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2005.05.29

5/28 相対化すべき平和主義

18歳選挙権を求める活動をしているNPO「Rights」が結成5年になるので参加。
夕方から、友人たちと食事。30超えた男は多様な性のありようをしなやかに受け止められずにいい恋はできない、という話ですしを食べる。

●昨日、憲法9条が左派の結集軸にならない、という話についての説明をしたい。

逆説的だが、憲法9条というものは反対しにくいものだ。現実的ではないという人が説に力を入れるということは、その理念に反対にしくいものだからなのかも知れない。
だからといって、そこで一致団結して、改憲を阻止することが左派結集軸にしようとすることに有効性があるかどうかは別問題のような気がする。平和運動に取り組む政党、市民団体などの無力感はそのことを直視しないといけないと思う。

誰もが反対しないからと、自らの運動を押しつける怠慢は、2003年の都知事選挙で痛感した。
タカ派と称される現職知事に対して、平和派の女性を応援するというわかりやすい対抗軸だった。幅広い結集が期待できたが、共闘を申し込んだ平和運動をやっている市民活動家から投げつけられた言葉は「選挙なんてやっているヒマがあったらイラク攻撃に反対して米国大使館で徹夜で座り込め」というものだった。
結果としてパワーアップして現職知事の勝ち。都の教育はタカ派的改革が進められてきたし、自衛隊座り込み組はイラク派兵を止められなかった。

社会党の場合、結局抜き差しならないイデオロギーや路線の対立を「護憲と平和」という誰もが反対できない言葉で覆い隠して団結を維持してきた。その結果、具体的に政治をコントロールするための政権戦略とか、個別の政策づくりやそれに対する運動が、すべて平和運動の後回しにされてきた。社会党で何かをしようとする人は、その何倍もの平和運動におつきあいさせられて疲弊して離れていく。

平和運動の絶対性にもとづく、無思考、無検証体質が、日本の左派、それも中道的な社会民主主義の中で、お家芸とすべき公正な配分や、セーフティーネットの議論がされてこなかった原因だと思う。共産党の物取り主義的福祉施策を飲める水割りにして出すようなことしか提案できてこなかった。中には、平和運動だけ結集して、公正分配に関する施策について何もしてこなかった連中もいた。その結果、社会民主主義が得意とすべき顧客層は、もっときついアルコールの創価学会や、カクテルバーの田中派に吸い取られていったし、陣地が狭まってきて、一部の学校エリートのための政治勢力にしかならなかったのではないか。

私個人は9条も大切だし、権力主義的な傾向の強い最近の政治に問題意識を感じる。しかし徹夜座り込みまでして福祉をはじめとした現実生活の政策課題を後回しにすることは良くないと思っている。現実政治で人権や生活が良くなっていると実感できるような社会に前進させることの延長からしか、普通の生活人が平和の大切さを実感するような状況は生まれない。そのために私は華々しい外交・安全保障問題には(労組職員として職務責任上しなければならない行動を除いて)禁欲的な態度を取りたいと思う。

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コメント

この指摘にほとんど賛成です。
ただ、社会党に関するところをもう少し深めてみたい。「イデオロギーや路線の対立」として現象していましたが、根底にあるものは労組の社会的ステータスの確保向上という利益追求であり、社会党は追認、追随していました。労組がそうなるのを一概に非難できません。
しかし、労組の真の意図、利益を覆い隠すのに、イデオロギー等がもちだされたところに問題があります。たとえば「国民の足を守る」ということは国労があろうがなくなろうが必要なことでしょう。おちこぼれ、受験地獄の解消などもそうです。
労組が組合員の権利、利益を守り、拡大しようとするのは当然です。労組はこれをあからさまに、そのとおり言って、行動すればよいのです。
国民全体(とくに困窮した人々の)の利益は別に存在するのです(一部労組と共通点はあっても対立点もあります)。社会民主主義政党はこれを追求すべきなのです。

投稿: 渡辺秀美 | 2005.06.03 22:45

渡辺さまコメントありがとうございます。
社会党内における労組の利害対立も1つの断層ですね。
後段のところは難しいところです。労組という支持団体のいいなりに政党がなってはいけないですが、さりとてあるべき社会民主主義というのを党本部書記が考えて労組以上に現実的なものが提示できるのかどうかも疑問です。
一方、労組も職種横断的に組織率が高ければ政策要求のバランス感覚が出てきますが、小さく囲われている今の労組のままでは特定利害だけの主張になりがちです。

投稿: 管理人 | 2005.06.03 23:15

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