9/13 82歳になってホームレス
●定期借地権を30年にするという国交省の考え。ひどい文章の答申書だ。こうしたものを改革として飲まされていくのだろう。すべては定期借地権30年にするためにご都合主義な言い分の総動員だ。
定期借地権30年のどこが長すぎるのか。30年経って放り出されたときのことを考えたら、一生、定期借地権の上の住宅と、老後の住宅のために働き続けなくてはならない。30年経って放り出されて大丈夫な年齢といえば20代前半と、60代後半以後だ。この年代が不動産を購買させる政策は間違っている。
安い住宅が供給できるというが、嘘だ。不動産は代替えのききにいく商品である。地の利を得た不動産を取得するために人間は多少の無理はしてしまう。定期借地権の住宅が割高に設定され、土地付き住宅がさらに高くなる可能性だって考えられる。
私は、32歳のとき、東京の都心にある定期借地権のマンションを買おうと思ったが、定期借地権の期間が50年で、もし82歳まで生きてしまったら、82にしてホームレスになる、そして、土地を返すために取り壊し費用をその時代はボロになっているマンション住人で負担しあわなくてはならない。そんなことを考えたら恐くなって買うのをやめた。
そもそも土地が安ければ、こんな制度はいらない。土地が安ければ、東京で働く人の賃金も高くなくて済む。土地も人件費も安ければ物価は多少下がっても、企業も儲かる。本筋の改革だと思う。金融が立ち直ってきた今こそ、バブルになる前に地価抑制に手を打つ必要がある。製造業や公務員がコストカットに追われている中、不動産関係者だけが羽振りがよい。しかもその多くは、世襲だ。
古代から中世にかけて、不動産関係の税は、国家から土地を借りる借地料的な意味をもっていた。近世になって都市に限って不動産の権利が取引されるようになる。税金と家賃を二重に払うようになった。しかしそれは地主や大家の世話焼き活動・今風に言えば地域福祉サービスの対価といったニュアンスが強かった。戦後、何もかも焼かれて、猛烈な住宅難が始まると、途端に地主や大家は働かずして金持ちの代表選手になった。
定期借地権など屋上屋を重ねる権利を発生させたり、土地の証券化などで、無理に土地の価格を高止まりする政策を維持するのではなく、手の届く土地政策を行い、シンプルな権利関係で土地を利用できるようにすべきだろう。
バブル的業種に甘い小泉政権ではできないことだろうが。
定期借地権:住宅用「30年以上」に短縮 国交省など検討
50年以上とされてきた住宅用の定期借地権について、国土交通省などは期間短縮の方向で借地借家法改正の検討に入った。同省から研究を委託された財団法人土地総合研究所の「定期借地権のあり方に関する研究会」(座長=山野目章夫・早稲田大大学院教授)が出した報告書を受けたもの。報告書は、住宅用定期借地権の下限を30年にするよう提言している。期間短縮で相続などを気にせず、保証金も低く抑えられることで、同制度をシニア世代が利用しやすくするのが狙いだ。
◇利用促進へ法改正検討
定期借地権は、50年以上の一定期間で必ず契約が終了するため、所有者は安心して土地を貸せる。一方、借り主は、契約時に保証金、その後は月々の賃料を払えば借地に持ち家を建てられ、安くマイホームを持つことができる。
92年の制度創設当初は、あらゆる世代の旺盛な住宅需要に応えることが狙いだった。しかし、最近は地価の下げ止まり感が広がって住宅需要が落ち着き、定期借地権付き住宅の供給数は00年の5699件をピークに03年は3817件にまで落ち込んだ。このため、制度の見直し機運が高まっていた。
◇老後は安く広い家で
報告書は、「第2の住宅」を買おうとするシニア世代の需要に着目した。例えば、家庭菜園も作れる広い敷地を持った住宅や、医療機関や行政施設が集中している都市部の住宅も、定期借地権付きの住宅であれば安く購入できる。しかし、一定の年齢に達してから購入する層にとって「最低50年の契約期間は自分の代では終了せず、長すぎる」と指摘。「30年以上」と期間を短縮することで保証金も安くなり、シニア世代の利用が促進されるとみている。
毎日新聞 2005年9月13日 15時00分
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