
●マンション強度の偽装問題で建築を請け負った木村建設が昨日不渡りを出したが、社長も社員も全員トンヅラしているという。融資した会社の資産を守りたい銀行の入れ知恵でもなければ、会社を挙げての財産持ち逃げであろう。被害に対して業者への補償要求が必要だが、その業者たちが少しずつ補償できないように被害者たちの外堀を埋め始めている。
そんな中、被害者たちは国の責任を問い、国に個人補償を求め始めている。折しも国土交通大臣が公明党で、この党が大好きなこうした現金補償をしかねない発言をしている。となると、手抜きに関わった業者や建築士の不始末に国民の金を使う方向にみんなで話をまとめ始めている。こんなことでよいのだろうか。
企業倒産で自己破産した人、ホームレスになった人、自殺した人、彼らにわずかな同情を差し向けながら、要領よくたちまわらなかった自己責任と言って、生き残った者は社会から追放してきた。似たようなケースでは、オレオレ詐欺やリフォーム詐欺で被害にあった人たちが丸裸になろうとも国が補償はしてこなかった。
道義的に許せないのは、こうした規制緩和を利用してやりたい放題やってきた不動産屋はふだん、自己責任だ、小さな政府だと言っている連中ではないか。それが自分たちの形勢が悪くなると、個人補償で責任を棚上げしようとしている。
世論も問題で、欠陥マンションの被害者だけ救済の声を挙げられるのは、自分の周囲のリアルなものには過剰に反応できるからだ。しかしちょっと目を向ければもっと不幸な運命の人たちがいる。福祉は税金の無駄遣いなどと平気で言い、自己責任と言いつける。世論は全く情けない感性をしている。
こうした被害の再発防止にいくつかの考えが出てくる。
①大原則は、建築確認申請を自治体が行うように制度を規制緩和前に戻すことである。自治体も建築確認申請を業者に丸投げしてきたが、建築確認申請の発注主が建築業者から自治体に変われば中立的な立場で審査が可能になる。
②住宅ローンを融資する銀行は担保物件の損害にも責任を持つ制度が考えられないか。今回の被害でも、被害者がローンを抱えているから補償論が声高に出てくる。個人が建築業者を検証することはできないが、銀行なら審査能力は無いとはいえない。住宅ローンを貸す銀行の責任を強め、手抜き建築のローンは返済しなくてよいことはできないか。銀行を敵にまわしては商売ができない建設業者は手抜きがほぼできなくなる。
③預金保険制度のように同業者の不始末の後かたづけをする仕組みが必要だろう。建築業者が不正を行った場合に、業界全体で積み立てたお金から補償される制度である。今回の事件でマンション関係の不動産業者、管理会社、建築業者みな不審の眼で見られている。業界全体の信用にかかわっている。同業者で始末する必要があるだろう。今回の始末もそういう方法を考えるべきではないか。国より同業者の方が責任がよりあると言えるだろう。
④経済教育も重要だ。今行われているものは金融業界の教材提供があるため株や投資のことばかりだ。そうではなく、自分を守るための経済教育であるべきだ。日本の教育では「正しいこと」を教えるばかりで、性教育、経済教育、労働者教育など社会で自分を守る教育は全く行われない。そして失敗すれば簡単に自己責任と言われて放逐される。
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コメント
私は今回のニュースを見ながら、
規制緩和論者は「いよいよ日本も自己責任社会になってきた。この程度のことはあって当たり前なのだ、不注意な被害者たちは保護されないことは当然。都市再生の経済効果を考えれば代償としては安いものだ」と思っているのではないかという気がします。
④の経済教育については、中学校の教員をしている友人います。彼は教員浪人時代に、行政書士の資格を取得し、さらに社労士の取得を目指して勉強していたことがあります。彼は教員になってから「中卒で就職することもありうるのに学校では労働法も教えない」となげていました。また、最近キャリア教育とかいって、インターンシップをやらせたりしていますが(それは良いことですが)、うちの地元の県立の商業高校は未だにアルバイトを原則禁止にしていたりします。うちの店でもルール違反ではありますが、そこの学生を雇っていました(うちにも非があるかもしれませんが)。ある日教員がやって来て、辞めさせていきました。非常にまじめな子で、一生懸命仕事をしてくれていました。インターンよりもお金をもらってプロ意識を持ってする仕事の方が教育効果が高いはずなのに。いつまでパッチワークのような施策を続けるつもりなのかと思います。
投稿: wacky | 2005.11.23 23:53
規制緩和以外の分野(郵政改革や財政再建)は改革派と守旧派が入り乱れるのに、規制緩和だけは推進派=改革派、少しでも反対派=抵抗勢力とされて不毛な議論しかできませんね。嘆かわしいことです。
きちんとした経済教育をしないと、この経営者やりたい放題の社会では人々を革命家に育ててしまう結果になりかねません。労働法や消費者としての権利を教え、社会に参加する主体であるという自覚と能力をつけていかないと、ほんとうにこの国はダメになってしまうと思います。
投稿: 管理人 | 2005.11.24 00:11
そうそう、アルバイトも同感です。どうせ多くの子は学者になるわけじゃないんだから、学生時代はほどほど有益に働いてほしいと思います(私は児童労働は一概に否定しません。じゃりン子チエをご覧ください)。稼いだお金を携帯電話会社に貢がなければいいのですが・・・。
投稿: 管理人 | 2005.11.24 00:14
今回の報道を見ながら、少なくとも一定の高さ以上のマンションはSRC造を選ぶべきというのは多くの本に書いてあるのにな、と素朴に感じました。
もちろん、RC造の物件もあるのですが、大枚をはたくなら、多少の価格差より安全が大切であると考えるのが私の個人的な感性には近いです。
投稿: takeyan | 2005.11.25 03:14
実は私もSRCとPCの違いを最近知ったばかりです。それくらい消費者がわからないことばかりで買わなくてはならないのに耐えうるマンション建築にかかわる規制策が必要ではないかと思うのです。
私自身もよくわからず、職場の取引金融機関の不動産審査の人に依頼して、工事の関係業者をある程度調べてもらい、判断しましたが、ほんとうに大丈夫か、あるいは逆に大丈夫なのに大規模修繕や地震後に強度不足などと断定されて騙されるんじゃないか、と心配でなりません。
投稿: 管理人 | 2005.11.26 00:15