« 11/19 始末にもけじめを | トップページ | 11/21② 定点観測 »

2005.11.20

11/20 評価者を評価される人が雇う不思議 

前から出席する約束していたマンション管理についてのセミナーがあった。大規模災害への対策がテーマだったので、マンション耐震データ偽造事件の話を聞くことができたし、参加者どうしの話題もそれでもちきりだった。

技術士の渡辺実さんの講演では大規模地震に耐えうるマンションの構造とはどのようなものか、阪神大震災で関西のマンションの多くで手抜きが行われていた事実、それから復旧が遅々として進まない中で、手抜きで倒壊したマンションだけは早々と撤去が行われたことなどを話してくれた。また、こうした構造というのは解体しないと問題が露呈しないと言っていた。それだけに詐欺がやりやすい世界なのだろう。
彼の講演の中で「同業者として(姉歯氏を)死刑にしたいぐらいの気持ちだ」という思いが吐露された。マンション関係のこうした人たちも相当危機感を持っている。しかし、この事件は姉歯氏のモラルの問題だけだろうか。姉歯氏は積極的にマスコミに出て清々したかのように語るには、業者との不透明な関係が清算されてほっとしているような感じがしてならない。悪人の建築士でもここまで連続的に手抜きに加担するかどうか、私は疑問だと思った。
それと、チェック体制の問題は大きい。役所がやっていた建築確認申請を民営化して、ほったらかしにしてきたことが問題ということは、参加していた建築士、マンション管理士などと意見交換する中でも一様に指摘していた。

小泉構造改革の、民間に競争させるだけの改革に限界があるということ指摘した事件だ。これに民主党や、社民党も共産党もまともに批判していないことに政治のダメさを感じる。政策の失敗なのだ。不動産関係業界べったりの規制改革会議がごり押しで進めたマンションの建築確認申請の民営化が、とんでもないことになるのではないか、ということは、島本慈子さん始め、いろいろな人が指摘してきた。
チェックする人をチェックされる人が雇う、これは利益背反だ。実際、どれだけ期間内に確認申請を通すかが建築確認する業者の評価になっていた。それでは難しい調査などできるわけがない。少なくとも書類のチェックしかできない。
チェックする人は、チェックしないことで不利益被る人から雇われなくてはならない。少なくともチェックされる人と中立的なところにいなければならない。規制緩和委員会の予定調和的な性善説には本当、問題が多い。被害の再発防止のためには、マンションの建築主が直接民間の建築確認を行う業者に申請をする、という制度そのものを廃止すべきだろう。

この規制緩和の動きには裏があるとしか思えない。島本慈子さんの「住宅喪失」はそうした規制改革会議の動きを丹念に追いかけている。

|

« 11/19 始末にもけじめを | トップページ | 11/21② 定点観測 »

コメント

 少なくとも民間競争が性善説を持っているとは思えません。貨幣愛に基づき行動するのが彼らの常道ですから、ちゃんとした仕事をしようとして利益が圧迫されると、「お宅だけじゃないんだよ。他の業者に頼めばもっと安く施工できるようになるんだよ」と言われれば、普通の業者であれば業者の意のままに行動せざるを得ないと思います。
 少なくとも、確認、検査行為は公的機関や指摘事項を出して恫喝されてもびくともしない第三者機関が行うべきです。
 政治の原則は三権分立になっています。これは人間の「性悪説」に基づいていると言えます。それぞれにチェック&バランスが必要なのです。
 大変不幸な事件ではありますが、国土交通省が刑事告発するとのこと。姉歯さんには、建設会社から受けた圧力や圧迫をつつみかくさず明らかにしていただきたいとかんがえています。どうせ、業界から追放されるのは確実なわけですから、隠していたって何のトクにもなりはしませんから。

投稿: 窓灯り | 2005.11.21 00:59

姉歯氏には徹底的に本当のこと話してほしいですね。なぜイーホームだけがスルーパスで審査が通っているのか、なぜ特定の業者だけが姉歯氏の計算を受けているのか、わかるようでわからない話ばかりですからね。建築士に負担ばかり強いる業界の体質を洗い直すチャンスでもあります。

投稿: 管理人 | 2005.11.21 22:03

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 11/20 評価者を評価される人が雇う不思議 :

« 11/19 始末にもけじめを | トップページ | 11/21② 定点観測 »