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2005.04.11

4/11 保育士に逃げられる保育所詳報

以前、市報あさかの議会報告で取り上げられていた、保育士が逃げたし続けている宮戸保育園について書いたが、もっと具体的に問題点を知りたいと思い、市議会議事録を読む。本会議の議事録に関してはインターネットで誰でも見られるようになっている。

市立宮戸保育園は、2005年4月開所。市立保育所の看板を掲げながら運営はベネッセの系列会社が担っている。ベネッセは公立だけではなく認可保育所が非効率でサービスが悪いという論拠に立つ学者や政治家を動員して、規制改革会議等で保育所に関する必要の以上の規制緩和を求めている。三鷹市を皮切りに首都圏各地の市立保育所の運営を受託している。

質疑者は共産党の石川啓子市議。保育園問題に関わってきた市議だ。2004年12月議会での質疑。
そこで石川市議が挙げた具体的な問題点は以下の通り。

①半年間に10人の保育士が中途退職していること
市の答弁 内訳は、結婚退職が2人、病気退職が3人、親の介護1人、非常勤職員は他の資格を有効活用するために転職、退職していった。
石川市議の再質問 病気や急な結婚が続いて10人も辞めたということはありえず、影に別の理由があるのではなにいか。

②価格だけではないプロポーザル方式入札で決定し企画提案書が出ているが、全然違う。保育園運営実施事業者選定委員会の選定が甘かったのではないか。
市役所の答弁 企画提案書と違っている実態は把握しており、遺憾と思う。引き続き十分な対応を取るよう指示したい。
石川市議の再質問 契約上の履行を怠った確認が市からベネッセになされていない。

③年齢別クラス別の職員配置が明記され、「朝霞市基準の人員配置を厳守します」とかかれているが、実際にはそれが守られていない。
市の答弁 毎月指導している。

④「常勤およびパート職員を長期的に雇用することに務める」と契約に書かれているが退職者が多く、担任の入れ替えも頻繁。残存者も頻繁に異動。これは保育所保育指針に違反するおそれ。背景に契約社員だけの職員確保にある。ある程度の職員が入れ替わらないと人件費がかさんでしまう。
市の答弁 毎月指導している。

⑤企画提案書の勤務シフトは全然ちがっていた。市が保育士の勤務実態を把握していない。(勤務シフト表とタイムカードの確認)
市の答弁 シフト表のチェックは難しい。市立保育所は園長に任せている。今後は把握できるか検討したい。

⑥職員不足で8月は園庭遊びをさせてもらえなかった。子どもの登園拒否もみられる。
市の答弁 運営に関する細かい報告書はなく、園に出向く、あるいは呼んで内容を把握しているところ。書類の提出について検討してみたい。

⑦欠員が常態化されている中で運営費補助金が満額支払われている(補助金の詐取または適正化法違反)
市の答弁 返還を求めていくことを考えている。

⑧保育士の募集広告では16万5千円となっているが、額面どおり支払っていない。(職安法違反か)
市の答弁 適切な指導をしたい

以上が3回にわたる石川市議の質問で明らかにされた問題点。

行政改革がらみで、プロボーザル方式入札とか、今までの制度の欠陥を埋め合わせるような言い方があるが、市がチェックしたり、前向きな意欲で業者をしばかない限り、どんな方法でもトラブルがおきる好例である。

ベネッセは、本社にはとても優秀なスタッフがいたり、専門家や研究者を囲い込んでいたりして、立派な提案書を書く能力がある。しかし保育所という現場では、少人数職場で運営はミクロ。立派な提案書が徹底されるにはそれ相応の社員が監督していなければ現場でトラブルは必至である。

ベネッセは、安い不安定雇用の非常勤職員を常勤職員といいくるめて(実際、厚生労働省の通知では長時間労働させていれば低賃金でも契約社員やパートでも常勤とみなされる)、全員を契約社員かパートにしてしまった。そしてきれいなマニュアルによる保育所運営をしていたのが実態だろう。
しかし現場はマニュアル通りにはいかないことが多い。保護者の言い分のどこまでが多様なニーズなのか、どこまでがわがままで指導すべきことか、経験に基づいた確固たる線引きができなければ混乱することが多いだろう。

そうした現場での問題を保育士たちは大企業である会社側に伝えることもできなかったのだろう。低賃金のパート保育士、契約社員保育士たちが、その矛盾を抱え続けていたと予測できる。
そして、結婚退職、病気退職と次々に同僚がいなくなる中、しわよせが残っている人たちにおしよせ、その混乱状態にまた保護者からの不安が寄せられ、さらにストレスをため込んでいることが考えられる。

いない保育士の補助金を受け取ったピンハネは、他人の人件費を自治体から詐取しているという意味で国会議員の秘書給与疑惑と同種の問題だ。
職安法違反などの半ば違法行為も話にならない。労働市場の規制緩和の先取りというところか。

石川市議は、民間だから問題だという議論を展開していた。私は保育士の給料や雇用形態の問題は民間だからと思うが、保育内容については必ずしも民間だからこうなったとは思わない。民間でもうまくいくシステムといかないシステムというのがあって、きちんと線引きした議論をしなければならないと思う。
その上で、ベネッセへ委託することが妥当なのか、考えなくてはならない。地場の根っこをはってやってきた民間保育所に立派な企画提案書を書く力は及ばないだろう。しかし、経営者は地域社会から逃げられないということではベネッセの数倍の信用があるはずだ。問題を指摘したときの反応も、地場の民間保育所なら、組織が小さい分、腹のわった話し合いができると思う。

厚生労働省も、保育所運営費補助金について、そこの保育所の保育事業に使うこと以外は余った補助金を流用することを禁止していた。保育士の人件費の流用を防ぐためである。ところが01年の規制緩和で、運営費補助金で余ったものについての使途の制約がほとんどなくなった。その結果、株式会社の運営する認可保育所の多くは人件費を圧縮させ、その儲けを本社の会計に繰り入れたり株主に配当する原資にしたりするようになった。今回の問題の背景にはこのことがある。

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