5/22 函館に新幹線はいるのだろうか
北海道新幹線が着工されたというニュースにがっかり。
通勤電車は、複々線建設の積立金の利息収入が無税となる以外は、ほとんど公費らしい公費は投入されずに、鉄道会社の自力のみで輸送力増強をやっている。それも全然強制力のない都市計画などでかろうじて線路沿いの土地の開発規制なんかがあって、小田急のように無茶言う住民の反対運動にあいながら進められている。
一方、新幹線は国の税金ジャブジャブ使って建設されている。JRの負担なんて2割ぐらいだったのではないか。
残りを国と自治体が負担することになっているが、この自治体負担というのもくせ者で、その自治体負担については交付税措置されるから、財政力の弱い自治体はほとんど国が面倒見てくれるということ。北海道新幹線の沿線自治体は必要な財政支出の1割ぐらいしか税収のない自治体ばかりだから、まずほとんど国費でみてくれると考えてよい。
その交付税を出す交付税特別会計は、国税から決まった割合しか収入がないため、新幹線の分が膨らむと、結局他の自治体の取り分の一部が将来に繰り延べされることになっている。
今、建設が進められている整備新幹線の沿線自治体のうち、自治体がほんとうのところ身を削って公費支出してでも建設しているのは、工業都市で税金が入る富山市と原発の固定資産税が入る敦賀市ぐらいだろう。
都市ばかりに税金を使えとは言わないが、都市住民がひいひいいいながら利用している通勤電車に何も公共投資がされないで、新幹線には何兆円ものお金がつぎ込まれるというのが不可解だ。
これからは私鉄各社は高齢化で乗客数が伸び悩む。そのため、ラッシュの混雑は緩和される傾向にあるが、人権を蹂躙されない程度の混雑が実現するにはほど遠い。一方、伸び悩みということはこれから新たな投資をしようとすれば鉄道会社は値上げするしかなくなっているということだ。現実に、先日、小田急、東急、東武の3社が定期券の運賃を値上げしたが、その理由は、車両の買い換えや、駅のエレベーター設置、信号設備の改良など設備改修の資金が足りないというもので、これまでの物価の変化と設備投資ではない。
そうすると、私鉄各社が設備投資を進めていくためには、私鉄だけでは何もできないということがいえる。衣食住に次いで大切にされるべき移動の自由や、生産活動のためのインフラと考えれば私鉄に対する公費投入も考えなくてはならないと思う。
民主党は通勤電車はともかく、かつて整備新幹線には抵抗を示していたはずだ。しかし、党が大きくなって、いなかもんの議員が増えたり、従来型の公共事業にぶら下がっている小沢派や羽田氏など経世会出身者の影響力の増大で、こうした無駄な公共事業にノーチェックになっている。そのことで、財政赤字の出血は止まらない。
一方で、シングルマザーへの手当の削減や障害者の福祉や医療の利用への自己負担の拡大など、セーフティーネットとして公共がやるべきことはばっさばっさと切っている。そこでは自己責任だの、財政健全化だの、という合い言葉がつかわれる。でも、北海道新幹線なんてものをあっさり造ってしまうのは、何も財政健全化や自己責任なんてことが言われない。それこそ新幹線なんて、JR北海道の自己責任だろう、と思う。
北海道新幹線を促進するために、建設業界の御用技術者たちのとんでもない「研究成果」というのも見逃せない。札幌から東京まで1100キロ以上の距離を4時間以内で到着する、と北海道内で盛んに宣伝した。これは、札幌駅も350キロで走っている新幹線に乗客が飛び乗り、途中のカーブも駅もすべて350キロで走り、東京駅も350キロで走り抜ける新幹線から乗客が飛び降りることを前提にしなければ不可能な話だ。飛行機と競争できる4時間という壁を越えるために無理矢理でっちあげた数字と言わざるを得ない。こんないい加減な数字で北海道民を踊らせて税金の無駄遣いをさせた技術者には、何かの責任を負わせるべきだと思う。
現在、北海道から生鮮食料品が貨物列車に載せられて、青函トンネルを使って本州に供給されている。当初は新幹線建設のために貨物列車は廃止という考えがされていた。貨物以外に青函トンネルは収入がなくなる、ということで結局在来線貨物との併用ということになるらしいが、新幹線のために今後貨物輸送が犠牲になってくるらしい。北海道経済の自立を担う農産物を止めて、公共事業建設の論理が優先されてしまう、この国の公共のあり方が問われていると思う。
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コメント
>札幌から東京まで1100キロ以上の距離を4時間以内で到着する、と北海道内で盛んに宣伝した。
>これは、札幌駅も350キロで走っている新幹線に乗客が飛び乗り、途中のカーブも駅もすべて350キロで走り、
>東京駅も350キロで走り抜ける新幹線から乗客が飛び降りることを前提にしなければ不可能な話だ。
新幹線の東京~札幌は1035キロしかありません。在来線よりもかなりルートが短縮されます。カーブの制限を守り、途中何駅かに停車しても4時間を切るのはたやすいのですが。(ずっと350キロを出し続けていたら3時間を切ります(大笑))
>都市住民がひいひいいいながら利用している通勤電車に何も公共投資がされないで、新幹線には何兆円もの
>お金がつぎ込まれるというのが不可解だ。
ひいひい言うのが嫌なら田舎に引っ越せばよいのです。通勤電車に公共投資をして都市住民がひいひい言わなくなると、どれだけの経済効果があるのでしょうか。新幹線より通勤電車に投資せよと言うなら、それなりのデータを示す必要があるでしょう。
都市住民は安い運賃で電車に乗っているのですから、サービスもそれなりになるのは仕方がありません。1乗車の単価をたった100円でも上げれば、劇的な輸送改善のための原資ができます。新幹線の利用者は通勤電車と2桁も違う運賃料金を平気で払っていますよ。現状を変えたければ、相応の負担をすることです。
投稿: えーぶる | 2005.10.27 23:41
東京→八戸が3時間近くかかっているのにどうして札幌まで4時間弱で着くのでしょうか。
新幹線と生活のための交通機関とは議論の土台が違うはずです。新幹線は、航空機や在来線特急などと比較すべきで通勤電車と運賃が2桁も違うとは笑止千万の議論です。
しかも、応分の負担などと言ってますが、通勤電車の運賃は全部自己負担です。さらに座席指定の通勤電車が走っているような路線では500円払っても乗っている人がたくさんいてほぼ満席です。新幹線こそ8割の税金が投入されているのです。こちらこそ応分の負担をお願いしたいものです。
通勤電車の改善で都会の人の生活時間が劇的に増えます。また疲労蓄積も緩和され、健康を害することも減ります。痴漢や人身事故の危険も減ります。経済活動を担う人たちへの投資を積極的にしていくことは効果が高いと思っています。誰も乗らない新幹線作るよりは。
余計なことですが、北海道の発展のためには、道内の交通網、とりわけトラックが安全で速く配達できる道路網の整備と、道外との移動のための航空運賃の値下げだと思います。新幹線を作る無駄金はこちらにまわした方が効果的だと思います。
投稿: 管理人 | 2005.10.29 01:07
>東京→八戸が3時間近くかかっているのにどうして札幌まで4時間弱で着くのでしょうか。
速度を上げるからです。高速に対応した新型車両の試運転は既に始まっていて、新幹線の延伸時に飛行機と競争するための準備が進んでいます。
http://www.jreast.co.jp/press/2004_2/20050306.pdf
>新幹線と生活のための交通機関とは議論の土台が違うはずです。
どう「土台が違う」のでしょうか。政策の選択の問題ですから、費用対効果で比較すれば済むことです。どうして逃げるのか理解できません。
>しかも、応分の負担などと言ってますが、通勤電車の運賃は全部自己負担です。
新幹線の運賃料金も全部自己負担でしょう。新幹線の切符を買うときに税金から補助が出ているとでも仰りたいんですかね。
>新幹線こそ8割の税金が投入されているのです。こちらこそ応分の負担をお願いしたいものです。
新線の建設費に税金を投入するのは通勤鉄道でも同じことです。つくばエクスプレスもみなとみらい線も大江戸線も税金がたっぷり投入されて完成しました。
>通勤電車の改善で都会の人の生活時間が劇的に増えます。また疲労蓄積も緩和され、健康を害することも減ります。痴漢や人身事故の危険も減ります。
それは結構なことですが、税金に頼らない方法もあります。鉄道会社と利用者が「低運賃で低サービス」という考え方から抜け出せばよいのです。例えばJR東日本の首都圏では年間50億人を超える利用がありますから、客単価を100円上げれば年間5000億円の資金ができます。
21世紀にもなって、日本が貧しかった時代の「安かろう悪かろう」が続いていることがおかしいのです。グリーン車が人気だったり、「料金500円の着席通勤電車が満席」というのも、応分の負担でより高いサービスを得たい人がいることの表れです。これらは追加料金を支払ってのサービスですが、スタンダードなサービスを見直していくべきではないかと私は思います。
>経済活動を担う人たちへの投資を積極的にしていくことは効果が高いと思っています。
「思っています」という信念だけでは困りますね。いくら投資していくらの効果が得られるのですか?新幹線に乗る人は経済活動を担ってないとでも仰りたいのでしょうか?私もそれなりに混雑する路線で通勤していますが、そこまで図々しいことを言う神経は持ち合わせていません。
>誰も乗らない新幹線作るよりは。
これも単なる信念ですね。整備新幹線は完成後の運営をJRが自腹で行うため、JRの許可がないと着工することが認められません。開通すれば客が乗るとJRが認めた路線だけが建設されます。実際、これまでに開業した整備新幹線は事前の需要予測を上回る乗客があります。一方、大都市の通勤新線は需要予測を軒並み下回っています。
余計なことですが、新幹線の最大のヘビーユーザーは東京をはじめとする首都圏の人間です。北海道に線路を敷けば北海道の人だけが使うというのはローカル交通の発想です。新幹線は中長距離向けの輸送機関なので、影響も広範囲に現れます。新千歳空港を使うのが北海道の人間だけではないのと同じことです。
議論は事実に基づいてすることが大切です。信念だけでは説得力がありません。整備新幹線を批判して通勤交通への投資を求めるのであれば、大雑把で良いから費用と効果を明らかにして比較すればよいのです。新幹線に関する事実認識がデタラメで、さらに通勤電車の改善に関する費用対効果も示すこともできないのでは、どうしようもありません。他の項目では良いことをたくさん書かれているのに、ここだけ内容が拙劣なのが大変残念です。
投稿: えーぶる | 2005.10.29 03:27
私は北海道にも公共交通機関の整備は必要だと思っています。
ただしそれは日常生活の中に必要です。路線バスや地方ローカル線は税金を入れても残さなくてはと思います。
北海道では流通業で働いていたので、物を安定的に運ぶことのできる交通網の必要性はかみしめるほどの思いです。高速道や鉄道貨物のありがたみを痛感しました。
しかし、あえて税金を使わずとも我慢してできる代替交通機関がある北海道新幹線は優先順位として最後だろう、と考えています。できるから、ほしいから、やりたいから、という理由しか見られないのです。あとは税金を食べる土建屋さんたちの利益です。
新幹線が予測を上回る利用者がいても、採算が取れているのでしょうか。建設費も含めて。札幌と函館の間が、今の料金の2倍近くなるだろうし(九州新幹線が1.5倍)、航空料金も福岡などと比較すると、新幹線の方が明らかに高くなります。首都圏の利用者がいるというそうですが、首都圏の人で新幹線を博多まで使うのは10人に1人です。ということは新たな人を新幹線では呼び込めないということですね。
たとえ、予想を上回る利用者がしても公費が8割以上投入されている新幹線と、せいぜい融資というかたちでしか公費が投入されない通勤電車と、全然採算計画のスタートラインが違うのです。
優先順位や採算性に問題がありながら、国民に建設費の負担を求めてひたすら公共事業を推進していく、趣味や道楽、地域的名誉のために新幹線が使われる、そのことに納税者として不満と怒りを感じざるを得ません。
もちろんすべて独立採算やAIRDOのように道民自身の負担で北海道新幹線を作るなら、重複投資という問題は残るものの、賛成しないわけではありません。
投稿: 管理人 | 2005.10.29 08:52
>あえて税金を使わずとも我慢してできる代替交通機関がある北海道新幹線は優先順位として最後だろう、と考えています。できるから、ほしいから、やりたいから、という理由しか見られないのです。あとは税金を食べる土建屋さんたちの利益です。
我慢しようと思えば我慢できるのは通勤電車でも同じことです。通勤電車の大幅な改善を行う際も土木工事があり、税金で土建屋さんが儲かります。
>新幹線が予測を上回る利用者がいても、採算が取れているのでしょうか。建設費も含めて。
公共事業ですから、建設費の投資を十分上回る経済効果があれば事足ります。通勤電車の改良を公共事業で行う場合も、同じ考えで査定されるでしょう。
>札幌と函館の間が、今の料金の2倍近くなるだろうし(九州新幹線が1.5倍)、航空料金も福岡などと比較すると、新幹線の方が明らかに高くなります。
札幌から函館については、値下げになることが確実視されています。新幹線の運賃と料金は路線の距離で決まりますが、新幹線の開通でルートが大幅に短縮されるためです(318キロから225キロへ)。
九州で1.5倍になったというのは割引切符どうしの比較です。これまでは4割以上引かないと見向きもされなかったのが、17%引にもかかわらず2倍以上売れるようになりました。ライバルの減少分を大幅に超える利用者の増加があり、南北九州の人の行き来が増えています。顧客の支持が数字で示されているわけですが、そんなに問題でしょうか?
航空料金との比較についてはきちんと根拠をお示しください。どうせろくに調べずに書いたのでしょうが。
>首都圏の利用者がいるというそうですが、首都圏の人で新幹線を博多まで使うのは10人に1人です。ということは新たな人を新幹線では呼び込めないということですね。
ありがちな誤解ですね。東京都心から福岡市中心部へは飛行機で3時間、新幹線で5時間かかり、2時間の所要時間の差があります。一方、札幌市中心部へは飛行機で3時間半、新幹線ができれば4時間ですから、時間差はわずか30分。十分競争になります。関東対北海道の需要を見込めるから、JR北海道が新幹線着工にOKを出すという経営判断をしたのです。
>優先順位や採算性に問題がありながら、国民に建設費の負担を求めてひたすら公共事業を推進していく、趣味や道楽、地域的名誉のために新幹線が使われる、そのことに納税者として不満と怒りを感じざるを得ません。
「優先順位や採算性に問題」と勝手に誤解しているから、勝手に不満と怒りを感じるのでしょう。少し調べれば理解できることを「建設業界の御用技術者」「無理矢理でっちあげた」と根拠もなしに決めつけ、悪態の限りをつく。そんないい加減な人間に、役人の「裁量行政」とやらを批判する資格があるのでしょうか。
>たとえ、予想を上回る利用者がしても公費が8割以上投入されている新幹線と、せいぜい融資というかたちでしか公費が投入されない通勤電車と、全然採算計画のスタートラインが違うのです。
通勤電車の改善に税金を投入することに対して頭から否定をするつもりはありません。不満の矛先を無関係な方向に向けるのが良くないだけです。国土交通省は鉄道に関する費用対効果の計算マニュアルを最近改訂しましたが、整備新幹線だけでなく通勤電車の改良についての分析方法についてもきちんと触れられています。費用対効果の高い案件があれば予算をつける意志は十分にあると考えて良いでしょう。実際、都市鉄道の利便増進、幹線鉄道の活性化、バリアフリーなどの事業は、来年度の予算要求で大幅増額になっています。公共事業が削減される中では例外中の例外と言える扱いです。
投稿: えーぶる | 2005.10.31 05:02