1/10 子どもが嫌いな社会人たち
昨日の毎日新聞で、同社の調査で子ども生みたくない人23%という結果。加重平均の子どものほしい数は1.54で出生率よりやや上回る程度。実感とほぼ見合う結果だ。
少子化が問題になって10年経つが、この間いろいろな調査が行われ、施策が打たれてきた。その施策が当事者のニーズと全然違っているのではないか、ということも言い尽くされた話。今回の毎日の調査結果は、これまでの調査に比べ、結果の際だち方といい、答えの選択肢の設定の仕方といい、少子化対策に初めて有用な調査だと思う。
今までの調査では、なぜ子ども生まない(生ませない)のですか、という問いに対する答えに、用意された「お金がかかるから」という項目を漫然と選ぶ人が多くて、お金がかかるから子どもを生まないという安易な結論が出されてきた。ところが、お金にそんなに困らないはずの高学歴の女性があまり子どもを生まず、年収なんて概念自体がありがたいヤンキー姉ちゃんが10代や20代早々に「できちゃった婚」で子ども生んで出生数を維持している現実は、今までのこうした調査の結果と全く矛盾するものだったと言える。
そもそも、お金がかかるから、という誰でも選びそうな項目を漫然と質問に出すこと自体が、調査する側のいい加減さを感じている。多くの人は、現金をもらえることは嬉しく、払うことは辛いと答えるに決まっている。賃金体系が安定していると言われる公務員でさえ、自分の生涯賃金を計算する人なんてわずかなんだから、ましては子どもにいくらかかるなんで具体的に認識して答えている人はいない。そんないい加減な調査から昨日も怒ったが、児童手当の拡大なんていうばかばかしい政策が出てくる。
私の実感では、今の日本人のかなりの数が子どもを面倒な存在とみたり、嫌いだったりしている。そのことを吐露できるアンケートの回答用紙がこれまでなかったというべきだと思う。
今回の毎日新聞では、少子化の世論調査では初めて、お金がかかるから、が子どもをほしくない理由の1位にならなかった画期的な調査である。その理由として女性の1位が「出産や育児がわずらわしい」、男性の1位が「子どもにかかる経費や時間を自分の楽しみに回したい」36.7%という答え。経済的余裕がない、は男性も女性も2位だが、女性は1位に対して10%以上引き離している。また、「仕事続けるのに不利」は、女性が9.9%、男性が2.0%で、仕事と育児の両立が少子化対策の必要条件であっても切り札にならない、という結果になった。むしろ少子化は、大人たちが子どもが嫌い、子どもが面倒というふうに見ている今の社会を捉えたのだろう。
「お金がかかるから」と「子どもにかかる経費を自分の楽しみにまわしたい」という答えの差は大きい。お金がかかるから、の中には、お金があれば子どもをほしいと思う人と、お金があっても子どもはほしくないという人の両方が含まれる。前者と後者とでは政策の打ち所が全然違う。一方、「自分の楽しみにまわしたい」という答えは、最初から子どもを自分の人生のネガティブな要素として位置づけてしまっている、ということで、お金をばらまこうが、何しようが、どうにもならない、たとえ子どもをつくってもらっても、その子はあまり幸せな扱いを受けないだろうことは容易に想像がつく。
「子どもがほしくない」で男性が20%、女性が25%、「自分の楽しみにまわしたい」と答えた男性は36.7%で、女性は23.9%という性別の回答ギャップがあることも注目だ。このギャップの子どもに否定的な数字だけを拾っていったら、子どもを生みたい生ませたいという男女はごくわずかになってしまう。少子化を回避したいなら、少なくとも出産・育児に関してだけでも一夫一婦制ではない家族形態を制度化したり模索したりしないと、難しいんじゃないか、とすら思う。すでに新婚の2組に1組が離婚する時代に入っていて、子どもも含めた親子・家族関係で見ると、これからどんどん父母ワンペアという組み合わせが少なくなってくるだろう。かろうじて生まれてきた数少ない子どもたちが、自分の父母のほかに、お姉ちゃんのお父さんと、弟のお母さんがいて、なんて解説する時代がやってくるのは間近だ。
しかし、毎日新聞はこんないい題材をつくりながら、それをベースにした連載記事の最初が、仕事と育児の両立。どうしてそうなるのかな。
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