11/21 山本譲司さんの話
朝霞市の知的障害者の家族会「朝霞手をつなぐ育成会」(→全国団体「全日本手をつなぐ育成会」)が主催の、元衆議院議員の山本譲司さんの講演会を聴きに行く。「塀の中の掃き溜めと呼ばれるところに居る障害者たち」というタイトル。
山本譲司さんが、秘書給与疑惑の罪で服役中、知的障害者や精神障害者の受刑者など一般受刑者と同等の作業が困難な人たちが集められた「寮内工場」の世話役として服役した経験から、知的障害者、精神障害者を日本の司法がどう扱い、どう問題解決すべきかのお話しをされた。
日本の裁判所、刑務所、社会復帰後の保護観察や福祉施設の問題を指摘していた。
裁判官は、裁判の判決の軽重、執行猶予の付与について、「改悛の情」と「引き受けの環境」によって決められるために、知的障害者や精神障害者のように、裁判所で「すみません」の一言が出せないような受刑者に厳しい判決が下りることになっている。一方、芸能人のように、演技たっぷりに涙を流してしまえば、簡単に執行猶予がつく、という。裁判官が、知的障害者や精神障害者を始め、福祉を必要とする人に対する認識不足が大きい、と山本さんは指摘した。
刑務所は、医療やカウンセリング、更正プログラムの不備によって、無駄な作業ばかりが続けられている。刑務所の医師は全国で200人いるというが、大半が医療刑務所と、東京・府中をはじめとした要人や重要事件の被告や受刑者の入る刑務所・拘置所に配置されとているため、知的障害者、精神障害者の受刑者のケアにまわらないという。
そして、出所後の問題。引受先が無く、カプセルホテルに行くしかない、ホームレスになるしかない、という状況。本来、そういうコーディネートする保護観察所が、まったくあてにならない。社会の偏見と、福祉の不備で行き場が無く、そのことで再犯率を高めてしまっている、と指摘。知的障害者や精神障害者が、状況認識能力がないから犯罪率が高いのではなく、行き場がないことによって犯罪が引きおこされているという。
詳しくはポプラ社「獄窓記」を読んでほしい。
山本譲司さんは、持ち前の人権感覚や平和問題に対する意識を、議員になって民主党の選挙至上主義のなかで見失っていたという。刑務所で、障害者達の生き様にぶつかることによって、また取り戻しされたのがほんとうによかったのではないかと思う。
現在は、障害を持っている出所者の「雨露をとりあえずしのげる」施設の立ち上げに向けて奮闘し、また、障害をもつ受刑者たちの人権保障や、実効ある更正のための制度整備にあちこちかけあっていると聞いて、ほんとうにすばらしいと思った。
「人物本位」という美名のもと、有権者は議員を選ぶが、その基準は、「まとめ役としての器量」「親しみやすさ」「地域への貢献」などで量られる。そのために議員であり続けるために使わなくてはならない努力が多すぎる。議員はそんな時間があれば、と思うようなことにあまりにも労力を使わなくてはならない。そうして、大事なことがどんどんできなくなってしまっている。議員を辞めて、山本譲司さんは、ずっと社会に役に立つ活動をしている。そういう世の中の動かし方が増えていってほしい。
山本さんと同時期に出所した他の2人は1人が自殺、1人が再犯となっている。逮捕、取り調べ、裁判、懲役、とこの間山本譲司さんを支え、そして今日、こうして社会に役に立つ活動を、みんなに代わってやってもらうまでにしてくれた、ご家族や、彼の妻の実家に敬意を表したい。
最後に山本譲司さんは、福祉は社会改革運動と言い切った。私もそうだと思う。制度があって福祉ではなく、困ったことがあって、解決する道筋に福祉があるのだと思う。程度は雲泥の差だが、その志は一緒の気持ちでがんばりたい。
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