7/27③ 虫のいい支出削減提案
刷新会議新設し10兆円削減 岡田氏が財政再建案
民主党の岡田克也代表は26日、政権交代実現後の8年間で取り組む財政再建案をまとめた。首相が議長を務める「行政刷新会議」を新設し、3年間で10兆円規模の歳出を削減するプランを打ち出す。併せて首相主導の予算編成を実現するため、予算編成権を持つ「国家経済会議」も設ける。岡田氏は、同案を今国会中にもまとめる政権構想「内政ビジョン」の柱に据える意向だ。 再建案によると、行政刷新会議には企業再生に実績を上げた経営者らを起用。国家経済会議は首相が主宰して毎年度予算の大枠と中期目標を決定する。財務省の予算・財政企画部門は内閣府に移管し、経済財政諮問会議は廃止する。 8年間で基礎的財政収支(プライマリーバランス)の均衡を目指し、最初の3年間を1期目、次の5年間を2期目と位置付ける。 [07月27日 02:10 共同通信]財政が大変だ、という不安感はある。それにつけこむような政府税調のサラリーマン増税案があった。それに反発する意味なのだろうが、民主党のこの考えは、実現不可能だろう。支出を削る財政再建はもう不可能だ。 選挙が近くなって、わかりやすい政策を打ち上げなくてはならない、という焦りでこういう案が飛び出すのだろうが、むしろちゃんと増税か必要であること、政府税調とは異なるスタンスでやること、増税した分は必ずいいことがあること、そして無駄な支出の削減もやることを順番に説明する方が国民は安心するのではないか。支出削減努力なんて結局はどこかのだれかが財政を良くしてくれる、という考えに過ぎない。
財務省の数字では、82兆円の財政支出で、そのうち18兆円が国債費というこの国の財政で、真水は64兆円しかない。それも34兆円の大量の赤字国債の発行で賄われている。
公務員の不祥事、国や自治体にぶらさがっている土建屋・政治屋たちの不正、そうしたことから国の財政のほとんどが無駄遣いされているような印象を持たされている。しかし現実にはそんな不正は1兆円もならない。82兆の中で10兆というオーダーにはならない。
10兆円を削るとするとどんなイメージになるのだろうか。
全額、社会保障費で調整すれば、20兆円の社会保障費は半減しなければならない。年金でいえば、17%以上の給付のカットあるいは保険料の増税が必要である。昨年行われた与党の年金改革を上回る給付の削減、保険料の値上げを行わなくてはならない。介護の財源は25%、保育の財源は12.5%も、医療17%それぞれ消えていく。
18兆円の地方交付税でやるなら、60%カットが必要だ。公務員の賃金を削っても、ほとんどの自治体では破産状態になる。地方交付税の使途は、表に出ない教育費や社会保障費負担が多く、介護や保育、教育などは30%以上のの水準切り下げが必要になる。かなりな痛みを求められる。もっとも地方交付税は現在、不足しまくっていて、繰り延べ支払をしている状態。削るのは難しい。
公共事業は7.5兆円。地方交付税で手当する分を含めるとちょうど10~15兆円。外国より公共事業が多すぎると言われているが、それでも10兆円は出てこない。
すべてがどこからの予算を削るということにはならず、それぞれ少しずつ削ることになるが、それであっという間に10兆円をまかなうなんてむずかしい。公共事業のようにやりちらかしただけ財政が悪化するだけのものにメスを入れるべきだろうが、最近の民主党は田舎議員の選挙対策のために公共事業に甘く、いきおい社会保障費や地方交付税といった、人の能力開発にあたる部分の支出に削減の牙が向いてくることは十分考えられる。ここは票や利権の少ない世界だから。
政府税調に対抗する意味があるのだろうが、増税なしに、支出削減を先行させた財政健全化というのは聞こえはいいが、国民が考えるべき責任を無にする議論だと思う。財政悪化は支出だけが問題ではない。税収だって相当問題なのだ。1つには先進国で一番安い税金であるということだ。
そもそも低い税金で誰が得するのか。高い税金は誰が損するのか、そこをきちんと議論してほしい。例えば竹中平蔵はどちらに入るのか、子育てや介護に追われているサラリーマン家庭はどちらに入るのか、民主党は政府税調に反発している世論に便乗するだけではなく、そうした本質をきちんと議論すべきだ。
余談だが、税収不足は景気による影響も大きい。日本の700兆円のGDPのもとで、43兆円しか税収がない、というのはどうみても少なすぎる。景気が順調なところに戻れば、今レベルの水準の低い税制でも55兆円程度の税収にはなるだろう。
予算編成権を内閣府に移すというのは評価したい。憲法の求めているシステムは国民が選んだ内閣による予算編成だ。
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