« 10/19 肥満文化の先進地 | トップページ | 10/19③ 阿片で犬死にした人を悼む »

2005.10.19

10/19② 医療の側の改革を

小泉構造改革が筋が悪くとも前より良くなるのか、それとも筋が悪くて世の中どうしようもなくなるのか、その試金石は医療制度改革だと思う。

郵便局の職員や地方公務員、土建業界を叩いても、開業医師に大甘だったのがこれまでの自民党政権だ。年金生活者、生活保護受給者、母子家庭が財政構造改革の我慢を強いられている中で、開業医だけは聖域だ。学費がかかるからと、それだけの理由で開業医の平均年収が3000万が保障される報酬体系になっている。しかも、同じ医師でも寝る間も削る病院医は開業医の半分だ。開業医は窓口を閉じやすい時間に閉じ、受け付けたくない患者を大病院や公立病院に送りつけている。サラリーマンは行けもしない病院・診療所のために毎月2万(会社負担入れると4万)もの保険料を払わされている。

ところが改革を断行するはずの小泉政権は、医療制度改革では医療保険財政の膨脹を抑えるという目標だけだ。政治に泣きつく医療業界に裏金を失った厚生労働省は勝てない。医療も政府も泣かない解決策として厚生労働省は、毎度の自己負担率の引き上げ、免責(最低自己負担額)1000円という案を出してきた。

共産党のように高齢者医療無料というのは反対で、少しでも自己負担はあった方が良いと思う。昔、診療所は無為な年寄りが朝から晩までたむろしていて、そのためどんなに重篤な症状でも診察待ち時間も長かった。年収3000万の開業医つかまえて世間話しても何も問題にならない制度だった。一割自己負担に戻ってから、話し相手を求めていた人は来なくなって、重篤な患者の待ち時間は少なくなった。
それは、一部自己負担の導入が病院は社会的コストがかかっているんですよ、ということを自覚させて十分政策成果を上げたと思う。これ以上自己負担を引き上げても、わずかな下層階級の高齢者が来なくなるだけで、本質的な医療制度改革にはならない。犠牲の割に政策効果が少なく、早期発見ができなくなり、重篤化した患者が運び込まれてかえってコストがかかることになる可能性もある。

そろそろ医療業界にも犠牲を払ってもらう改革を求めたい。その際考えなくてはならないのは、①産婦人科、小児科など手間のわりに報酬の少ない医療をどう再建するか、②物量作戦の治療の報酬が高くなるような医療のあり方をどう変えるか→包括払い制度の導入③長期入院など医療依存状態におかれた患者をどのように社会に帰すか、④コストの安い介護保険制度のサービスとの役割分担を再検討する、⑤病院の人材不足を解消するために開業医と病院医の報酬や役割分担を見直す、などが課題ではないだろうか。そうしたことに対する答えとして自己負担引き上げだけの財政改革ではダメだ。

歯科医をしていた祖父は足を悪くし病院に入院した途端、院内感染であっという間に死亡した。下手に治療するより病気や障害と共存した方が長生きしたかも知れない。英国では医師がストライキをしていた間死亡率が下がったという話もある。何のための医療なのか、誰のための医療なのか、医療業界は真剣に考えてほしい。そして政治をおもちゃのように使う医療業界に物を言えるのは政治しかない。

|

« 10/19 肥満文化の先進地 | トップページ | 10/19③ 阿片で犬死にした人を悼む »

コメント

確かに行けもしないクリニックですよね。
午後からの診療にして夜遅くまでやってくれたらありがたいのですが、それでも行けない人は多いでしょうね。

投稿: wacky | 2005.10.21 00:37

夜空いているのは、歯医者とか、整形外科とかあまりせっぱつまって行く必要のないところばっかりですね。循環器、精神、脳外科など慢性病の医者ほど、昼間しか空いていない!
日本の労働慣行だと、病気欠勤は認められなくて有給休暇で消化していくから、実質、保険料、診察料のほかに休業損害まで払っているのですよね。やってられないサラリーマン。
深夜までやれとか、10時間労働しろと言っているのではなくて、7時ぐらいまででも空いていないかな、と思うのです。あと、早朝と、土曜日空いている診療所がたまにあるのですが、朝の5時から並ぶ健康的な高齢者で順番をすべて押さえられる!ひまな高齢者は気を遣って、サラリーマンの来れない時間に来てほしいものです。お互いのために。

投稿: 管理人 | 2005.10.21 21:32

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 10/19② 医療の側の改革を:

« 10/19 肥満文化の先進地 | トップページ | 10/19③ 阿片で犬死にした人を悼む »