3/31② もうすでに小さな政府
和田秀樹「数字のどこをみているんだ」(宝島社)を再読。以前読んですぐ同僚に貸してしまって、改めてそこにかかれている内容を確かめてみようと思って再読。専門性は全くないが、俗論のいくつかが嘘であるということが手っ取り早くわかって面白い。
最近の関心事では、税金の高さと公務員の数。
国内総生産(GDP)に対する、税収の比率を「租税負担率」というが、日本は20.9%でアメリカ、イギリス、ドイツ、フランスよりも低い。事実上の税金である社会保障負担を加算しても、日本は、アメリカ以外の国より低い。
日本ほど税金の高い社会主義国はないなどと俗論がテレビから聞こえてくるが、日本ほど税金の安い国はない。年収500万いかなければ、基礎控除38万、社会保険料控除、給与所得控除などなどで、税金なんて収入に比べて10%も払っていない。
税金は安ければいいのか。
税金や社会保険料が低く、その結果、自分で生活防衛しなければならないような国ならば、その分民間生命保険に必要以上に入ったり、警備会社を雇ったり、時にはヤクザさんにみかじめ料を払ったり、見えない税金を自分で払わなければならない。国民負担率という言葉があるが、それをむやみに抑えると、こうした見えない税金をたくさん払わなくてはならない。
そして人口1000人当たりの公務員数では、フランス87人、イギリス76人、アメリカ67人、ドイツ59人、日本36人と5カ国では最低である。
公務員が多すぎるか少なすぎるか、というのは受ける行政サービスの内容によって変わってくる。戸籍係に必要以上に要員配置するようなことをやればただの税金の無駄遣いになってしまう。しかし、保育所や障害者介護に手厚く人を用意して、働く人がもっと安心して働けるようになれば使った税金が戻ってくる。また、学校も教員と事務員と用務員しかいないが、図書館司書やカウンセラーなどもっと多様なスタッフがいて、子どもが安心してきちんとした教育が受けられれば、国民の知的水準は高まって税収が上がる。
民主党の菅派が言っているように官僚支配は打破すべきだが、公務員が少なければ官僚支配が打破できるかというと全然違う。
日本はすでに小さな政府であって、小さな政府をめざすべき国ではない。ここが多くの民主党の代議士や財務省の議論のまやかしだと思う。
では日本人の経済生活を何が圧迫しているのだろうか。家計支出のなかで際だっているのは、家賃水道光熱費である。そのうち何かといえば家賃の高さだ。そして日本は不動産屋が多く、GDPの構成比では、不動産業によるものが、政府部門を圧倒している。和田秀樹は「不動産業が儲かるのはそれだけ土地を持つものと持たないものの差が大きいということである。これが社会主義であるわけがない」と日本経済を統制経済だ、社会主義だという議論を否定している。
さらに相続税のことも言及していて、「相続税が7割も取られる、もっと下げろ」という俗受けしている議論にも、相続税の申告をしているのは死亡者の5%、控除が大きいのでほとんどが消費税より安い平均税率が4%、不労所得なのに消費税よりも安い税金しか払っていないと喝破している。
政府税調は相次ぐ増税を唱っている。一部には理のかなうものもある。その一方で相続税はもっと下げろという。この現実からは、政府税調は与党や与党を支える財界への増税の見返りなのだろう。
他にも面白い数字がいろいろある。
日本の道路予算の多さは世界一であり、教育費の絶対額の少なさは韓国の3分の2程度、トルコよりちょっと上といったところ。
先日、経済財政諮問会議が、日本人の住宅面積を平均80㎡に引き上げるなんて言っているが、うさぎ小屋というのは昔の話で、今はフランスを追い抜き、近々ドイツを抜いている。1世帯あたりの人数が減っているから、広い家に誰が住んでもらうのか、という問題にぶちあたってくる、という予測が面白い。子どもが出ていった郊外の家を売り払い、都心に回帰するなんていうものの背景はこんな現象だろう。いまだに家を広くする政策目標は、つくばエクスプレスや埼玉高速鉄道などの沿線の住宅業界からの献金を当て込んだ政策としか思えない。
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