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2005.04.16

4/16 わが一族の日華友好70年

あと1ヵ月で命日になるが、10年前に死亡した私の祖父は、戦前、青島で広島出身の商家の娘と結婚し、商売人をやっていた。昭和恐慌から店を守った話や、出張先の大阪で大阪大空襲に遭遇してくぐりぬけた話を自慢のようにしていた。

祖父は、若かかりしときに日華友好の活動に関わった。祖父は商業高校卒だが、実学ばかりでなく中国の漢籍に親しんでいた。戦前、華人を見下すような日本人の関わり方に忸怩たるものをもっていたようで、青島毎日新聞の懸賞論文にそのことを改めるようよびかける論文を執筆して入選した。そのために右翼といざこざがあって追いかけられ、しばらく満州・ハルピンに逃亡した。戦後も、自民党員でありながら日中友好の運動に参加して、文化大革命が沈静化したばかりの中国への訪中団に参加したこともある。青春時代の思い出の地に行けたことは感慨が大きかったようだ。その後、1度めの脳卒中で倒れ、旅行は避けるようになり、最後の中国訪問になった。

毎夏休み、九州の祖父宅に帰ると、祖父に中国語の四声の練習をさせられた。また、書架には当時、謎だらけの中国に関して書かれたルポルタージュや、中国革命の偉人たちの伝記があって、ひまがあれば読み、中国革命がどういうものか知らずに、そのスケールの大きさに胸を躍らせた。そして鄧小平のファンになった。

日本にいる中国人のマナーや、遵法精神には思うところがあるが、それでも中国との関係が良くなるととても未来が明るい気持ちになるし、中国との関係が悪化すると辛い気持ちになる。だから日中関係の悪化は悲しい。また、日露の関係が悪化し、日韓の関係が悪化し、日中の関係が悪化し、ますます日本はアメリカに依存せざるをなくなっていることに心配でもある。そのアメリカは教養ないブッシュ政権で、自国内の利権でしか動かない。それに日本はこれというカウンターパンチャーもなく、ノーを言えずにつきあっていくしかない。

中国が持ち出す歴史問題に意味はあるが、それを外交がネガティブな時に持ち出す時代ではなくなったと思う。日韓のように共同研究をして解明していくべきことだと思う。その中で日本の非はもっと厳密に解明されていくだろうし、日本軍始め、外国勢が入り込んでしまった当時の中国の混乱状況も明確になると思う(中公新書「中国革命を駆け抜けたアウトローたち」がこの時代の中国の混乱状況やその背景をうまく伝えている)。ことあるごとに歴史問題を持ち出す中国の姿勢は効果的ではない。

日本側の非は、不用意な首相の靖国参拝と、森派の閣僚や自民党幹部の挑発的発言だったと思う。領土問題や教科書問題、憲法改正などで、中国や韓国のプライドを刺激し、寝た子を起こしてしまったことだろう。外交は長い裏交渉、事務折衝などを積み重ねてつくられていくものだ。たまたま一時期政治家になった人の、感情的な思い、イデオロギー的先入観で、双方が引くに引けないところにもってくるのは失敗だ。

中国側の非は、いうまでもない。多くの日本人が共有しているものと同じだ。中国に理解的な人たちまで、敵に回している。ただ、今まで中国はこうしたデモや混乱も非常に冷徹に対応してきたのに、今回は当局があまり事情を掌握できていないようで、中国の統治能力の崩れを感じている。それはそれで恐いことだ。

一般市民が外国に感情的になると外交は身動きがとれない。日本も中国もお互い、冷静に考えれば重要な外交のパートナーだ。日本は工場の海外移転などで、中国なくして、今の経済を維持できなくなっているし、中国は、日本の技術援助、資本流入がなければ国内開発はできなくて、豊かにはなれない。安定した日中関係がなければ、北朝鮮問題も解決できない。そんな深入りした関係なのに、国民レベルが感情的な民族主義を盛り上げてしまうと、身動きがとれず全てを失っていく。

中国への非難を強めて日中関係を悪化させる前に、中国の反日デモの背景を解明する必要があるだろう。単に中国政府が日本へのゆさぶりとしてデモを黙認したというのは、いくら共産政権だとしても、改革解放が進んだ今において単純すぎるような感じがしている。
改革開放路線に傾斜した胡総書記に対する江沢民派のゆさぶりなのか、日中分断を画策するアメリカか北朝鮮の工作なのか、中国政府の黙認のものなのか、その当たりが明確にならない段階で、非難合戦をするのは慎んだほうがいいと思う。

外交当局が厳密な非についてお互い処理して、冷静に事態の収拾を図りながら、背後関係の解明を行い、その後首謀者たちには法にのっとった断固とした対応が必要だろう。

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