10/29 どっちを向くか障害者施策
地域福祉計画でご一緒している委員さんから誘われ、障害者とも交流するイベントに参加。まだまだよちよち歩きのイベントでほほえましかったが、こうやって障害やいろいろな困難なことを抱えている人が誰かに会う場をつくっていくことは大事だと思う。
帰宅して新聞を読むと、障害者福祉の地域開放に逆行するような動きが起きている。厚生労働省は、障害者のグループホームは推進するけど、今までの施設の中にグループホームを造ってもよい、と提案しようとしている。おそらく施設経営者の利害が絡んでいるのだろう。
グループホームを推進してきた社会福祉基礎構造改革は、人権無視に近い障害者の施設囲い込みはやめよう、障害をもたない人との壁は取り払っていこう、どのようなところに住むかは極力本人の選択し決定させよう、というの趣旨でスタートした。NPOやボランティアなどの支援で、地域で障害者以外とまざって暮らすことができるように道を開いてきた。
しかし、施設や病院が敷地内にグループホームを持ってしまえば、再び施設の客として囲まれてしまうことは目に見えている。それなら今までの施設にいるのと扱いは変わらないし、「自立に近づいた」として使われるお金やサービスが低下するだけだろう。
厚生労働省の障害関係の担当者の質が下がったような感じがする。社会福祉基礎構造改革を担当した官僚たちは理想も高く、最終的な政策効果を考えて動かれていた。感動する言葉も聞いたことがある。
しかし熱心な官僚は出世して官房に取られてしまい、後が続いていない。グループホームが増えれば政策効果だ、国のお金を使わなくすれば自立への支援だ、といったような態度。財務省向けの安直なアピールをしようとして、グループホームの本来的な意義を潰してしまおうとするものだ。
厚労省:「グループホーム」入所施設に設置検討 障害者団体、強く反発
厚生労働省が進める障害者福祉制度改革で、障害者が地域で暮らすための「グループホーム」を入所施設や精神病院の敷地内にも設置することが認められる可能性が出てきた。欧米で制度化されたグループホームは障害者が施設や病院を出て、街の中で暮らす有力な手段。関係団体は強く反発しており、来週にも施設内設置を認めないよう同省に要望する。
障害者のグループホームは4~5人ほどの利用者がそれぞれ個室を持ち、必要な支援を受けながら自分のペースで生活する。日本でも89年に制度化され、利用者から「もう施設に戻りたくない」との声が相次いでいる。
ただ、現状は▽ホームの数が不足している▽国が推進する障害者の地域移行により、今後は入所施設や精神病院に大きな空きが出る--といった課題があり、施設の運営者側から厚労省に「一定の要件を満たせば空き施設などをグループホームに転用できる制度にしてほしい」という要望が寄せられている。同省障害保健福祉部は「専門家の意見を踏まえて検討したい」との姿勢だ。
これに対し「障害のある人と援助者でつくる日本グループホーム学会」(約1400会員)の室津滋樹代表は「入所施設の否定から生まれたのに、施設の中に作るなんておかしい。こうした考えが容認されればホームの質が非常に悪化する」と心配する。
精神障害者のグループホームの場合、既に精神病院の敷地内に設置されている例がある。しかし、厚労省社会保障審議会障害者部会の委員で、自らも精神障害者の広田和子さんは「これだけ多くの人が心の病にかかる時代なのに、今後も精神病院の中に障害者の居住の場を作ろうとする発想はあまりに安直だ」と批判している。
知的障害者の親など約28万人で作る「全日本手をつなぐ育成会」の松友了常務理事も「施設内グループホームなど絶対認められない」と反発しており、グループホーム学会などと連名で同省に緊急要望書を出す方針だ。【須山勉】
毎日新聞 2005年10月29日 東京夕刊
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